ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(債券投資の専門家)

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トランプのアメリカに投資しても大丈夫か その6

2016年12月29日 | 米国債への投資

  前回の記事で私は、「アメリカ経済はトランプごときでは、微動だにしない」ということを、数字でお示ししました。

  株式相場のトランプラリーをみて内外の一部の識者が、「トランプはそれほど悪くないかも」と言い始めています。経済運営面では有力者が政権中枢に入るので、悪い面ばかりではないと思います。しかし軍事・外交、そして人心面では、全く安心はできません。

  プーチンや習近平などの独裁者たちといずれは様々な局面で衝突し、そのたびに株式相場は大きく影響を受け、乱高下を繰り返すでしょう。そして忘れてはならないのは、選挙年である欧州や中東を巡って、来年も地政学上のリスクは増すばかりだということです。そうした危機状況は、ポピュリズム、独裁者の跋扈を許すことにつながります。


  独裁者の典型的やり口をちょっと見ておきましょう。先進諸国では共産党独裁の中国を除けば、独裁者と言われる政治家も、一応民主主義的選挙制度を経て選出されています。その後扇動的な言動を繰り返し、独裁ぶりに拍車をかけていくのが典型です。独裁的であるか否か、私は次のような指標で判断しています。

1.自分の権限拡大を目指して憲法を変更するか、解釈を勝手に変更する

2.任期の制限を延伸する

3.報道の自由を制限する

  現在政権の座にあって該当する主な者は、まず日本の安倍首相。憲法解釈を勝手に内閣が変更し、自民党の党首の任期を2期から3期に延長し、報道の自由度は劇的に悪化させています。

  そしてロシアのプーチン大統領。メドベージェフを間に入れて隠れ蓑に使い、2期のはずの大統領を4期務め、しかも1回の任期を延長し、人生の大半を独裁者として君臨しようとしています。KGB時代から反対者や言論の自由は暗殺をいとわず封殺する、絵にかいたような独裁者です。彼は独裁者の典型としてハッピー・リタイアメントができないのです。役目を終えたとみなされたとたん、リビアのカダフィやルーマニアのチャウシェスクのようにハチの巣にされることを恐れるからです。お気の毒に。

  先進国とはいえませんが、トルコのエルドアン大統領。大統領権限を拡大し言論を封殺するのはプーチンと互角。

  中国はもちろん根っからの独裁ですが、習近平は党の定めている国家主席定年を延伸しようとしているという報道が最近流れました。

  こうした独裁者リストに加え、彼らを上回るほどの「独善主義者」がアメリカ大統領に就くことは、世界にとって最大のリスクになります。何故なら経済力も軍事力も、断トツの世界ナンバーワンだからです。

  独裁者たちは、自国が自分の自由になったように、世界も自分の自由にしてやろうとします。自国優先主義が蔓延し、他国との政治的衝突を招く。中でも圧倒的独善主義者のトランプは、就任前から要注意人物ナンバーワンです。海外との摩擦もさることながら、国内でもアメリカはかき回されています。

  この一両日、CNNで話題になっている国内マターを列記しますと、

・当選直後、しおらしくオバマ大統領の話を聞いたが、現在両者は表立って非難合戦を始めた

・選挙中に最大の争点として「ヒラリーはウォールストリートの代弁者だ」と非難していたにも関わらず、自分の政権中枢のほとんどすべてをウォールストリートの代表選手であるゴールドマン出身者やヘッジファンド長者達で固めた

・そうしたウソツキぶりや矛盾を突かれるのがいやで、記者会見を徹底的に回避し、ツイッターで一方的に言いたいことのみ流している。これぞ報道の自由を大いに歪める所業

・エルトン・ジョン、セリーヌ・ディオンをはじめ、ほとんどのセレブタレントが大統領就任式でのパフォーマンスを拒否。ラインダンスで有名なNYのラジオ・シティー・ロケッツは依頼された会社側が受諾したが、一部メンバーが拒否し、親会社のマジソンスクウェアガーデンは困惑中

・就任式に合わせ、ワシントンではマイノリティの人権擁護団体など数十万人から百万人規模の反トランプデモが計画されており、すでに女性の権利擁護団体の20万人のデモが許可された。今後はきっと安全などの理由を付けて、制限を行うという見通し報道あり


  そして国際的に最も懸念されることは、トランプはこれまでの国家間の約束事を一方的に「反故にしてやる」と宣言していることです。すでに安保理でイスラエルの国際法違反決議をした国連を非難し、きっと彼は「国連はNYから出ていけ」とか、「もう国連に拠出金は払わん」と言うにちがいありません。

  こうした約束事を反故にすることが世界の一大潮流になることこそ、私が最も恐れるポピュリズムのリスクです。

  国内であれば訴訟という手段があり、法的正当性を問うことができるし、強制執行もできます。

  ちなみにトランプと彼のビジネスは過去そして現在、いくつ訴訟を抱えてきたか、ご存知ですか?

  USAトゥデイ調べで、その数なんと3,500件。セクハラ、侮辱、差別などに対する個人的訴訟沙汰はもちろん、商売そのものが訴訟で成り立っているほどの訴訟屋、それがトランプの実像です。

  しかし国際社会では、勝訴しても強制執行はできず、やるとなれば軍事行動です。フィリピンのように中国に勝訴のあと買収に応ずる、ならず者の大統領が出てくるリスクまであります。

  「世界の強国の首領が図らずもならず者だらけになった」。それが2017年の地政学上のリスクです。

  「ではみなさん、よいお年を!」が、冗談としか聞こえませんね(笑)。

  でも大丈夫。

リスクがどう現実のものとなっても、米国債さえ抱えていれば、枕を高くして寝ることができます(笑)。

 

  今年のブログはこれで終了とさせていただきますが、私は年末年始に旅行には出ず自宅で過ごします。家内の「キャット・シッター・キャットン」の稼ぎ時なので、主夫をします(笑)。

コメント欄はいつでもオープンです。どうぞご利用ください。

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トランプのアメリカに投資して大丈夫か その5

2016年12月25日 | 米国債への投資

  天気だけはどうやらおだやかなクリスマスですね。

  先週の東京はずいぶん暖かくて、クリスマス気分とは程遠いものがありましたが、週末になってどうやら冬らしくなってきました。気候変動の激しさはとどまるところを知らず、今年も毎週のようにどこかで記録的暑さだ寒さだ豪雨だと言われ続けた一年でした。年に何度も50年に一度の異常気象があるので、今やそう言われても「ふーん」という感じです。

  さて金融市場はクリスマス休戦中ですが、トランプはツイッター爆弾を落とし続けるので、相場にかかわっている方々はおちおちしていられませんね。年末年始の短いアメリカは、来週からトランプ爆弾とともに稼働し始めます。そして爆弾は今後数年落ち続けます。

  もっとも相場関係者だけでなく、トランプ陣営の首脳たちも右往左往しています。彼の核戦力強化発言がプーチンを刺激し核軍拡競争になりかねないため、必死に「真意は違う」と言い訳をしています。ドゥテルテが発言するたびに火消しをしなければならないフィリピン政府並みのことが、アメリカでも起こっています。就任前からこの調子だと、陣営がいつまで彼のツイッター使用を許すのかが見ものです。トランプとしては大嫌いな記者会見をせずに一方的発言で言いたい放題ができるため、きっとこの武器を捨てようとはしないでしょう。

  今回は「トランプのアメリカに投資して大丈夫か」の本丸、長期展望です。

  当選後世界中の株価が上昇した当初は「何故?」という声もありましたが、最近はそもそも彼の政策がプロビジネス一色であることの理解が進んだので違和感がなくなり、トランプ礼賛の声が優勢になっています。そしてトランプ政権の閣僚の布陣を見ると、こんなにも投資家寄り、つまりは金持ち寄りでいいのか、と思わせるほどです。

  この布陣、実はオリガルヒを重用するプーチン政権と似ていることを指摘しておきます。オリガルヒとは、寡占=オリゴポリーをしている人々、日本流にいえば政商による寡頭政治です。ロシアの重要産業のほとんどを友人たちにまかせることで、その統領であるプーチンは絶対的安泰を保持しています。

