ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(債券投資の専門家)

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神様のご託宣、後日談

2021年05月29日 | アメリカの金融市場

  前回の投稿で1980年代初頭ソロモン・ブラザーズのアナリスト、カウフマンのご託宣が大当たりし、それまで金利が上昇一方であったのが、金利の下降トレンド入りした。それがいまだに収まらないと申し上げました。

  この場合の下降トレンドとは、40年レンジの非常に長いスパンのお話です。しかし実際には金利は日々上下し、時折大きなイベントがあると乱高下します。カウフマンは大きなトレンド変化を予測しただけでなく、短期的な上下もかなりの確度で言い当てていました。

 

  一方、当時投資銀行としてのソロモン・ブラザーズは最強のボンドハウスの名を欲しいままに、債券トレードで毎年莫大な利益を上げていたのです。そこに目を付けたSEC(証券取引委員会)は、ソロモン・ブラザーズの査察に着手しました。トレーダー連中がご託宣をあらかじめカウフマンから聞き出し、先回りして売買しているのではないかという疑いをもったのです。債券価格が上昇する予測が出る前に買っておき、ご託宣が出て市場参加者が買いの手を入れる時にはニッコリ笑って売り渡す。そうすればいくらでも儲かるので、あのような莫大な利益を上げているに違いないと目星をつけたのです。

  しかし査察が入って間もなく、ソロモンは無罪放免となりました。ソロモンのトレーダー達は、そんなすぐにバレるようなドジは踏んでいなっかたのです。ではどうして大儲けできたのか。その理由は、ご託宣に動かされウゾウムゾウの市場参加者が全員買いに回り価格が暴騰した時に、逆に空売りを仕掛けるという勝負をしていたのです。一日で非常に大きく買われると、その反動は必ずあると踏んで、ウゾウムゾウとは逆のトレードをして儲けていたのです。

  逆も真なり。金利が上がるというご託宣が出ると、みんなが債券を売りに回る。そこで底値を拾い、反動でみんなが買う頃に売りに回る。株式でもそうですが、暴騰や暴落の翌日などは反動が出ます。反動の値動きが小さくとも繰り返すことでチリも積もれば山となる。

  売買のヒストリーはトレーダー一人一人の記録が詳細に残されていますので無実が証明され、あっと言う間に無罪放免となりました。しかしそうした手口が知れ渡ると次々に真似る証券会社が出てきて、利益率も落ちてしまいました。その次に出てきたのがアービトラージ=裁定取引という手法です。

  単純な売り買いでは得もすれば損もする。丁半バクチのような原始的手法では大きな損失を被る危険性もあります。その点、裁定取引では市場全体の動きには中立のポジションを取るため、大暴落したからといってたいして損もしなければ得もしません。その原理を簡単な例で説明します。

 

  今のNY株式市場を例にとります。ここ10年程度、代表的銘柄30種で構成されるNYダウ平均株価に比べると、ナスダック市場はかなり株価の値上がり率は高く推移しています。今後もそのトレンドが続くであろうと見込んだ場合、ナスダックを100単位買い、ダウは同じ100単位空売りします。

  その両建てのポジションを取る意味は、例えば今回の突然のコロナ禍の暴落があっても、したたかに生き残ろうという戦略です。もし2020年年初にそのポジションをとったとします。するとそのわずか3か月後突然のコロナ禍により、株式市場全体は3割もの大暴落に見舞われました。しかし両建てにしていたためその時の損得はダウの33%下落に対してナスダックは25%でした。すると空売りしていたダウでは33%の利益。買っていたナスダックでは25%の損。その差8%が儲けとして残ります。もしどちらかを買いだけで保有しているとダウ だと33%、ナスダックだと25%損してしまいます。売りと買いを両建てにするのはこうした暴落への備えになります。

  ではそのポジションを21年の5月末現在まで保持しているとどうだったでしょうか。空売りしているダウ は20%値上がりしてしまったので、その分が損失になります。一方買い持ちのナスダックは52%値上がりしていますので、その差は32%と、大きく儲かります。52%まるまる得はしませんでしたが、暴落時にもヘッジされていたため、ニッコリ笑ってやり過ごすことができたはずです。

  これはたまたま成長著しいナスダックとまあまあの成長であるNYダウをヘッジに利用した成功例です。もし今後も何年か同じような傾向が続くと見れば、この戦略は続ける価値があるかもしれません。

  しかしナスダックの高成長もそろそろだと考えるのであれば、逆のポジションを取りましょう。つまりナスダックを空売りして、同額のダウを買うのです。そうすれば今後の株式市場全体の暴落には備えられますし、うまくいけば行き過ぎたナスダックの空売りで儲かるかもしれません。

  しかし今後もナスダックの成長が著しいと、両者の乖離が縮小せず逆に拡大の一途をたどり、股裂きに合うかもしれません(笑)。

 

  ソロモンでは80年代後半から90年代にかけて高度な数学的解析手法を使い様々な裁定取引を行い、莫大な利益をあげていました。90年に入社した私も、日本市場ですら裁定取引部隊の儲けぶりには本当に驚かされました。

  ところが好事魔多し。91年に債券トレーダーの一人がアメリカ国債の新発債発行額の9割方を買い占めるという違法行為をして、債券取引や裁定取引のヘッドが全員クビになりました。新発債を毎度ソロモンが力任せに買い占めるのはけしからんとして、3割までにしろというルールができていたのです。その名もソロモンルールと呼ばれていました。

  そこでクビになったトレーディング部隊の何名かが自分たちの実績を背景に、94年にLTCMというヘッジファンドを組成して資金を集めました。そのグループにはノーベル経済学賞を取った研究者まで参加したためドリームチームと呼ばれ、なんと初手から1千億円を超えるカネを集めました。最初の3年間は毎年数十%にものぼる利益を出しましたが、97年からのアジア危機で股裂きに合い、数千億円の損失を出し解散したのです。先ほどの例でたとえれば、ナスダックもいずれ崩れるに違いないと踏んで空売りしたのですが、ヘッジ用に買ったダウとの差は開く一方で、股裂きに合ったというような具合です。しかもその損失処理額が大規模な裁定ポジションを取っていたため莫大で、なんとFRBが出動するまでにいたりました。こうして裁定取引も舞台の主役から降りることになったのです。

 

  奢れる者久しからず。儲け過ぎるといずれは破綻が待っています。LTCMしかり、その後のリーマン・ブラザーズしかり。今後のナスダック市場についても複数の識者から、「いにしえの南海泡沫事件やオランダのチューリップ投機並みだ」と言われるほどになっていますので、要注意です。

 

  おのおの方、決して油断召されるな!

 

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予測の神様のご託宣

2021年05月25日 | アメリカの金融市場

  ウォール街で予測の神様と言われた男がいます。その名はヘンリー・カウフマン。アメリカの金利の大きな転換点を言い当てたアナリストとしてその名を轟かせました。アメリカ金利最大の転換点とは1981年の高金利からの転換点です。金利レベルの変化がどの程度だったか、長期金利の指標である10年物金利を例にとり説明します。戦後からの超長期的推移を見ますと、40年代の2%台半ばから20年かけて60年代にやっと3%台半ばまで上昇。ところがその後の20年間は怒涛の上昇を見せ、80年になんと15%程度まで上り詰めます。その間には73年のオイルショックで原油が2倍に高騰し、一般物価も世界的に大暴騰。日本でも74年のインフレ率が23%にもなり「狂乱物価」と言われたこともありました。

  10年物金利が15%に近づいた時に金融アナリストとして名をはせていたヘンリー・カウフマンによる神のご託宣がありました。

「金利は転換点を迎え、低下する」という予測を出したのです。当時カウフマンはボンドハウスとして「ウォール街の帝王」とまで言われたソロモン・ブラザーズに在籍し、チーフ・エコノミストを務めていました。

  ご託宣直後にピークを付けた長期金利は2020年代の現在までほぼ一貫して低下を続け、遂に1%台に至りましたので、彼のご託宣はいまだに生き続けていると言っても過言ではありません。

  その彼が最近久々にご託宣を出したのです。その内容は、「FRBは今年の年末から年始にかけてゼロ金利を解消する」というものです。FRBの示唆や一般的予想よりはるかに転換点は早く来るという予想です。

 

  ではちょっと長いですが新潮社の国際情報サイトである「Foresight」によるインタビュー記事を興味深い内容ですのでそのまま引用します。コロナへの対処やアメリカ経済・金融財政事情の見通しも述べています。

 

タイトル;予測の神様カウフマン氏「来年にかけて米ゼロ金利解消」

21年5月14日

米国の物価上昇が世界の市場を揺さぶっている。(林の注;4月の物価は前年比4.2%)大規模な財政出動や金融緩和の継続が、経済に何をもたらすのか不透明感が強まってきたためだ。1982年に始まった金利低下への大転換を言い当て「予測の神様」と呼ばれるエコノミスト、ヘンリー・カウフマン氏に聞いたところ、米連邦準備理事会(FRB)は「ゼロ金利を年末から来年初めにかけて解消する」と予想した。

 

――市場でインフレ懸念が高まっています。

「景気が平常のレベルに回復するのに伴い物価は上昇する。とくに景気回復の初期にはインフレ圧力が急激に拡大するのは避けられない。年後半から来年にかけて物価は一段と上昇し、インフレ率は2~3%程度まで上昇すると予想する。新型コロナウイルスが景気に与える影響が収束するのに伴い、ゼロ金利も年末から来年初めにかけて解消するとみている」

「ただ、米国や世界の他の諸国がコロナ危機から脱却すれば、インフレ圧力が長期にわたり加速する可能性は小さい。世界経済は依然として物やサービスで生産能力がかなり過剰な状態となっているからだ」

 

――パウエルFRB議長は資産購入縮小の時期はまだ先と表明しています。米連邦公開市場委員会(FOMC)参加者の政策金利見通しでは2023年末までゼロ金利が中央値です。

「FRBは現在、月に1200億ドル(約13兆円)相当の米国債と住宅ローン担保証券(RMBS)の購入をいつ止めるかのタイミングをはかっている最中だ。コロナの収束がはっきりする今年後半にはテーパリング(購入縮小)を開始するとみている」

 

――コロナ禍の景気後退への政府やFRBの対応をどう評価しますか。

「景気のサイクルから逸脱し、100年に一回くらいしか起こらないという意味では異例の景気後退となった状況で、米国債やRMBSといった資産の購入を実施したFRBの対応は評価できる。ただ、信用度に劣る低格付け債(ジャンク債)などの民間企業の債務や州・自治体の地方債まで購入の用意があるという意思表示は不適切だ。金融市場が不必要にゆがむ要因になるからだ」

「コロナ禍で打撃を受けた航空業界への政府支援も別のやり方をすべきだった。業績が悪化したのなら米連邦破産法11条による会社更生を申請し、その下で事業を継続すべきだった。市場メカニズムを利用すれば、政府は支援金を別の用途に回すことができた。航空業界にとっては債権者との交渉で債務の構成を改善する機会にもなったはずだ」

「こうした危機に直面した場合には、政府や中央銀行が能力以上の介入をするよりも市場の機能に委ね、いくつかの会社の破綻などを許容しながら、経済を回していくというのが得策だ」

 

――バイデン政権になって"大きな政府"を懸念しますか。

「現在の米経済は、Capitalism(資本主義)から、大きな政府、大企業、大手金融機関が寡占するStatism(国家統制主義)に転換しつつある。例えば、1990年代には金融機関大手10社で米金融資産の10%を握るにすぎなかったが、現在ではそれが80%に上る。国民の貯蓄や投資資金の流れの大半を大手10社が握るという状況はマネーを広範に配分すべき金融市場の競争を妨げる」

 

