ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(債券投資の専門家)

新刊「投資は米国債が一番」幻冬舎刊
「証券会社が売りたがらない米国債を買え」ダイヤモンド社刊
電子版も販売中

買ってはいけない、投資商品  その2

2011年05月21日 | 資産運用 
その2 他社株転換社債、EB

 前の例は、内容を理解するのに苦心惨憺するような商品、ハイイールド債の通貨選択型などを、高齢者に売るのはけしからん、というお話を書きました。それでも経済的に余裕があり、手数料がとんでもなく高いことを知りながら、あえてジャンクのリスクを取って勝負をする若い方を止めるまではしません。
 しかし、私がこれだけは絶対に許せない、と思った最悪商品をもう一つ紹介します。実際に老若男女が大量に騙された大ヒット商品、他社株転換社債(EB債、Exchangeable Bond)です。

内容例
一口;10,000円
発行体;ソブリンより格の高い国際機関(発行体AAA格)
期間;2年
金利;年2%
償還条件;現在2,700円のソニーの株価が、2年後に2,500円を上回っていたら、現金10,000円をそのまま償還。もし下回っていたら、ソニーの現物株式で2,500円に対して1万円分相当の4株を償還。(4株は固定され、たとえ半値になっていても、4株だけの償還です)

この商品の特徴は、一見するとみかけは素晴らしいのです。
1. 発行体のリスクは日本国より安全な国際機関
2. 転換される株式は、日本を代表するソニー
3. 金利は年に2%と、大手銀行の2年もの定期預金の30倍と有利


みなさん、投資しませんか?
絶対にしちゃだめですよ。

 これをボンド(債券)と呼ぶこと自体、詐称です。買った人は株の値下がりリスクはゼロになるまですべて取らされ、値上がりは株価が倍になっても、決まった金利の2%のリターンしか得られない、片務もはなはだしい商品です。

 実際にこの商品は2000年前後からこの程度の利回り条件でたぶん数千億円、あるいは兆円単位で発行されました。仕組んだのは最大手から、中小証券まで数知れません。2001年当時、私の知合いの会社経営者(かなりの資産家です)から、「今度これを買おうと思っているんだけど、どうかね」とパンフレットを片手に相談を受けました。私はただちに却下。儲けが最大2%で、損失は計り知れず、ソニーが倒産すれば最悪ゼロ。たった2%の金利でこんなひどいリスクを取るなど正気の沙汰ではないとアドバイスしました。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする