ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(債券投資の専門家)

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フィクストインカム投資入門 その3.債券の年限、金利、価格⑧

2011年05月07日 | 資産運用 

 今回からちょっと長くなりますが、債券投資をする場合の重要なポイント、何年物に投資すべきかについて、お話をしていきます。

 何回か前に、たとえ5年の投資でも償還までの期間の長い債券を買う方が、リターンが高い可能性があるというお話しをしました。その理由の説明を数値でみなさんにお示ししますので、実際に投資する際のよいヒントになると思います。

このお話、実は私の友人のSYさんからの質問があったので、それに回答をする形をとることにします。

SYさんの質問その1
Q;米国債の金利は直近(11年5月6日)で、10年物が3.15%、30年物が4.29%ですね。 この二つの償還期限と金利が違う国債の関係はどうなっているのでしょうか? そもそも、なんで金利に、それだけの差があるのですか?

「金利は投資に対するリターン」であると以前説明しました。リターンを得るための投資にはリスクが付き物です。リスクは時間の経過とともに大きくなります。1年後と10年後では、どちらが見通しが立てやすいか?あきらかに1年後です。明日であれば、もっと見通しが立ちます。言い換えれば、明日までに日本がひっくり返るような事が起こる確率はほとんどありませんが、30年後までにそのようなことが起こる確率は結構あるかもしれません。そのリスクの差が金利の差になります。
 リスクには世の中に大きな変化が起こるリスク(マーケットリスク)と、債券の発行体に倒産など大きな変化が起こる可能性(発行体リスク)の二つがあります。そして発行体が同じでも、発行される債券の年限が長くなればリスクが高まるので、それをマーケットは金利差で表現しているのです。米国債でも日本国債でも、投資家は短期を長期より安全と判断しているのです。

 至近時点の日米の国債金利(%)で見てみると、年限別に以下のようになります。これはブルームバーグ社の以下のサイトへ行くと見ることができます。
URL;http://www.bloomberg.com/markets/rates-bonds/government-bonds/us/
このサイトで、Market DataからRates & Bondsに行って下さい。

     1年  10年  20年  30年
日本   0.16   1.15   1.97 2.08    
米国    0.16  3.15   3.72 4.29

 この両者の1年物金利と、30年物金利の倍率は、単純な割算(30年÷1年)計算ですが、日本が13倍、米国が27倍と、かなり大きな差があります。この差は一定ではなく、先の見通しにより毎日のように変動します。
こうした短期が長期より低い、順当な状態を「順イールド」の状態ということをすでに説明しました。イールドとは一時点での金利のことです。どの時点でも翌日物の金利もあり、10年物の金利も20年物の金利もありますので、まとめてその時点での金利群をイールド・カーブと呼びます。1年ごとに点でプロットしてゆくと、短期金利は低く、1年ごとに徐々に高くなるカーブを描くからです。

では、イールド・カーブは常に順イールドの状態にあるかというと、そうでもありません。日本のバブルがはじけた後の90年代前半に金融を引締めた時には、日銀が短期金利を政策的に上げたため、短期金利が長期金利を上回る「逆イールド」の状態になりました。そうした状況は長くはつづきませんが、あることはあるのです。

次回は次の質問に移ります。
SYさんの質問その2
Q;仮に金利に全く変動がなかったとした場合、30年物を10年後に売却・ 換金する場合の損得はどうなるのか。20年後ではどうか。
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