  ゴールドマン出身者を多用したトランプ流オリガルヒ体制は、まさにプーチンの写しといえます。

 

  日本はもとより、洋の東西を問わず政権を奪取する際の政治家の謳い文句は、「経済復興」です。打ち上げ花火を上げて票を集め、実際には実現するものが期待以下なので、時間が経つにつれてしぼんでいくというパターンを描きます。

  特に近年は政治課題の多くが経済問題で占められているため、政治が金融市場を動かしたり、反対に相場で政治が動いてしまう度合いが大きくなっています。それを、相場の材料に飢えた市場関係アナリストや投資家がはやしたて、増幅させています。

「政策期待によるボラティリティが、経済実態によるボラティリティ以上になっている」

というのが最近の市場の私なりの見立てです。

  アベノミクスがそうであったように、トランプも市場の政策期待を実に巧妙に利用しています。アメリカがすでに力強く回復しているところに、彼が追加策を実行するため、今後も短期から中期的にアメリカ経済は楽観論が支配していくでしょう。前回申し上げたようにラリーは長く続かないとしても、その後もしばらくは弱気に転換することはないと思われます。時間軸で言えば、彼の再選のあるなしが問われ始める頃まで、と申し上げておきます。

  しかしより長期で見ると懸念すべき材料がたくさんあります。

1.アメリカ・ファースト=貿易制限による近隣窮乏化。いずれは己にはね返ってくる。

2.新興諸国からアメリカへの資金シフト=すでに新興国市場での債券発行が著しく困難となり、投資減退、消費減退につながる。これも己にはね返る。

3.長期の財政赤字拡大懸念=減税とインフラへの投資による財政赤字拡大、インフレ懸念から米国金利が上昇し、政府の金利負担が増加。

  なかでもみなさんの懸念は、長期で見たアメリカの財政と国債市場の動向でしょう。

  法人税も個人の所得税も減税一色ですから、歳入が不足します。景気が上向けば、そして物価が上昇すれば、そのうちの何割かは取り戻せる可能性がありますが、それは皮算用に終わる可能性もあります。なぜならアメリカの景気はすでに6年にわたり順調で、循環論から言えばそろそろ小休止してもよい時期だからです。

  それでもきっとトランプは自分が大統領であるうちは、政策を総動員して景気を持たせようともがくにちがいありません。利上げに動くFRBを人事で脅し、景気の維持拡大を目指すでしょう。

  初の「女性」議長であるイエレンと女性蔑視のトランプ大統領の確執が見ものです。この勝負、あとを気にする必要のない「イエレンは決して負けない」とトランプ占いをしておきます(笑)。

  イエレン議長はそもそもハト派、つまり利上げに積極的ではありません。その議長が利上げをしているくらいですから、アメリカ経済は順調そのものです。しかしトランプと言う人間は、自分の言う通りに動かない人間をことごとく取り除こうとする。プーチンのやり口と同じです。

  我々は、いずれトランプ政策に限界が見え景気が後退を始めた時、何が起こるかをしっかりと見ておく必要があります。

 

  トランプラリーが始まったとき、「グレートローテーション」という言葉が使われました。「債券よさようなら、株式よこんにちは」の流れをさしていました。端的にはそれが逆転すると見れば間違いありません。

  最初は株式の暴落です。現在すでに十分に高いところにいる株価が、今後さらに上昇していた場合、山高ければ谷深し。相当な暴落を覚悟する必要があるでしょう。アメリカの株式の時価総額は巨額のため、トランプが吠えようがPKOを発動しようが、容赦なく暴落します。そのころには底値拾いの上手なバフェット爺さんもいないかもしれませんが、アメリカは逆張り投資家だらけなので、その先は心配いりません。

  株式暴落の次に起こるのはリバース・ローテーション、つまり「株式よさようなら、債券よこんにちは」です。

  私の教科書、「米国債を買え」の141-2ページをご覧ください。10年ほどの間にあった、米国債買い=フライト・トゥー・クオリティの状況をグラフで示してあります。金利が谷を作った、つまり債券が大きく買われた局面が見て取れます。

