ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(債券投資の専門家)

新刊「投資は米国債が一番」幻冬舎刊
「証券会社が売りたがらない米国債を買え」ダイヤモンド社刊
電子版も販売中

フィクストインカム投資入門 その3.債券の年限、金利、価格 ⑫

2011年05月11日 | 資産運用 
 前回は、30年債を20年目に売却する場合、もし投資開始時期と20年目でイールドカーブ(年限別金利)に変化がないとすると、金利とキャピタルゲインの単純合計は108.5%にもなっているという計算を示しました。

「だったら、20年後の売却が有利か?」
という質問が次に出てきそうです。

 もちろん、20年目の売却で利益は十分に出ますので、それを確定するのも手ですが、投資期間が30年の想定でしたから、あとの10年をどうするか、という問題が残ります。その時点で10年債に乗り換えて、それまでのキャピタルゲインだけは確保するという手もあります。

 しかしこの計算結果は、想定が10年後も20年後も、10年物・20年物・30年物のイールドが変化なしとの「ありえない」想定をしていたからその結果になったのです。例えばこれが30年物の日本国債だとして、日本の財政状況が悪化の一途をたどる場合、10年後に20年物金利が10%になっていたら、100の価格は48.5に暴落しています。そして20年後は価格がもう付かないほど市況は悪化しているかもしれません。米国債の長期金利が80年代前半の5年間に渡り10%を超え続けていた事実もあります。我々団塊の世代が貯蓄を取り崩す過程で、このような事態が起こらないとは限りません。

 その場合は、年限の長い債券の下落率は、年限の短い債券の下落率よりはるかに大きくなります。年限が長く金利の有利な債券が有利なのは、金利が変わらないか、低下する場合で、金利が上昇すると悲惨な目に遭うことになります。

 ただし、繰り返しますが、満期まで保有すれば、毎日変動する市場価格は無関係です。つまり債券は購入価格の如何にかかわらず100で償還されますので、投資に対する最終リターン利率は購入時点で確定しています。これがフィクストインカムの語源です。

 SYさんの質問をお借りして、債券の計算と投資のリスクを、復習を兼ねて解説してみました。簡単なようで複雑な債券の世界を少しでも理解していただきたいとの一心から長い回答になってしまいましたが、ご理解いただけましたでしょうか。

「もー、頭がはちきれたよ!」(笑)

そーですよね、ごめんなさい。金利と元本の二つしかない債券なのに、計算はとてつもなく複雑ですよね。それは、債券にあらかじめ付いているクーポンという確定利札と、世の中の変動する金利が入り乱れ、イールド・カーブがどうした、などとすったもんだするからです。

じゃ、まとめます・・・これだけ覚えればOK

・ 債券は買った瞬間に最終利回りが確定する(為替変動は別です)
・ 長期金利は短期金利より、リスクが大きい分高い
・ 途中売却は可能で、売却価格はその時の金利環境で左右される
・ にもかかわらず、最後まで持ちきれば、当初の最終利回りは変化しない


だからフィクストインカムと呼ばれる

債券の年限、金利と価格のお話は、ここで一応打ち切りです。
わからない点があったら、遠慮なくご質問をコメントの形で付けてください。

えっ、「ぜんぜんわかんない!」

うーん、これ以上はないというほど易しく解説したつもりなんですが・・・

つづく
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする