ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(債券投資の専門家)

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今年も一年、ありがとうございました!

2018年12月31日 | お知らせ

 今年も一年、私のブログを熱心にご覧いただき、誠にありがとうございました。みなさんからの励ましのコメントを糧に、来年も頑張ります。

みなさんにとって今年はどんな年でしたか。

 私自身は12月18日に69歳になりましたが、年齢と向かい合いながら、というよりも年齢に必死にあらがいながら(笑)、頭も体も充実した一年でした。

 いつもの年末年始のようにキャットシッターをしている家内の一番忙しい時期のため主夫をしています。朝昼晩と食事を用意し食器洗いをし、うちの猫たち2匹の世話をし、掃除洗濯をするのがルーティン・ワークです。

 食事の用意と言っても、たいしたものは作れないので簡単なものばかりですが、たまには家内のリクエストを聞いてクックパッドで簡単レシピを探してトライすることがあります。食事で大事にしていることは何でも食べることとバランスです。普段から毎朝グリーン・スムージーを作るのが日課で、緑の野菜の他にトマトや果物など少なくとも6種類をジューサーにかけてジュースを作ります。一人分350mlを二人分とかなりの量です。

 年齢にあらがうには運動も大切で、夏冬関係なくコンスタントに運動しています。毎日30分のストレッチと、ウォーキングか自転車で1時間ほど運動します。加えてゴルフの練習を週2・3回。ただし体を傷めないよう、一回にせいぜい50球―70球くらいしか打ちません。自転車は多摩川沿い、野川沿い、仙川沿いのサイクリングロードが主ですが、そこに行くまでに多摩川・野川・仙川などの河岸段丘を往復で4回は上るので、足腰と心肺機能の強化に役立ちます。そのせいかゴルフやスキーで疲れを感じることはあまりありません。そして秋の健康診断の結果とともに送られてくる「あなたの健康年齢」は実年齢より10歳年下でした。ウレシー!

 頭の体操はこのブログがメインで、同様なことをサイバーサロンに投稿しています。それに加えてこの1年はお伝えしているように、新たな著書の執筆に挑んでいます。それについてはまた書きますね。

 一方世の中に目を移しますと、今年は世界でも日本でも繰り返される大災害の目立つ年でした。そのたびにとても心が痛みました。年末年始にいつも思うのは、天候も相場も年を経るごとに変動が激しくなり、50年に一度の災害は毎月あるものと覚悟する必要がありそうですね。

 「異常気象」が異常でなく当たり前になっているのと同様、ボラティリティの高い相場の変動は異常ではなく、普通のこととして考えましょう。それに加えて昨今は政治も同じで、この1年だけでも大きな人災ともいえる政治災害が起きています。しかも政治災害も年を追うごとに激しさを増しています。

 トランプ災害は毎日なので言うに及ばず(笑)。

 欧州では選挙があるたびに極右といえるようなポピュリスト政党が躍進しています。ドイツではAfD、ドイツのための選択肢で、もちろん反移民が旗印です。同様に大きなポピュリズム運動はイタリアでも起こり、五つ星運動と同盟という極右ポピュリスト政党が連立内閣を作るところまで至りました。同盟は元北部同盟という地域政党でしたが、躍進して全国区となり、単に同盟と名を変えました。その他にもオーストリア、ポーランド、スウェーデンなどでも同様の動きが出ています。もっともポピュリズムは右翼の専売特許ではなく、左翼にもその動きが出ているのが特徴です。

 政治家は災害が起こったら救済や復興を仕事にするはずですが、ポピュリスト政権はむしろ自分たちが災害を起こしているように見えます。トランプの公約と政策の実行ぶりを見るとそれがよくわかります。「自国第一主義と反グローバリズム、反移民」の3点セットが世界ポピュリスト連盟の合言葉で、国際協調体制などはすべてぶち壊す対象にします。お互いに自国第一であれば、協調などあるはずがない。愚かなもの同士が余計な摩擦を起こし、物理的衝突もいとはないというリスクも感じます。こうした嵐はきっと来年も吹きまくるでしょう。

 しかし私は悲観ばかりではないと思っています。その理由はグローバリゼーションの進展です。えっ、と思われる方が多いともいます。反グローバリズムという言葉にはグローバリゼーションが諸悪の根源であるというニュアンスが含まれています。しかしグローバリゼーションはだれかが唱えたグローバリズムでスタートしたのではなく、自然発生的に世界を発展させ、発展の果実が国から個人に及ぶことで人類は豊かに暮らせるようになりました。