――今、金融市場で最大の懸念は何ですか。

「中央銀行による過剰な流動性供給で、ジャンク債など投機的な債券も利回りが急激に低下し、投資適格社債との利回り格差が急激に縮小したことだ。格付けがトリプルAの社債は1980年代には60本ほどあったのが、現在ではジョンソン・エンド・ジョンソンとマイクロソフトの2本だけだ。社債の質は全般に悪化していながら金利が低く抑えられている。金融政策が引き締めに転じた時にジャンク債市場が深刻な打撃を受ける可能性がある。それを懸念している」

 

以下はインタビューに続くカウフマン紹介記事の内容です。

 

ヘンリー・カウフマン(Henry Kaufman) ニューヨーク連銀、米証券ソロモン・ブラザーズの調査部長、シニア・パートナーを経て88年に独立。ヘンリー・カウフマン&カンパニー代表。金融危機を前に警鐘を鳴らし「予測の神様」と呼ばれた。このほど出版した著作「The Day the Markets Roared」で、30年間続いてきた金利上昇から低下への大転換を予測した82年8月17日のメモや、予測を巡る金融業界の動揺を描いた。3カ月物米財務省証券(TB)の金利が15%近かった当時から40年近くを経てゼロ金利に至る現在までの金利低下の始まりの予測だった。93歳。(私はソロモンに90年に入社したため、彼とはすれ違っています)

 

  ここからは林の解説と見方です。現在FRBは市場に資金を供給するために国債や住宅抵当証券を大量に買い入れ続けています。テーパリングとはその買い入れ額を徐々に削減する政策変更ですが、額を削減しても買い入れを続けるのに何故そのことが大きな問題になっているのでしょうか。それは08年のリーマンショック後に大規模緩和をして、そこから経済が回復している13年に買い入れ額を削減しようとして当時のバーナンキFRB議長が「テーパリング」の一言を言ったとたん、株式市場が暴落してしまったからです。

  その再現を嫌って現在のパウエル議長も緩和基調の転換に非常に神経質になっています。しかし13年5月のバーナンキショックは実際には大暴落ではなく、大ショックというほどのものではありませんでした。ですので私にはバーナンキは「あつものに懲りてなますを吹いている」としか思えません。

 

  それでも先日「アメリカ株式バブル崩壊の足音」で書いたように、あらゆる資産価格が大きく膨らんでいるため、特に株式市場や仮想通貨市場の反応は厳しいものが見込まれます。FRBは23年までゼロ金利政策を続けると示唆しているため、市場の見方もそれに近いのですが、カウフマンは1年以内とかなり強気の見方をしています。

  私自身はその中間、カウフマンよりは遅いが市場やFRBの示唆よりは早めにテーパリングが開始され、金利も上昇を始めるだろうと思っています。

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バイデンの大きな過ち

2021年05月17日 | バイデンのアメリカ

   パレスチナ人が押し込められているガザ地区にイスラエル軍が空爆し、すでに子供を含む約200人もの命が犠牲になっています。空爆により大きなビルが破壊される様は、信じられない光景です。しかもそのビルの一つはイスラエル側はハマスの拠点だと主張していますが、海外メディアの多くが報道拠点として使用しているビルでした。その空爆を「当然の報復だ」とバイデンアメリカ大統領が言い放ちました。私にとってはまさかの愚かな発言です。何故おろかなのか、

  今回のパレスチナ人の暴動の直接的原因はイスラエル側にあるからです。一つは東エルサレムの居留区にいるパレスチナ人をイスラエルの入植者が強引に締め出そうとする侵略行為。もう一つはエルサレムという中立地帯にあるイスラム寺院への立ち入りを、イスラエルがバリケードで阻止したこと。

  投石とロケット砲という素朴な抵抗に対して、いつものように軍隊の組織だった「空爆で反撃したのは正当な行為だ」と断定したバイデンには驚きます。

 

  私が家内とエルサレムを訪問したのは2011年1月の「アラブの春」の直前、12月の平和な時でした。ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の聖地が集まる聖地は、緊張の中にも静かな空気の流れる場所でした。

