ここまで講演会内容のサマリーを4回に分けてみなさんにご披露しました。今回は講演会に先立ちいただいていた質問、当日の質問を織り交ぜて、およその質疑応答の模様を再現してみたいと思います。
実際の講演会に参加された参加者の方のおよその年齢構成は以下のとおりです。
70歳以上 :30人
60歳代 :17人
50歳代 :8人
30-40歳代:4人
リタイア組、セミリタイア組の方が8割を占めています。私の話もこうした世代構成比に合わせています。
当日の私の話の内容は講演会の概要をなぞるものではなく、私自身の生き方をサンプルにしながら、いかに「ストレスフリーの生き方」が大事かをテーマに約1時間話をさせていただきました。それをまずかいつまんで紹介させていただきます。
ブログや著書では小難しい経済や金融の話が大半です、しかし時折お遊びの話を織り交ぜています。実は私の生き方は決して経済・金融ヲタクがすべての大真面目なものではなく、実に単純明快!
〇 一言で申し上げれば、「超楽観主義で、人生はエンジョイするもの」
スキー・ゴルフ・旅行・アートなどを徹底して楽しんでいる
〇 そのため「ストレスの大きな資産運用などするべきではない」
〇 リタイアしたら「資産は増やそうなどとせず、使い切るべき」
取らぬ狸の皮算用から開始するのではなく、まずは少しで合っても「蓄えをいつから使い始めいつ使い尽くすか」の目標を定めること。
〇 「自分で稼いだオカネを自分で使ってこそ人生をエンジョイできる」
ほとんどの方は増やすことに頭がいってしまい、使ってエンジョイすることに気が回っていない。使わずに死んでどうする!
リタイアすることの楽しさを味わうには、資産運用はストレスフリーの資産運用に限る。オカネはたくさんあるにこしたことはない。なければないなりに背伸びをせずに、楽しめばいい。
ストレスフルな投資から私の唱える「ストレスフリーの資産運用」を実行された方の例を、参加されている方1名様の例を含め紹介。
例1. 参加された高齢の方
2010年夏ころに私がこの方にアドバイスを開始。それまでの株式投資、ハイイールド債投資信託などリスクの超高い資産はすべて売却し、長期の米国債をメインに、スーパーソブリン発行の豪ドル債に投資。元本は遺産にするつもりで、ご本人は元本を減らさずに金利収入を楽しむよう設計。当時は米国債や豪ドル債で5%を超えるクーポンがついていたため、毎年楽しみにされている海外旅行は金利収入だけで十分に賄え、ほかにも趣味の費用に充当。数十年来の株式投資のストレスとわずらわしさからすべて解放され、余生をエンジョイされている。
例2.学校時代の友人
退職金で主に株式での運用を開始したものの、3割程度を失っていた。10年の秋ころそれらをすべて売却し、米国債、豪ドル債、米国REITに投資。ご本人だけでなく同じ様に運用されていたお母様、お姉さまもすべて彼に習い超安全な資産運用に切り替えた。その結果これまでの損失を回復したばかりでなく、今は金利・配当収入をエンジョイされている。資産運用による損失でウツ状態になりそうだった近親者のお二人もすっかり回復し、人生を楽しまれている。
例3.なんだかんださんを始め私のブログに漂着し(笑)、投資のトラウマから覚め、人生の考え方を大きく変えることができた方の例
それに対する講演参加者の感想は「もっと早くそうした考えを学んでおけば、投資で損を出さずに済んだ」というものでした。実際には参加者のほとんどの方は私がサイバーサロンに投稿を始め、「米国債を買いなさい」と説き始めた10年夏ころにはそれを読んで知っていました。
話を終えて質疑応答に移りましたが、予定の30分を超えて45分ほど熱心な質疑応答が行われました。まず参加された皆様に対し、私から何点か質問をさせていただきましたが、特筆すべきものは、
1.私が4年半前にお薦めした米国債などへ実際に投資された方;わずか6名
比率はたったの10%でしたが、これは予想の範囲。
2.アベノミクスが成功すると考えている方;なんとゼロ
これは予想外の少なさです。
ほとんどのみなさんが普段から私の投稿の熱心な読者の方々のため、アベノミクスに懐疑的になった可能性は大いにありますが、友人の薦めで当日急きょ参加された方も何名がいらして、その方々も同様にアベノミクスには懐疑的でした。
あらかじめいただいていた質問を含め主な質疑応答を以下に記します。
Q;財政バブル崩壊の前兆としてのシグナルは何になると思われますか。日本国債のCDSあるいは国債入札の不調になってくるのでしょうか?
