前回の記事では中国バブルの崩壊リスクについて、きっかけが不動産バブル崩壊に始まるだろうと申し上げました。中国の不動産バブルについては、これまで何度か指摘されてきましたが、実際には地域的な不動産価格の下落程度で終わっています。では今後も同じ様に大したことなく終わるか否を見てみましょう。私はもちろん今回は怪しいと見ています。
不動産バブルの崩壊の歴史を見ると典型的なパターンがみつかります。それらは以下の3つの条件が揃った時に起こります。
1.銀行が不動産を担保に貸出を増加させ、不動産業全体の負債比率が高まる
2.銀行以外の貸し手が不動産投機を煽るメカニズムを提供する
3.経済成長率の低下と不動産価格の下落が同時進行する
これを他国の例と中国の例で比較してみましょう。
まず1の負債比率です。日本のバブル時代、一般企業の自己資本比率は総資産の2割程度でした。その逆数の負債比率は自己資本に対して4倍もあったことになります。一般的に信用度の高い企業はの負債は自己資本の1-2倍程度で、4倍はかなり異常な状態でした。しかしその時は不動産や株式などの含み益があるので大丈夫だということになっていました。その中でも不動産投資にのめり込んだノンバンクだと10倍は当たり前、商社などでも10-20倍は当たり前で、中には50倍近い企業までありました。銀行は信用規制を逃れるためにノンバンクを積極的に利用したのです。株式や不動産の担保の価値が下がり始めると、自己資本はあっという間に飛んでしまい、いわゆる債務超過に陥ります。
アメリカでは投資家が古くから、銀行に対しても企業に対しても負債比率を厳しく見ていたため、自己資本比率を下げて投資に励むことはできなかったのですが、それを回避するために開発されたのが証券化という手法です。投資物件を自分のバランスシートから外して、投資家の手にゆだねるのが証券化手法です。しかしこれとて行き過ぎたらどうなるかは、証券化の極みともいえるサブプライムローンの例を見ればあきらかです。
中国ではどうかを見ます。不動産会社の自己資本比率のしっかりとした統計が取りにくいので、信用ある調査情報を援用します。昨年10月に発表されたJPMチェースの調査報告は企業全般に関して以下のように述べています。
「2012年の中国の企業債務残高は5年間で約3割増加し、約65兆元(約910兆円)に達している。対GDP比は124%で、過去15年間の最高水準である。一方、先進国の企業債務の平均的な対GDP比は50~70%であり、中国企業の負債規模は約その2倍となる。中国非金融系企業の利益率は世界平均の半分であるため、それを考慮に入れると、中国企業の負債率は実に世界平均の4倍となる。」
これはGDPとの対比で自己資本との対比ではありませんが、一般的先進国と比較して4倍というレベル感は得られると思います。ちなみに、上場している鉄鋼大手4社の負債比率は自己資本の丁度4倍程度です。この負債レベルは先ほどの日本のバブル期の一般企業並みに高く、危険水準に達していると言えます。不動産会社は非公開の地方政府系企業も多く、自己資本統計がないので正確には計りかねますが、不動産会社の倒産が増えている事実が切迫度合いを示していると言えます。
次に2.の銀行以外の貸し手の利用についてです。日本では銀行が自分ではもう貸出を増やせないところまで貸し出した後、活躍したのはノンバンクでした。ノンバンクというトンネル会社、もしくはう回経路を作り、貸出を増加させました。一方アメリカは証券化という別の道を作り、やはり過剰な負債の表面を取り繕ったのです。そしてそれに該当するのが中国ではシャドウバンクや理財商品、信託商品で、条件の2が揃ったと言えます。
最後の条件は3.の成長率の低下と不動産価格の下落です。成長率はいまのところ7%台で、中国としてはかなり低いのですが、一般論としてはまだ高めの成長率を保っています。しかしこのところの政府高官の発言は、さらなる成長率の低下を警告するものが増えています。となると成長率のさらなる低下が始まると、いよいよ危険水域に達します。