  そもそもエルサレムという宗教上非常にデリケートな場所は 、1947 年に国連総会がエルサレムを国際管理下に置くと決定し、関係国や各宗教や政治組織はそれに従っていました。その後も国連総会は1980年に安全保障理事会決議478に基づき、聖地エルサレムへの外交使節団の常駐を控えることを呼びかけました。

  この国際的合意をトランプが無視して、17年にエルサレムにアメリカ大使館を移転させるという暴挙に出ました。選挙での得票だけを考える愚かなトランプの選択を、バイデンは元に戻すものだと思っていたのに、いま正反対の行為に出ています。

  国連は現在のガザ地区の状況を憂慮して安保理を緊急開催し非難決議を出そうとしましたが、イスラエルを支持するアメリカの反対により共同決議を出すことができませんでした。

  いったいバイデンは何を考えているのか。選挙中にはパレスチナ支援を表明していたのに、なぜ変身したのか。今さらイスラエルを支持しても、トランプ支持のユダヤ系アメリカ人の支持など得られるはずはないのに。バイデンの決断を世界も疑問視し、身内の民主党議員も反対に回る人が出始めています。トランプのメチャクチャな外交をブリンケン国務長官とのコンビで着々と正常化しつつあったのに、これでは元の木阿弥です。

  ブリンケン自身は両親ともユダヤ系ですが人権擁護派で、トランプ時代からイスラムのロヒンギャの人権を擁護すべきと表明し、就任後も現在のミャンマーの状況はジェノサイドだと主張しています。しかし今回のイスラエル支持ではユダヤの血が騒いだのかもしれません。

  見るに堪えないイスラエルの空爆を放置するバイデンにはあきれるほかありません。

  このバイデンの中東政策をアメリカ国内ではどうとらえているか。現時点では多くの有力メディアは私と同様、パレスチナの人権問題を憂慮したトーンになっています。これによりバイデンの支持率がどうなるかは、もう少し時間を経て世論調査を見る必要がありますが、これ以上バイデン政権がイスラエルを煽らないことを祈ります。

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ワクチン接種パンデミック2、せっかち老人のたわごと

2021年05月14日 | コロナショック

やっと出ましたね、指定日接種方式。

東日本大震災の時、原子力発電所の立地に近かったため全国的に名が知れ渡った福島県南相馬市では、指定日接種制を導入しているそうです。住民からは、

「予約ができるかどうかの心配をしないで済むのでありがたい」とか、「高齢者でオンライン予約なんてできないので助かる」という声がでているそうです。そして指定日は困るという話はないそうです。もちろん都合が悪ければ変更可能です。

指定日制により自治体側も「電話予約の混乱などなく、みなさんに喜んでいただけるので、よかったと思う」とのこと。

 

もう一例は、東京都日の出町です。中曽根首相がレーガン大統領夫妻を彼の「日の出山荘」に招いたことでその名が知れ渡ったた町です。こちらは町にある小単位の自治会に日にちを割り当て、個人予約の手間を省いたそうで、やはり好評のようです。

広い日本でまさかこの2例だけではないでしょうが、老齢人口の多い東京区部などの大どころでは、指定日制の話は一向に出てきていないようです。

ニュースで流れていた高齢者の話では、「予約が一週間たってもできないので、毎日寝ることもできない」というひどい話でした。

 

  かく言う私の場合ですが、連休明けにやっと世田谷区から接種券が郵送されてきたので、試しに電話をかけてみましたが、もちろん予想通り「混みあっています、おかけなおしください」でおしまい。

ではとネットでのアクセスを試みました。24時間対応なので、午後と夕食後の時間帯でしたが混みあっていてアクセスできませんでした。

私は毎日ゴルフ時間に起きる人なので(笑)、起きぬけの翌朝5時半に試すとスムーズにつながりました。でもそこでできたのは予約ではなく登録のみでした。半日すると登録ができたとのメールが来て、やっと予約の段階に進みました。

普通ならその返信メールに「予約はこちら→URL・・・」となっていそうですがそうはなっていないため、またつながりにくい世田谷区のサイトに行って、予約サイトを発見しないといけません。

 