 今は反目しあっているアメリカと中国も、実はすでに自分の発展の前提に相手の経済成長が組み込まれているため、表面は反目しあっても第3次大戦に進むことなどありえません。経済のグローバルな結びつきが、平和を保つ礎になっているため、悲観する必要は全くないと言い切れるのです。

 まともな国でポピュリストが長く政権を担当することなどありえません。何故なら彼らは国をぶち壊すことはできても、建設ができないからです。来年の今頃までには何人ものポピュリストの敗戦を見ることができると私は思っています。

 ということでみなさん、来年に向けてもっと楽観して明るい未来を見ようではありませんか。

 ではよいお年を!

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なんで今さら商業捕鯨なのか

2018年12月30日 | ニュース・コメント

  なんで今さら商業捕鯨なのか、非常に疑問を感じ私の意見を書いてみました。実はこの原稿は数日前に書いていて、ブログにはアップせずにと思っていたのですが、同感だ、おもしろいと言ってくださった方がいらしたので、ブログにもアップすることにしました。

 この日本政府の決定に、世界も非難ごうごうです。まず産経ニュースを引用します。

シンガポール=吉村英輝】日本の国際捕鯨委員会(IWC)脱退表明を受け、反捕鯨国オーストラリアのペイン外相とプライス環境相は連名で26日、「非常に失望した」との報道声明を発表した。

 声明は、IWCがクジラ保護における国際協調の「極めて重要な役割を果たしている」と指摘。豪州は「(IWCへの)日本の復帰を要請する」とした。また、日本がIWCにオブザーバー参加することで「捕鯨に関し日本と関わっていく手段を得られるだろう」との認識も示した。

 一方、ニュージーランドのピーターズ副首相兼外相も声明で、IWC脱退をめぐり日本の河野太郎外相と協議したと説明。その上で「捕鯨は時代遅れで不必要な行為だ」と批判し、日本へIWC復帰を求めた。」

  私には日本の一方的IWC脱退は、温室効果ガスの規制で合意したパリ協定から一方的に脱退したトランプ並みの行為に思えます。トランプは世界規模で合意している科学的根拠を、「そんなものはウソだ」と大見えを切りました。世界は今回の脱退をそれと同じような行為とみなしているのです。

  私の最初の反応は、「恥ずかしい!」です。

  科学的根拠に対する様々な議論があることは承知の上ですが、私は日本が世界的な環境保護や種の多様性保護という大きな流れに反する行為と見られるのがとても恥ずかしいのです。

  みなさんもよくご存知のように、日本のイルカ漁は世界が最も野蛮な行為だとみています。なんでイルカを湾内に追い込み、殺して食べる必要があるのか、今回の世界の見方はそれと同列なのです。

  日本の言い分が正しいか正しくないかなどは議論百出だと思います。「欧米人だって牛や豚を殺して食べているではないか」という反論も聞こえます。しかしイルカやクジラの殺戮は彼らのセンスから見ると、野蛮さの象徴なのです。私はそうこまでの感情論ではなく、「捕鯨は時代遅れで不必要な行為だ」というニュージーランド外相の意見と同じです。

  私はあえてクジラを食べにはいきません。クジラは日本の食文化だなどとは絶対に思いません。目の前にマグロとクジラが並んでいたら、マグロを選びます。クジラを食べなくても何の痛痒も感じませんが、マグロが食べられなくなったら嘆きます。

  だからと言って過激な環境保護団体シーシェパードの危険な行為は非難します。その最大の資金源であるアパレルメーカー・パタゴニアの服は買わないという無言の抗議もしています。

  周りがどうあれ自分のエゴを貫く、というのはかわいいトランプちゃんと同レベルの幼稚な行為だと思っています。そのトランプ、クリスマスの子供との電話が全米で非難ごうごうです。7歳の子供に「君は今でもサンタを信じるのか。ギリギリだろう」と言ったのです。子供の夢をぶち壊すという非難です。CNNだったかがその後その子に尋ねたところ、「何を言われているのかわからなかった。いまでもサンタを信じています」とのこと。私がもしその子の親だったら、「こんな大統領のようには、絶対になってはいけない」と言い聞かせるでしょう(キッパリ!)。


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トランプ恐怖支配の終焉

2018年12月26日 | トランプでアメリカは大丈夫か?

