ニューヨークのダウ平均株価が3万ドルを超えましたね。米国株に投資をされている方も多いと思います。ご同慶の至りです。
アメリカ人の多くは長期の積立投資で税控除が受けられる401K制度で株式投資をしています。金融資産に占める株式や投信の割合は、日本の13%に対してアメリカは45%。反対に現預金は日本の54%に対してアメリカはわずか14%です。
従ってアメリカ人にとって株高は消費や住宅投資にプラスに働くため、それが将来の企業収益を改善し、さらに株高を支える材料になります。しかし株価が反転すると、逆に負の連鎖になりますので要注意です。
株価が割高か否かの判断材料となるPER(株価収益率)はアメリカですでに30倍に近いレベルに到達しています。従来企業収益に対する株価の倍率は15倍程度が妥当、20倍を超えると行き過ぎと言われていました。その水準をすでに大きく超えるところまで株は買われています。日本でも倍率は25倍に達しています。
それを作り出しているのが各国中央銀行による超緩和策ですが、このところのコロナ禍もあって引き締めの気配は一向にありません。
では緩和策が続く限り株高はどこまでも高進するのでしょうか。私はそうは見ていません。学生時代から50年以上相場を見ている人間ですから、単純に考え、高くなり過ぎた相場はそれなりに下落すると思っています。
日本の株価もアメリカに引きずられるように高くなりました。最近は、「20数年ぶりの高値」という言葉を毎日のように聞くようになりました。日経平均株価で89年末のピーク38,915円と比較すると、現在の26,500円は7割のレベルにまで回復しました。ちなみにバブル崩壊後のどん底は2009年の7,600円くらいでした。そこからは3.5倍になっています。
日米の株価を比較すると、この30年間で株式相場は歴然と差がつきました。NYダウは90年年初の2,770ドルが現在3万ドルへ約11倍も値上がりしています。
そしてもう一つの株式市場の見方で見ると、実はもっと違った景色を見ることができます。それは市場規模全体を表す「時価総額」の指標です。一社の株式数に株価を掛けると会社の時価総額が計算できますが、すべての銘柄の時価総額の合計が市場全体の時価総額です。
今年10月末の日本全体の株式時価総額は624兆円です。バブルの頂点での時価総額は611兆円でしたから、実はバブルの頂点を若干ですがすでに超えているのです。
先ほど示したように日経平均株価はまだピークの7割ですのでずいぶん景色は違います。この理由は、上場株式の銘柄は89年末のピーク時から大きく入れ替わっていますし、銘柄数が非常に多くなっていることによります。このため時価総額は大きくなったのです。ちなみに東証1部の1990年の銘柄数は1,190。現在は2,173と約2倍になっています。
一方アメリカにはNY市場だけでなく、ナスダック市場という大きな市場があり、存在感を強めています。数字で比較しますと、NY市場の時価総額21兆ドルに対して、ナスダックは16兆ドルもあり、76%に相当します。日本のナスダックに相当するジャスダックやマザーズ市場は東証に比較するとわずか5%しかありませんので、端数のような存在です。
円貨で換算するとNY市場の時価総額は2,200兆円、ナスダックは1,680兆円と巨大で、日本全体は624兆円に過ぎません。寂しい限りです。
特にナスダックに上場されている企業でGAFAMという巨大銘柄群の時価総額を並べてみますと、
Google;124兆円
Amazon; 162兆円
Facebook; 82兆円
Apple; 204兆円
Micro Soft;168兆円
たった5銘柄で合計740兆円と、日本全体624兆円を超えてしまいました。ちなみに日本で最大のトヨタの時価総額は21兆円です。
つまりアメリカの株式市場は株価の上昇もさることながら、ハイテク新興株の著しい成長に支えられていることがわかります。経済の好循環を作り出す、アメリカの経済力の源泉がここにあります。
では果たしてこの日米の株価の上昇はどこまで続くのか、楽しみに見ていきましょう。私の見方は、最初に「PERという指標で見て買われ過ぎ」と申し上げました。「超長期の視点から、妥当なPERにいずれは収れんする時がくるだろう」と思っています。