ところがここからが問題です。世田谷区は東京でも最も広く人口も多いため、接種場所も多いのですが、自分の住所を指定しても場所を決めるのに一苦労。うちからは遠い番地の会場しか出てきません。一つのページに同じ会場の希望時間が延々とでてくるのです。そこで次のページ行くと、それもまた同じ遠い場所が延々と続きます。その会場だけでなんと数ページも続くのです。そこで思い切りページ何十ページも飛ばしてみると、やっと近所の会場が出てきました。

デジタルオンチの作った予約サイトは最悪です。それでも5月12日時点で予約できたのが7月15日。それを終えて2回目の予約をするときも同じ目に遭いながら、やっと8月中旬に予約できました。たったこれだけの作業に1時間半も悪戦苦闘するとは、情けない。

こんなことを日本中でやっているお役所仕事とは、住民にも役人自身にも迷惑至極でしかないと思いました。指定日時制にすれば簡単に済むことなのに。

9月に予定されるデジタル庁、デジタルオンチの寄せ集めでないことを祈ります。

 

以上、待つことが大嫌いな、せっかち老人のたわ言でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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アメリカ株式市場、バブル崩壊の足音

2021年05月09日 | アメリカの金融市場

  緊急事態宣言の延長は、誰もが予想していたことですので驚きはありませんね。「みっともない」という言葉は政府の辞書にはないのでしょう。

  横浜市でも80歳以上の高齢者が接種予約できないと嘆いています。日時指定をすれば済む簡単な話なのに。80歳以上の方々にワクチン以上に重要な予定などないのに。せっかくの救われた投資家さんの書き込みも、無視されてしまったようで残念です。日本中の関係者がこんな簡単なことに気づかないとは、ただただあきれるばかりです。

 

  本題に入ります。

  5月7日金曜日に4月のアメリカの雇用統計が発表されました。毎月最も注目を集める経済統計です。雇用者数の市場のコンセンサス予想は「100万人程度の増加」でしたが、実績はたった27万人増加と予想を大幅に下回りました。失業率も3月の実績6.0%から5.7%に低下の予想が、実際には6.1%とわずかですが逆に上昇となってしまいました。

  私が注目したのはその結果を受けて株価がしっかりと値上がりしたこととその評価コメントです。発表をうけたNYダウは229ドル高で3日連続の史上最高値更新となり34,777ドルで引けました。市場関係者の評価は、「雇用の増加数が低迷したことでFRBの緩和は継続するに違いない、それが最高値の連続更新となった」というものです。

  ではもし市場の期待を超えて雇用増加が120万人になったら、そのコメンテーター達はどう解釈したでしょう。きっと「予想を超えた雇用の増加が、株価の最高値更新を後押しした」となるに違いない。決して「今後FRBは警戒態勢に入るだろう」とは言いません。

  要は経済統計の結果がどっちに転ぼうが、前向きな解釈しかしなくなっている。このようなことは折に触れて見られる現象ではありますが、私には今回の100万人予想と実績27万人の乖離の大きさにもめげないことが、バブル崩壊への足音に聞こえるのです。これが崩壊への第一の足音です。

  他にもバブル形成と崩壊への萌芽が見られます。二つ目は株式市場を見ている方ならご存知のSPAC上場です。

  簡単に説明しますと、SPACとはSpecial Purpose Acquisition Companyの略で、日本語では特別買収目的会社と訳されています。これは特別な買収をするという意味ではなく、一般的に使われる用語である特別目的会社SPCの中で、買収だけを目的としている会社という意味です。

  ではSPAC上場とは何か。ちょっと分かりづらい解説の前に簡単に言えば、上場するにあたり「裏口上場」をするということです。株式市場への上場には長い準備期間と手間暇が必要です。理由は、中身の怪しい企業が上場しないようにするためです。その大変な手続きを簡略化し裏口上場させてしまうための手段が現れたのです。