その1.9・11のテロ後の株式大暴落

その2.ブッシュのイラク進攻による株式暴落

その3.リーマンショックの株式大暴落

  いずれも激震が世界中に伝搬するほどでしたが、教科書通りにアメリカ国債にカネが集まり、金利が大幅低下しました。

  マグニチュードで言いますと、トランプの経済政策ごときはリーマンショックなどに比べればモノノカズではありません。この際、日本を含め、過去のバブル崩壊規模を数字で見ておきましょう。ドル円換算レートはいずれも当時のレートです。

日本のバブル崩壊による不良債権規模;110兆円(金融機関の累計処理総額)=GDP比で2割

リーマンショック時サブプライムローン;全額で130兆円=GDP比1割 

  しかもサブプライムローンは全額が不良債権になったわけではないし、アメリカ国内の保有は半分くらいだったので、私が一貫して「大したことはない」と言っていた訳がわかると思います。

トランプ政策のツケ見込み;米国政府予算規模450兆円、うちトランプが左右できる政策余地は1割もないが、あったとして、そのうち2割がツケとなったとしても、年9兆円。4年で36兆円にすぎない。対GDP比ではわずか1.8%。8年やったところで4%弱。

  こうして数字を比較して見れば、たかがトランプで騒ぐほどアメリカはヤワじゃないというのが、よく理解できると思います。騒ぎ立てるエコノミストがいたら、上の数字を見せてあげましょう(笑)。

  そして、トランプ暴落と同時に起こるのは「フライト・トゥー・クオリティ」=米国債ラリーに決まっているのです。

つづく

  次回はトランプによって不確実性が増す地政学上のリスクを見ておきましょう。私が前回の講演会の趣旨として掲げた「同時多発ポピュリズム現象」のリスクです。

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トランプのアメリカに投資しても大丈夫か その5

2016年12月22日 | 米国債への投資

  前回のシリーズ記事で私は、「金利高は商品相場から見ると、溜まっていたマグマが噴出した分もありそうだ」と申し上げました。一方で今回の金利高はドル高、中でも円安を誘発しています。ということは、実はこの円安も米国金利を媒介にして、同様なマグマだまりがあったため、大きく噴出した面があるかもしれません。

  では、そもそもこの大きな動きを誘発したトランプラリーが、いったいいつまで、あるいは相場で言えばどのくらいのレベルまで続くのかを、当たるも八卦でトランプ占いしてみましょう。

  先週、大学時代のクラス会がありました。一人ずつ近況報告をするのですが、私は今年の春、チャリティー・イベントで来日したゲーリー・プレーヤーの通訳をしたことを報告しました。するとある同級生がわざわざ私の隣に席を移してきて、ゴルフで私にからんできました。春になったら「オマエと勝負しよう」というのです。

  クラス会ではゴルフの会も春と秋に行っているのですが、平日のため現役の彼は参加したことがなく、私は一緒にプレーをしたことがありません。ゴルフ好きの彼は、私のゴルフが気になってしかたないらしいのです。彼からの挑戦に私は「喜んで受けて立つよ」と応えたら、彼は臆面もなく「ハンディを10よこせ」とくるではありませんか。しかも「オレは負ける勝負はしない。お互いのオフィシャル・ハンディ差どおりで勝負しよう」言うのです。

  通常はハンディ差を7掛けして勝負するのですが、それじゃ負けそうだからヤダとごねるので、しぶしぶ承諾。決闘はなんと来年4月29日(土)、場所は利根の河原、ではなく、大利根カントリークラブに決まりました。相手も場所も申し分ありません。

  しかし何故そんなに先なのか。私が冬の間ゴルフをしないこともあるのですが、いまだに現役の彼は接待ゴルフが多く年中ゴルフをやりっぱなしで、なんと手帳を見るとそこまでの週末はすべてゴルフで埋まっているのです。そこでしかたなく連休になったのです。

  そして何故名門大利根カントリークラブなのかと申しますと、決闘の立会人を申し出たクラスメートが、折角なのでいいところを取るよ、とアレンジしてくれることになり、彼の知り合いのクラブになったのです。そうしているうちに立会人の数がどんどん増えて、遂に2組でやろうということになってしまいました。しかし来年の連休までゴルフが毎週入っているとは、さすが巨大金融機関の現役会長さんです。来年の連休には決闘の結果をみなさんに報告いたします(笑)。

  話を戻します。ゴルフの話が終わると会長さんとの話は、「トランプ大統領でいったいアメリカはどうなるか」の話に移りました。その中で特に真剣に議論したのが「トランプラリーはいつまで続くか」だったのです。私と彼とは、春頃には終わるだろうとの見通しで一致しました。一般に言われているとおりですが、なにせ影響力のあるお方の発言なので、あまり深くはご披露できませんが、私の意見とおよそのところで一致した部分をご紹介します。

  株価はざっくりとダウ2万ドル前後、金利は3%程度、ドル円は120円程度。これらは当然オーバーシュートもあるでしょうが、行き過ぎたら戻る。そして彼はドル円レートについては、戻りがあっても115円を大きく下回ることはないだろうとも言っていました。

  トランプラリーの大元であるアメリカの株価を数字で見ておきましょう。どう見てもスピード違反には違いないので、どこかでスローダウンするとみています。S&P500社の予想PERを指標として見ると、現状で17倍を超えています。過去にさかのぼるとITバブル時代、例外的に20倍台後半にまで達してはいますが、今回のラリーは政策期待ラリーであり、ITバブルのように将来の業績期待が著しく上向いたものでないため、そこまではいかないだろうと思われます。

  では、ここからあとどのくらい上昇を見ておくのか。

  実は16年のアメリカ企業の業績はおしなべて利益成長がスローダウンしています。それもあって17年は予想収益が上向きやすく、2桁増益になるというのがコンセンサス予想です。原油高や賃金上昇・減税による消費増期待が企業収益を押し上げます。しかし金利上昇が住宅投資と自動車販売の頭を抑えるとみています。

  先ほど予想PERが17倍を超えていると申し上げましたが、それはこの2ケタ増益をすでに織り込んでいます。そしてついでにトランプ期待も織り込んだとみられます。

  トランプ政策で直接企業収益にメリットがあるのは、法人税減税です。現状35%の税率を15%にしようというのがトランプですが、今後議会との駆け引きの中でとてもそこまではいかないだろうというのがコンセンサス見通しです。しかも減税は一気にではなく段階を踏む可能性が大きいのです。そこで減税率は10%ずつ2回、最終的には25%まで下げるとして、収益はどの程度押し上げられるかを計算します。すると約15%の増益要因になると計算できます。(35マイナス25の10%ではありません。)そしてその半分の7.5%が来年実現するとした株価が、現在の株価だという見方です。

  ではこのシミュレーションと現実の株価を比較します。トランプ当選前の11月7日の株価と、昨日の株価を比較します。比較のためダウものせます。

      11月7日      12月22日   上昇率

S&P500     2,131   2,265     6.3%

DOW            18,260         19,942           9.2%

     より広い株をカバーしているS&P500 では、7.5%まであと一歩。NYダウはすでに2ポイント近く超過しています。トランプ効果の最重要点についてはかなりの程度カバーされたとみることができます。

  今後さらに10%の減税を来年中に織り込むとすると、ここまでの上昇にさらに7.5%を加えてもよいことになります。

  しかし、政策期待だけだと少しくらいオーバーシュートしても、それはいずれ巻戻される可能性が強い。その時期は春先だろうという見立てです。あいまいな時期予想ですが、要はトランプの大統領就任後に出される政策が見える時期ということで、「期待で買われ、事実で売られる」ことになるのでしょう。

  以上がトランプラリーがどこまで、そしていつまで続くのかの私と友人のラフな見通しです。

  次回は少し長期視点に戻って、シリーズ本題の「トランプのアメリカに投資しても大丈夫か」をしっかりとみることにします。

つづく

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ドル建てMMFからドルのまま米国債へ投資をする時の課税について