A;入札の不調については日銀の買いが継続しているため、可能性は薄い。日銀は入札価格よりちょっと上の価格を常に提示して、入札者が必ず儲かる仕組みをつくっているため不調は回避される。 CDSは大いにありえる。それと同時並行で格付け会社のダウングレードや国際的な銀行監督機関による自国債のリスク認定があり得る。他にもきっかけになりうる事象はたくさんる。例えばヘッジファンドの大量売り、経常赤字と円安の昂進=インフレ昂進による金利高騰、日銀の出口戦略実施、財政再建プランがダメと認識された時、株価暴落、東日本大震災を超える天変地異など。 しかし私が本当にこれがきっかけになる可能性があると思うのは「アベノミクスが成功したと思われる時」です。逆説的ですが日本のバブル崩壊、アメリカのITバブルやサブプライム崩壊を思い起こせばわかるように、『これでもう大丈夫、新しいパラダイムに移行したのだ』と慢心した瞬間から大崩壊は始まるのです。
A;有り金全部です。私はいつも極端なことをお薦めしています。それは金融資産のうち「当座必要な資金を除く全部をドルにしなさい」という考えです。何故ならいくら大胆にドルにシフトしろと言っても、みなさんが言うことを聞かないからです(笑)。円が対ドルで本格的に下落を始めると、非常に短時間で暴落局面となってしまう可能性が高いため、徐々にドルシフトというわけにはいかなくなる可能性が強いと思います。例えば石油価格の暴落に苦しむロシアのルーブルは昨年4月に1ドル35ルーブル程度でした。長く30台を続けた後10月中旬に40ルーブルになって上昇しはじめたかと思いきや、約2カ月後は68ルーブルと半分に暴落しています。
A;私は中小企業のコンサルタントをしていて「企業の資産防衛」に関して数多くのアドバイスをしてきました。日本経営合理化協会からそれに関するCDが発売されています。企業は個人と違い相手があります。例えばドルへのシフトは銀行などから為替の投機と誤認されてしまうため、防衛だと言っても銀行は聞く耳持たずのケースが多いと思います。それでも自由になる資金があれば、かなりの割合を米国債購入に充てることをお薦めします。借金をしてのドルへの投資は避けるべきですし、その名目では銀行は貸してくれません。 |
Q;物価上昇はスローダウンし、ほとんどゼロになっています。林さんも2%のインフレには疑問を呈されています。しかし一方でハイパーインフレの可能性を示唆されていますが、その両者の関係がよくわかりません。
A;日銀の政策が思惑通りワークしないでオカネはブタ積みになっており、物価上昇率は今後もゼロ近辺だろうと申し上げています。一方将来起こりうるハイパーインフレは、日銀が信頼を失った結果起こる全く別の事象です。2%のインフレの延長線上の話ではありません。
Q;ドル円レートの見通しは
A;私には為替を的確に見通す力はありません。ただ日本が貿易収支で黒字を作り出す力が弱っていることと、みなさんが円のリスクに次第に目覚めていくため、円高に大きく振れることはほぼないとみています。それに日本政府・日銀も円安をひたすら念じています。将来、政府日銀が信認を失えば大幅な円安に振れることがあるとみています。
Q;米ドルの優位性は良く理解できます。外貨運用として豪ドル、スイスフラン、カナダドルの展望はどのようにお考えでしょうか。
A;4年前に資産運用についてシリーズで書いた時から、豪ドルはお薦めしていました。しかし2年前から新規の豪ドルへの投資はストップ、すでに投資済みの豪ドルは継続すべしとしています。理由は中国のスローダウンを主な要因とする資源価格の低下です。カナダドルは米ドルの子供ですので、あまり分散の意味がありません。スイスフランは悪くないのですが、4年前の時点ですでに超低金利だったことと、投資対象がなく流動性にも欠けるのでお薦めする対象ではないという意見でした。今も同様で、マイナス金利のためおすすめしません。
Q;林さんが、いま日銀総裁に就任したとしたら直ちにどのような施策を行いますか。勿論、日本銀行が政治からの独立性を維持したとして。
A;日本国債を爆食する前ならまだしも、あんなに国債を抱えてしまった銀行の総裁就任は拒否します(笑)。黒田氏の就任タイミングであれば、白川氏の政策の継続程度で、安倍政権のやり方には徹底抗戦し、財政の立て直しを主張します。いまのタイミングで私が就任し「国債の爆食を停止する」と言えば、金利上昇で日本は即死でしょう。もう手の付けようがありませんので、やはり辞退ですね。
Q;では一体、日本はどうすべきなのでしょう?
A;以前ドイツと日本をアリとキリギリスにたとえました。あとしばらくでギリシャの件が決着すると思いますが、あの国は「ギリギリス」として騒いでいますが、しょせんアリンコのドイツの軍門に下るでしょう。日本もアリンコになる道を選択すべきです。そしてアリンコとして今後は真の「解放経済、規制緩和、国際化」の道を歩むのです。これは中国ではなく日本がどうすべきかの話ですよ、念のため(爆)。人口の減少していく国内だけを相手にしていてはいけない。TPPで政府が言う「国益」とは「業界益」であって、決して国民の益ではありません。
質疑応答の概要は以上です。
1時間45分の講演を終えて、ブッフェスタイルの懇親会に移りました。1時間半ほどの懇親会間、私は多くの参加者の方から個別に様々な質問やコメントを受けてお話ををしました。ほとんどの方が資産運用の講演会で「オカネは使うもんだ」と言われたのは初めてで、とても晴れ晴れとした顔をされて「これからは人生をエンジョイすることにしました」と語っていらっしゃいました。
以上です