  SPACは中身のない「空箱」とも呼ばれていて、「必ず有力な成長企業を買収するから」と約束だけしておカネを投資家から集めファンドとして上場します。有力企業の買収に成功すれば空箱と合併させて実態のある企業に変身します。「もし期限までに買収できなかったらオカネは返します」とだけ約束するのです。アメリカではこの空箱を白紙小切手、Blank Check Companyと呼んでいます。

  こんな裏口上場でもスポンサーに人寄せパンダとして俳優や元スポーツ選手などの有名人を起用してすでに数百社も組み上げられ、カネ集めに成功しています。これを利用した20年の年間新規上場数は247件と19年の4倍にもなりました。日本企業ではソフトバンクがこれに悪乗りしています。空箱に投資するとは、まさにバブル時代の象徴的現象の一つと捉えるべきです。

  今年になって新規上場数はさらに加速し、4月上旬までに昨年を超える300件もの上場数に達しました。こんなことが許されるのか。もちろん規制当局であるSECは黙っていません。加速したところで当局が規制に乗り出しました。その結果4月の裏口上場数はわずか10件と3月の100件の10分の1に激減。さてこの空箱いまだに数百もあるのですが、この先も激減するにちがいないと私は見ています。

 

  そして3つ目の崩壊の足音は世界的有力銀行の驚くべき過剰融資です。実態をしっかりと開示もしていない危うい個人資産の運用会社であるアルケゴスというファミリー・オフィスに合計1兆円を超えるカネを貸し込んでいたのです。投資対象株の暴落で明るみに出ました。ファミリー・オフィスとは固有名詞ではなく、個人的資産運用会社の一般的呼び名です。

  個人が保有する資産を運用するのに何故巨大銀行が貸し込むのか。いまある資産を運用すればいいだけのはずです。理由は大儲けのためにレバレッジを掛けるためです。レバレッジとは自己資金の何倍かを借り入れて運用するやり方で、企業ではリーマンブラザースが典型例で、30倍ものレバレッジを掛けていたため、相場が思惑とは逆にちょっと動いただけで吹き飛んでしまいました。

それら過剰融資をした銀行で判明しているのは以下のような銀行です。

クレディスイス;5,200億円

UBS;4,000億円

野村証券;3,077億円

モルガンスタンレー;1,000億円

強欲な一個人に強欲な銀行が貸し付ける、絵に描いたようなバブル症状です。

日本でもかつてバブル期に尾上縫という料亭の女将に興銀が1千億も貸して破綻の一因になりました。このアルケゴスのうわさは2月頃から立ち始め処理が進んでいるようですが、まだ全容解明には至っていません。これが第3の足音です。

 

  まだあります。崩壊の足音その4は、ビットコインに代表される仮想通貨、もしくはクリプトカレンシー市場の膨張です。

  コインゲッコーという調査会社によれば現状の通貨種類はなんと約6千種。時価総額はビットコインの120兆円を筆頭に合計220兆円。私から見れば、うぞうむぞうの仮想通貨にうそうむぞうの投資家が集まる様は、荒野でシマウマの死骸に集まるハイエナとハゲタカの群れに見えます。うろうろしても儲けるのは最初に見つけたハイエナだけ。ネット上の賭場もこれほどまでに膨らむと、破裂した時の影響は小さいものではありません。まともな金融機関がこの市場で資金の出し手として活躍しすぎないことを祈ります。そしてイーロンマスクのように正々堂々「ビットコインに投資をするぞ」という宣言をする有名人が相場を煽る役割を果たしているのは、SPAC狂騒曲と同じです。

 

  最後のバブルの足音は、買われ過ぎ指標であるPER、株価収益率です。アメリカ株の現在の株価は1株当たり利益の31倍まで買われています。01年のドットコムバブルでは27倍程度でしたので、それ以上のバブルになっています。

  株価収益率はとは簡単に言えば、年間利益の何倍まで買われているかの指標です。31倍まで株が買われているということは、そこまで高い株を買っても、報われるには31年かかるということです。過去の平均倍率を大きく上回ると、いずれは下落に転ずる。これぞバブルの足音の本命中の本命です。

 

みなさん、どうぞご注意あそばせ!

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