そして本命の不動産価格の動向ですが、これについては次回につづきます。
不動産バブルの崩壊の歴史を見ると典型的なパターンがみつかります。それらは以下の3つの条件が揃った時に起こります。
1.銀行が不動産を担保に貸出を増加させ、不動産業全体の負債比率が高まる
2.銀行以外の貸し手が不動産投機を煽るメカニズムを提供する
3.経済成長率の低下と不動産価格の下落が同時進行する
これを他国の例と中国の例で比較してみましょう。
まず1の負債比率です。日本のバブル時代、一般企業の自己資本比率は総資産の2割程度でした。その逆数の負債比率は自己資本に対して4倍もあったことになります。一般的に信用度の高い企業はの負債は自己資本の1-2倍程度で、4倍はかなり異常な状態でした。しかしその時は不動産や株式などの含み益があるので大丈夫だということになっていました。その中でも不動産投資にのめり込んだノンバンクだと10倍は当たり前、商社などでも10-20倍は当たり前で、中には50倍近い企業までありました。銀行は信用規制を逃れるためにノンバンクを積極的に利用したのです。株式や不動産の担保の価値が下がり始めると、自己資本はあっという間に飛んでしまい、いわゆる債務超過に陥ります。
アメリカでは投資家が古くから、銀行に対しても企業に対しても負債比率を厳しく見ていたため、自己資本比率を下げて投資に励むことはできなかったのですが、それを回避するために開発されたのが証券化という手法です。投資物件を自分のバランスシートから外して、投資家の手にゆだねるのが証券化手法です。しかしこれとて行き過ぎたらどうなるかは、証券化の極みともいえるサブプライムローンの例を見ればあきらかです。
中国ではどうかを見ます。不動産会社の自己資本比率のしっかりとした統計が取りにくいので、信用ある調査情報を援用します。昨年10月に発表されたJPMチェースの調査報告は企業全般に関して以下のように述べています。
「2012年の中国の企業債務残高は5年間で約3割増加し、約65兆元(約910兆円)に達している。対GDP比は124%で、過去15年間の最高水準である。一方、先進国の企業債務の平均的な対GDP比は50~70%であり、中国企業の負債規模は約その2倍となる。中国非金融系企業の利益率は世界平均の半分であるため、それを考慮に入れると、中国企業の負債率は実に世界平均の4倍となる。」
これはGDPとの対比で自己資本との対比ではありませんが、一般的先進国と比較して4倍というレベル感は得られると思います。ちなみに、上場している鉄鋼大手4社の負債比率は自己資本の丁度4倍程度です。この負債レベルは先ほどの日本のバブル期の一般企業並みに高く、危険水準に達していると言えます。不動産会社は非公開の地方政府系企業も多く、自己資本統計がないので正確には計りかねますが、不動産会社の倒産が増えている事実が切迫度合いを示していると言えます。
次に2.の銀行以外の貸し手の利用についてです。日本では銀行が自分ではもう貸出を増やせないところまで貸し出した後、活躍したのはノンバンクでした。ノンバンクというトンネル会社、もしくはう回経路を作り、貸出を増加させました。一方アメリカは証券化という別の道を作り、やはり過剰な負債の表面を取り繕ったのです。そしてそれに該当するのが中国ではシャドウバンクや理財商品、信託商品で、条件の2が揃ったと言えます。
最後の条件は3.の成長率の低下と不動産価格の下落です。成長率はいまのところ7%台で、中国としてはかなり低いのですが、一般論としてはまだ高めの成長率を保っています。しかしこのところの政府高官の発言は、さらなる成長率の低下を警告するものが増えています。となると成長率のさらなる低下が始まると、いよいよ危険水域に達します。
そして本命の不動産価格の動向ですが、これについては次回につづきます。