  株価の暴落が止まりませんね。それに対して一人ホワイトハウスでクリスマスを迎えたトランプが、絶え間なく吠え続けています。私の「吠えるな、トランプ!」の声は届いていないようです(笑)。自分のいかさまゴルフを棚に上げて、面白いことを言っています。24日クリスマスイブ、ロイターからの引用です。

 「トランプ大統領はツイッターで「米経済にとって唯一の問題はFRBだ。彼らは市場に対する感覚がない」とし、FRBを「腕力はあるが、パットのセンスが欠けていてスコアの上がらないゴルファーのようだ」と批判。貿易戦争や強いドル、壁を巡る政府機関閉鎖について理解していないと指摘した。」

   私からは今度は聞こえるような大声でこう返してあげます。

 「米経済にとって唯一の問題はおまえさん、トランプだ。おまえさんは市場に対する感覚がない。大統領が吠えたからって、株価を上げられるもんか!」

  さらに全ゴルファーのためにもう一言、「ゴルフでいんちきするトランプの言葉などに聞く耳を持つな」です(爆笑)。

   日米ともにあわてる政府関係者や金融系エコノミスト達のコメントはおしなべて、

 「株価は暴落しているが、実体経済の足元は堅調で問題はないため、心配する必要はない」ということを繰り返しています。しかしほんとうにそうでしょうか。私は疑問を感じています。株価は半年・1年先を見て動いているのに、足元の堅調さだけでは説得力に欠けます。

   そもそも実体経済の安定性ということがどこからきているかと言いますと、アメリカで言えば企業収益や消費の堅調さ、賃金の伸びなどですが、それらはトランプの減税と言うドーピングによると部分が大です。これ以上のドーピングは民主党の下院勝利により禁止令が出されました。一方で貿易戦争が中国経済にも影響し、それが世界経済の見通しを悪化させています。さらにアメリカ国内でもトランプに対する離反の動きがハーレーダビッドソンやGMなどのメーカーに拡がっています。

  こうしたことに対して評論家からは様々なコメントがありますが、私は個々の対市場コメントより大事な点を指摘します。それは、

 「恐怖による支配の終焉」です。

   「恐怖」とはニクソンを辞任に追い込んだジャーナリスト、ボブ・ウッドワード氏の著書の英語版タイトルで、トランプのやり口を恐怖による支配であると定義しています。私もその通りだと思います。外交政策はもちろん、国内政治、経済問題から金融市場まで、彼のツイッター攻撃による「恐怖」で震え上がっていたのがこの2年でした。

  しかしみんながそれに反抗し始めたのです。それが先に指摘した「恐怖による支配の終焉」なのです。

   マティス国防長官はトランプをあからさまに批判して自ら辞任。経済原則に則って行動するアメリカメーカーも離反。中国は最初から反抗し続け屈しない。議会も予算を巡り共和党すら離反。FRB議長も決然と対抗し、株式市場もトランプに「NO!」を突き付けました。

  そして日本ではあまり報道されていないのですが、司法においてとても大事な動きがありました。それは最高裁判事の離反です。12月22日のウォールストリート・ジャーナル日本語版から引用します。

「【ワシントン】メキシコ国境からの不法入国者による難民申請を禁止する米大統領令を一時差し止めた地裁の命令について、トランプ政権が差し止め解除を求めていた訴訟で、連邦最高裁判所は21日、政権の訴えを退けた。トランプ大統領の移民政策に対し、司法がまたも待ったを掛けた格好だ。」

   最高裁の判事の構成は少し前に1名のセクハラ疑惑の新判事をトランプが指名し、9人のうち5人を保守派で固めたはずでした。しかし今回の判決ではトランプにノーを突き付けました。FRBに次いでアメリカの司法もトランプ支配から独立し、きちんと機能していることを示しました。

 

  これでアメリカでは司法立法行政もトランプにノーを言える健全なる行動原理を有していることが証明され、私はとても安心しています。どうりでトランプが一人寂しくホワイトハウスで嘆くわけです。

  しかし安心はできません。それは、彼はサイコパスと診断されている人間ですので、ここから本領を発揮するからです。本領とはもちろん破れかぶれの暴走です。それによるトランプリスクは来年も継続します。それでもみんなが反抗するようになれば、彼の暴走に歯止めがかかります。


   年末恒例のユーラシアグループ代表イアン・ブレマー氏の2019年の「世界の地政学上の10大リスク」がどうなるか、今から楽しみにしましょう。18年の見通しで彼はトランプリスクを過小評価というより、リスクからほとんど消してしまったのですが、年央に私はそれをどうも誤りだと指摘しました。世界は今年の後半戦もトランプリスク一色でした。それでも彼の指摘する一つ一つの項目は頭に入れておく価値は十分にあります。


  さて、株式暴落の一方で原油価格と米国債金利の下落が止まりません。米国債投資を考えていたみなさんは、私がブログでお勧めした時期に、しっかりと投資されましたか?私は著書の出版以来はじめて、今年は2回買いシグナルを出しました。

   アメリカ金利が久々に3%を超えたのは今年の4月末、私の著書が出た11年8月以来、約7年ぶりのことでした。そこで私は今年4月24日に最初のお勧め記事を書いています。シリーズ「トランプでアメリカは大丈夫か」の7回目の記事で、サブタイトルは「米国債投資のチャンス到来」でした。10年物国債の金利は5月中旬に3.1%台までいき、いったんピークを迎えて反落し3%を下回りました。

  その後9月下旬にふたたび3%を上回り始め、10月8日に私は「米国債投資のお勧め」というタイトルで単独の記事を書いています。その時の10年物金利は3.23%でした。そして3%台は11月末まで2か月にわたり続きました。

  ところが11月23日にコメント欄で陽子さんの質問に対して、私は以下のように回答しウォーニングを出しました。引用します。

 陽子さんの質問

>アメリカの経済はまだまだ大丈夫!と思っていましたが、ここへ来てなんだか不穏な空気ですね。。。償還まで20年以上の長期債も思いきって前倒しで買っていこうと思います。

私の回答

さまざまな経済指標のなかでも、いわゆる将来を指し示す先行的な指標に陰りが見え始めているので、一方的に成長継続とはいかないと思います。

 ただ日本との決定的違いは、すでに何回も利上げをしているので、いざとなったら何回も利下げで景気を刺激できるところです。

 長期債への投資は最初の一歩は早めに、その後はじっくりと進めてください


  「最初の一歩は早めに、その後はじっくり」というのはもちろん、長期金利が今後低下しそうだという予想をたてて申し上げています。陽子さんは最近のコメント欄で米国債への投資比率が高くなっているとのことですから、大丈夫そうですね。

   では、もし10年物が3%台にあった時点で投資し損ねたという方はどうすべきか。

代替としては短期債への投資もありだと思います。アメリカ債券市場のクリスマス前の終値のイールドは以下のとおりでした。

  10年債;2.75% 5年債;2.58% 2年債;2.57%

   10年物金利は急落し、5年物と2年物は若干低下したうえにほとんど差がありません。これをどう見るかですが、金利の示唆することを素直に述べますと、以下のようになります。

 「短期が高いのはまだ利上げがありそうだということ。中・長期が短期と比べさほど高くないのは、中期的には利上げが停止され、その後も経済成長が鈍化し、物価も雇用も強くなりそうもないことを示唆している」ということです。ですので、中期・長期ものへの投資はペースを緩めるかいったん停止し、長期金利の上昇をもって再開するのがお勧めです。

   もちろん上記は瞬間風速だけを切り取って解説していますので、今後の実体経済の変動や先の見通しによっては変化の可能性があることを頭に留めておいてください。 

 (注)私の言う短期とは2年物、中期は5年物、長期は10年物以上のことです。

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吠えるなトランプ!

2018年12月21日 | トランプでアメリカは大丈夫か?