2016年12月19日 | H28年、証券税制変更のおまとめ情報

  読者のお一人であるPuffinさんから、ドル建てMMFからドルのまま米国債へ投資をする際、為替差益が出ている場合はその時点で課税されるという投稿をいただきました。

  まだ一社だけの例とありますが、Puffinさんのコメント欄への投稿のその部分を引用させていただき、みなさんへのお知らせとさせていただきます。

 引用

米国債は、利率や為替を一切考慮せずに毎月定期購入(円貨から直接購入)を9年間行ってきましたが、手元資金に余裕がある時は更に外貨MMFも積み増ししてきておりました。
今回、そのMMFから米国債の買い付けを久し振りに行ってみました。

その際、言われて知ったのですが、外貨MMFからUSDのまま米国債を購入する場合でも、外貨MMFを解約する時点で一旦円貨に直して計算し為替差益が出た場合は税金がかかる、との事。


えーっ、聞いてないよー、と思い、いつからそうなったのか尋ねたら、この前の税制改訂で外貨MMFの為替差益が課税されるように変わった時から、だそうです。

うーん、少しずつでも積んできて今結構それなりの額が外貨MMFにあるので、ちょっとショックでした。円高の時の購入分の含み益の約20%が持っていかれる計算ですね。毎月の定期購入分は直接円貨からの買い入れだったので、そうなっていたとは知りませんでした。

米国債は複数の証券会社に分散しているので、まだ1社だけの話です。他の証券会社もどうなっているか、機会ある時に聞いてみます。でも、税制が原因だったら、どこも一緒かなあ。

 引用終わり

  Puffinさん、貴重な情報をありがとうございます。

林のコメントとしては、たとえ米国債への転換時点で課税されなくとも、将来米国債が償還を迎えるか売却をするとき、もし為替差益が出ていると、いずれにしろ為替差益には課税されます。転換時点で課税されるということは、課税の繰り延べができないということです。

また米国債への転換時点でドルの評価替えが行われるため、償還あるいは売却時の差益はその分縮小することになります。

 

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トランプのアメリカに投資しても大丈夫か その4

2016年12月16日 | 米国債への投資

  山口県長門の大谷山荘が安倍・プーチン会談に使われています。数年前に夫婦で山口を訪れたときに宿泊しました。我々の旅行は宇部空港からレンタカーでの旅でした。まず萩からスタートし、「萩城北門屋敷」に2泊、そのあと大谷山荘に2泊、最後は津和野で3泊。宿泊した旅館では、圧倒的に大谷山荘が素晴らしかった覚えがあります。いままで泊まった日本の旅館・ホテルでもトップクラスのサービスだと思いました。もっとも私は超有名な旅館などに宿泊したことはありませんので、あくまで私の経験の範囲でのお話です。

   実はレンタカーのナビでガイドされたのは大谷山荘本館ではなく、同じ敷地内にある別邸「音信」。オトズレと読む超プレミアムホテルでした。今回使用されているのはこちらです。到着して名前を告げると、「お客様の宿泊はお隣です」と言われ、Uターンして本館へ(笑)。あとでパンフレットを見て驚いたのは、音信はほとんどがメゾネット・タイプのスイート。大きな建物なのにわずか18室しかありません。素晴らしいシアター仕様のビデオ・オーディオ設備がついていました。泊まりたかったけど、値段を聞いてあきらめました。お一人様一泊、はちまんえんなりー(笑)。音信の名前は大谷山荘の前を流れる音信川にちなんでいるそうです。

  本館でもサービスはとても素晴らしく、音信川に作られた露天風呂や散歩道の風情は最高でした。食事もとてもおいしかったのを思い出します。ところがプーチンは、どこへ行っても出された食事は一切摂らないそうです。そのかわり料理人を連れ歩きます。もちろん毒殺をおそれているのです。世界で一番恐れられているのは自分のくせに。だからこそ人から出されたものは絶対に食べないのでしょう。そしてあの遅刻のいやらしさはなんなのでしょう。世界の首脳との会談だけでなく、エリザベス女王との会談ですら1時間も遅刻したそうですね。

 

   さて、アメリカではFRBが予定通りの利上げを行いました。

「噂で買い、事実で売れ」の格言通り、その日のアメリカ株は久々の三桁反落でした。そして金利と為替が激しく反応しています。「相対的に危険な円」が売られたのでしょう(笑)。

今回FRBが示唆したことで重要な点は、

・来年の利上げ見込み回数が3回になった

・現状の経済の見方を若干上向きに変更した

そして私が印象に残ったイエレン議長からの最も大事なメッセージは、

「利上げとは、経済に対する信認である」

という発言です。なんとも頼もしいではありませんか。さらに、

現時点で完全雇用を取り戻すための刺激策として、財政政策は明らかに不要であると考える。」と、トランプへの牽制ともとれる言葉を述べています。完全雇用下での財政出動など、インフレを誘発させるだけの愚策です。

  ただし慎重な彼女は、「次期米大統領に政策に関して助言することはしない。私はFRBの独立性を強く信じている。われわれは最大雇用とインフレという二重の責務達成に向けて、金融政策を決定するための独立性を議会から付与されており、今後もこれに注力する所存だ。」(ロイター)とも言っています。

  自分たちも政権側も相互に不可侵、独立性を保つべきだと強調し、クギを刺したのです。きっとそのうちトランプが噛みつくことでしょう(笑)。

  今回の利上げや来年の見通しもサプライズなしのはずが、株価は当日に下落。ちょっとはしゃぎすぎた反動と私は見ています。株よりも激しく反応したのが長期金利でした。

  前回私はアメリカの金利についてこう申し上げました。

「商品相場の大きな上昇にもかかわらず、米国債の10年物金利は2月に1.7%台だったものが、10月末で1.8%とその間逆に低下したくらいで上昇していませんでした。つまりここへきての金利の急上昇は、『トランプ以前から溜まっていたマグマが、トランプによって解き放たれた』」とも言えます。

  今回はもう一つ付け加えます。それは、

「米国債金利は世界に先駆けて正常化に踏み出した。」ということです。

  今年の初めの米国債金利のレベルは現在よりちょっと低い2.2%くらいでした。それがもっと高くなったら投資しようと多くの方が待機されていました。そのことを考えれば、ここにきての金利急上昇といっても、やっと年初よりちょっと高くなった程度です。私の感覚ではまだ正常化レベルにも至っていないということです。

  私の考える正常レベルとは、短期の政策金利であと1%上のレベル。長期金利では3%台と思っています。もっともこれは相対的なレベル感なので、これが正しいというものではありません。

  債券投資をするときに気を付けていただきたいのは、金利上昇は債券価格を下落させることです。多くの債券投資家に悪い影響を与えるため、債券から株などへの資金シフトが起こりやすいのです。従って、投資戦略を専門とするアナリストなどの見通しが「債券売り、株買い」になるのです。

  このサイトをご覧になっているみなさんにとって、「またとない投資チャンスが到来した」となるのとは正反対です。それは、一般的債券投資ではその年ごとのパフォーマンスを判断されるため、金利上昇による価格下落はパフォーマンスを悪くすることにつながります。従って、「債券は売っておくべし」となるのです。

  しかし債券を償還まで持ち切るタイプの投資家にとっては、毎年のパフォーマンスなど全く関係がありません。本年中、しかもトランプラリー前に米国債に投資された方の多くは、今年末の評価額がマイナスと出るため、ショックを受けるかもしれません。しかしそれはあくまで評価損であって、実現損ではありませんので、気にする必要はないのです。

  ですので、今後もし本格的グレートローテーションが起こったとしても、それは債券ファンドなどの投資家に悪影響が出るだけで、持ち切り投資家に影響はなく、心配の必要はありません。

  では一体、トランプラリーはいつごろまで続くのでしょうか。とても難しい予測ですが、次回以降、当たるも八卦でトライしてみます。

つづく

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