  きまぐれトランプの政策を普段から批判していたと言われ、「そして誰もいなくなった」劇のいなくなる候補の筆頭だったマティス国防長官が辞任するというニュースが飛び込んできました。マティス氏はトランプに引導を渡される前に、「シリア撤退は国益には反するし、同盟国との関係を悪化させる」とはっきりとした辞任声明を出しました。悪いことは悪いと言う立派な軍人です。

   といっても辞任は大方の予想通りです。報道では全軍の司令官である大統領と国防長官の二人が、数か月も会話をかわすことがほとんどなかったというのですから、異常を通り越してあきれるばかりです。もちろんアメリカの一方的シリア撤退に対する世界の反応は大反発です。特にアメリカと一緒に依然ISと戦っている「有志連合」を組んでいる英仏首脳の反発は強いものがありました。またアメリカ議会でも与党共和党の有力議員が「ここで撤退すべきではない」と強く異を唱えました。そのニュースを時事通信から引用します。

 「トランプ米政権がシリア駐留米軍の撤収を開始したことについて、与党・共和党議員から19日、批判の声が噴出した。ルビオ上院議員は記者団に「シリアからの米軍撤収の決定は大間違いだ」と指摘。「今後数カ月から数年、(中東で)大きな反動が起きるだろう」と警告した。グラム上院議員はツイッターで、シリア撤収について「オバマ前大統領同様の大失敗になる」と批判。オバマ氏が米軍をイラクから撤退させた後に過激派組織「イスラム国」(IS)が台頭したことを念頭に懸念を示した。さらに「(対ISで連携してきたシリアの)クルド人勢力を危険にさらすことになる」と強調した。」

   でも世界には、ただ一人撤退に歓迎の意を表した人がいました。ロシアのプーチンです。衝動的トランプはこれでプーチンの思うつぼにはまり、彼がほくそ笑んでいることまで考えは及んでいません。トランプは兵士をクリスマス前に帰還させたと言いたいだけの衝動的決断を、側近たちの制止もかかわらず実行したのです。ではタイトルの話に移ります。

 

トランプの遠吠え その1

  金融市場では株や原油価格が暴落しています。特に株価で命脈を保つトランプが、暴落をFRBの利上げのせいにするために大声で吠えています。自分で選んだ議長なので思うがままに操れると思いこんでいたのでしょう。FRBのパウエル議長はトランプが吠えれば吠えるほど、「誰がおまえの言うことなんか聞くもんか」という毅然とした態度でのぞんでいるように思えます。FRBの本分は政府から独立した政策を決定することにあるので、いくら吠えても無駄です。私としては、今回の利上げでトランプの犬ではないパウエル氏の本当の姿がわかり、とても安心しました。

  

トランプの遠吠え その2

   トランプは選挙戦で「メキシコ国境に壁を作る。払うのはメキシコだ」と千回くらい叫んでいましたが、全く実現できていません。その後も壁を作るぞと吠え続けましたが、中間選挙の下院での敗北がその公約に予算面でノーを突き付けています。壁建設の予算案を議会が承認しそうもないのです。

  いや、まてよ。メキシコに払わせるのだから、中間選挙の敗北なんか関係ないはずだよね、トランプちゃん。

   そしてまた連邦予算を巡り、このたびはトランプサーカス劇場がオープンしました。「財政の崖歩きショー」が久々に始まったのです。オバマ政権時代の2011年夏ころから共和党のいやがらせで、財政の崖問題が頻繁に起こっていました。しかもその時の論点は国債の利払いができるか否かだったので、私の著書「米国債を買え」がもろに影響を受けました。最終稿を出し終わって旅行に出ていた私をダイヤモンド社はNYでつかまえ、私に「利払いができずにデフォルトしたらどうなるのかを書いてくれ」と依頼してきました。そこでしかたなく、「そんなデフォルトは政治ショーだから大丈夫。ボクシングで言えばスリップダウンだ」と書き送り、それが追加されました。

   今回は内容が異なり、議会は暫定予算を通過させたのですが、その中にメキシコの壁建設に十分な予算が充てられていないことにトランプが怒り、予算書にサインをしないというのです。サインなしだと連邦政府の予算執行に支障が出て、政府機関が閉鎖などに追い込まれます。それを人質にして壁予算を求めているというのが今回のトランプサーカスの演目です。

   政府機関の閉鎖をいとわず「暫定予算を承認しない」と吠えるトランプと反目する議会、どっちが勝つか見ものです。

  

  ではこのところ暴落を続ける株価をどう見るかに移ります。

  私ははっきり言ってここでの株式暴落はむしろアメリカと世界にとっては安心材料だと思っています。世の中のエコノミスト・アナリストのほとんどは投資銀行・証券・銀行系の人たちのため、株価の暴落を大いに嘆いています。でもそれは超近視眼的見方でしかありません。もし世界景気のスローダウン見通しに反して相場が上げ続けたら、将来の暴落の程度がひどくなるだけです。実に健全なるコレクションじゃありませんか。

 

  こうしてこうして政治と金融市場の状況を見ると、11月の中間選挙以降トランプがイライラをつのらせ吠え方が異常になっていることがわかります。この度を超えたイライラの理由は上記に加え、ロシア疑惑で追いつめられた大統領のフラストが頂点に達しつつあるからです。

  来年1月に始まる選挙後の新議会では下院多数派の民主党が圧力を強めるのが必定です。民主党はいよいよ弾劾のための外堀の埋め立て工事を始めると宣言しています。上院では否決されることが分かっていても、下院が弾劾を発議することが民主党にとっては大事なことなのです。要はトランプのレームダック化、ドナルドダック化を狙っているのです。

   トランプは自分の味方であるはずの政府内の枢要ポストのほぼすべての人材が去り、彼らが退任後は自伝で大統領府の混乱とトランプの錯乱ぶりを暴露することに毎日腹を立てています。さらに古くから自分の腹心の部下であったはずの顧問弁護士までが司法取引で裏切り、自分を追い詰めようとしている。こうした事態に夜も寝られない状態となっていて、いつ精神錯乱状態になってもおかしくない状態であると精神分析医らは診断しています。

   しかし彼は精神的にタフなので、精神分析医たちの予見を越えて吠え続けるだろうと私は思っています。

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アメリカの長期展望、力の源泉について

2018年12月14日 | トランプでアメリカは大丈夫か?

   この1・2か月の間に、コメント欄にどなたかから「アメリカは長期的に見て大丈夫か、見解を聞かせて欲しい」との要望がありました。それがいつどなただったかを確認できずにいましたが、とりあえず私の長期展望をお伝えすることにします。

  経済はまずまずでもトランプによる政治的混乱に不安を覚える方も多いと思いますが、何も心配することはありません。端的に言うとトランプの政策は「アメリカ・ファースト」だからです。

  矛盾しているように聞こえるかもしれませんが、アメリカを第一に考えることはアメリカにとって悪いことではありません。ただしトランプのそれは実に近視眼的考えです。でも近視の視野がせいぜい数年であれば、次の大統領はトランプに対する強烈な巻き返しをするでしょうから、大丈夫なのです。減税を中心とした財政上のバラマキも、トランプは下院を失ったためこれ以上の無茶はできません。

 

  では長期展望をした場合はどうでしょう。私はもちろんアメリカは大丈夫だと思っています。いったいアメリカの力の源泉、強さの本当の秘密はどこにあるのでしょうか。私の見方をお知らせします。

  みなさん意外に思われると思いますが、私の考えるアメリカの力の源泉は増加する人口や豊富な資源などの経済指標は単なる付け足しで、実はダイバーシティ、「多様性を飲み込む包容力」だと思っています。

  生物学的にも雑種強勢、純粋種は弱く雑種は強いというのが定説です。アメリカは国の成り立ちからして人種、性別、国籍、宗教などを問わず、世界から人材を集める工夫をしていて、多様性を力の源泉としています。

  スポーツの世界を見ればとてもよくわかります。日本の野球選手で最も素晴らしいと思われる選手はみなアメリカのメジャーリーグに行きます。メジャーリーグの強さはアメリカの選手に加え日本人選手や、日本以外のアジアの一流選手、そして最も大きな供給源である中南米の強豪選手たちを実質的に無制限に飲み込んでいくからです。

  元々のアメリカの選手と言っても、当然様々な人種のルツボでから人種を越えて交じり合った人たちです。日本の相撲や野球のように外人枠と言う名の厳しい制限を設けることは、ムラ社会を象徴する排他主義であって、私には弱さをキープするための制度にしか見えません。

  スポーツだけでなく対局にある学問の世界も同じです。アメリカの大学や研究機関では世界中に門戸を開き、様々な国から研究者やアイデアを集める工夫がなされています。日本人のノーベル賞受賞者の多くがアメリカで学んだり研究したりしています。

  世界をリードする産業分野での強さを象徴するのがシリコンバレーという巨大なハイテク集積地です。カリフォルニア州サノゼ近くのスタンフォード大学を中心に発展を遂げたシリコンバレーは、地域全体が世界一のハイテク集積地であり、IT関連産業の起業装置です。テクノロジーだけでなく、企業に必要な資金を提供するベンチャー・キャピタルが集まるリスクマネーの集積地でもあります。もちろん実際の巨大IT関連企業の本社はシリコンバレーだけでなく、西海岸全体に広がりを見せています。

  そこで働く人間の約半数はアメリカ人ですが、あとの半数は海外から来たIT技術者や学者たちです。一時は中国人が半数近くを占めると言われていましたが、その後はインド人がとって変わりました。日本人はほとんどいません。そうした人種=頭脳の多様性を受け入れることが、最初に述べた「多様性を飲み込む包容力」で、シリコンバレーでも力の源泉となっています。

  では、これまでは成功したアメリカですが、反移民を掲げるトランプが出てきた今後の見通しはどうでしょうか。私は「多様性を飲み込む包容力」さえ保てば世界をリードし続けるとみています。今後の世界の産業変革はほとんどすべてがITの力にかかっています。巨大産業である自動車産業はもとより、すべてのモノつくりのカナメ、新技術、新基盤はIT技術がベースにくると思われます。GAFAと言われるグーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンに代表される大企業も、ITという基盤を利用した新機軸を開発し、世界に冠たる企業に成長しました。そのプラットフォームと呼ばれる基盤を創作し続けるのは、シリコンバレーです。

  私は、例えばアップルが永続する企業であるとは全く思っていません。彼らはPCのシェアーを失った後にiPodという新機軸を打ち出しウォークマンを駆逐しました。しかし本当の強さはiPodというハード機器ではなく、PCとiPodを利用した新たな音楽配信プラットフォームの構築でした。同様にiPhoneもハードではありますが、単なるハードではありません。すでに構築した音楽配信や映画配信を載せ、その上で無限の展開可能性を秘めた様々なアプリをアップルストアからダウンロードさせ利用料をとり続けるという、全く新しい課金システムを持ったプラットフォームなのです。しかしiPhoneがシェアーを失う事態になれば、プラットフォーマーとしてのシェアーも失う可能性は無きにしも非ずです。

  それに対し日本の電子機器メーカーは残念ながらハードという枠からはみ出す発想がなく負け続け、遂に市場から駆逐される寸前まで来てしまっています。なさけないことに、かつて得意だった家電でも掃除機・扇風機・ドライヤーというコモディティ製品まで、ダイソンの新機軸によって駆逐されつつあります。今後IOTという部分でうまくすれば居場所を見つけるかもしれませんが、果たして新機軸を有するプラットフォームを打ち出せるかはかなり疑問です。

  今一つ心配なのは日本の自動車メーカーです。今や輸出産業の中では最重要部門で、唯一競争力を維持している業種です。ところが世界の先端は、いわば箱物でしかない車から脱し、新たなITのプラットフォーム上で動く車を作り上げる段階に差しかかっているように思えます。果たして日本の自動車メーカーが、全く新たなプラットフォームを開発し、その上で動く新しい車社会を構築できるでしょうか。そうした柔軟な発想による技術が、ハードメーカーの純粋培養で育った自動車技術者から出てくるとは思えないのです。

  このことはアメリカのメーカーもドイツのメーカーも同じように直面している問題です。ハードという殻を打ち破る発想を、果たしてどこが一番乗りで創出するか、私にはどうも自動車メーカーではない柔軟な発想を持つ新規参入者が創出しそうに思えるのです。

 

  鎖国時代の日本は、発展から背を向けた世界の果ての後進国でした。それが外に向けて門戸を開放したとたんに、大発展しています。日本人も世界に向かって出て行った時代もありました。しかし現在の日本は国として内向きで、若い人たちも世界に出て行こうとしない閉じこもりのような状態です。

  学卒で直接外資系、それも世界的なIT企業に入ろうとか、若いうちに海外に出ようという学生はほとんどいません。国という単位で見ても、人手不足が続いているのに外国人労働者の流入はかなり制限しています。政府は移民という単語を新政策に盛り込むことはしません。

  最初に申し上げた通り、雑種強勢の世界で純粋種を保つ日本に自分の資産のすべてを置いておく気には全くなれません。アメリカが自身の国の在り方を閉じた国にしてしまわない限り、強さが損なわれることはないと思いますし、そんなことをすることはないでしょう。

 以上、アメリカの長期展望、そして強さの秘密でした。

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