ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(債券投資の専門家)

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フィクストインカム投資入門 その3.債券の年限、金利、価格 ⑩ 

2011年05月09日 | 資産運用 
前回の最後は、20年の投資期間で投資するのに、
①価格100で3%のクーポンを持つ20年物の新発債と
②価格115で4%のクーポンを持つ30年物で残存20年の既発債は
等価だ。


というところまででした。しかし、

「えっ、でも価格の上乗せ分15を20年で割り算したら、
15 ÷ 20 = 0.75
で、毎年のクーポン金利差の1%じゃないんじゃないの?」
という声が聞こえます。

そうなんです。それが1であれば、債券価格の計算は簡単で、数式でみなさんに示せるのですが、実際には1でなく、0.75なんです。

何故か?
この説明が実はフィクストインカムのなんですが、ちょっと難しいのを我慢して読んでみてください。

今から20年先までの毎年の1のリターン差は保証はされているものの、その1の評価は先に行けばいくほど低くなるのです。今手元にある1は1と評価できます。来年の1の今現在の評価はイールドの3%で割り引いて評価するのが妥当だ、ということになっているのです。3%で割り引くということは、1.03で割るということですので、

1 ÷ 1.03 = 0.97087・・・

2年目の1の評価はどうか?
1.03で、2回割り引きます

1 ÷ (1.03X1.03) = 0.94259・・・

以下同様にこの割引を20回繰り返すと、将来の1はどんどん評価は少なくなり、その割引結果の平均が0.75に近くなるのです。
ということは、20年目の1の現時点での評価は、約0.5ほどにしかならないということです。なぜなら、下の略式計算を見てください。1と0,5の平均を計算します。

( 1 + 0.5 ) ÷ 2 = 0.75
だからです。

「じゃ、割り引く、ってなんだ?」

手形割引と同じ原理です。
1ヵ月後に10,000円を返すという約束手形を持って銀行に行きすぐに現金をもらうと、
1か月分の金利を割り引いて、例えば9,900円しか返ってきません。
銀行は1ヶ月分のリスクを100円で取ったので、持ってきた人には割引価格でしか現金化しないのです。
この将来の金利、つまりキャッシュフロー、を割り引いて、現在の価値を推定する方式を、割引現在価値、もしくは英語でDCF、ディスカウント・キャッシュ・フロー方式(正確にはDiscounted Cash Flow)と言います。是非言葉だけでも覚えておいてください。これも試験に必ず出ます(笑)

「じゃ、最初に30年債を100で買ったものが、10年後に115という価格になったのを出すのに、あの面倒な計算を20回やったの?」

いえ、私はやっていません。イールド計算機があれば、答~えイッパツ、です。
でも、カシオミニではありません(笑)
ヒューレット・パッカードが2・30年も前から売り続けている超ロングセラー、HP17という手のひらサイズの金融計算機を使いました。それを買わずとも、例のフィデリティのインターネット・サイトで計算を行うことができます。債券計算の日本語サイトがなく、HP17に代わる日本の計算機がないという事実は、日本では債券投資をないがしろにしていることの証左なのでしょう。嘆かわしい事態です。

かなり面倒なことになってきましたよね。でも大丈夫です。ぼんやりとだけわかっていただければいいのです。

じゃ、何故こんな面倒なことをお伝えしているかと言いますと、実際に投資する場合、投資対象の債券の年限をどう決断すべきか、その原理をお伝えするためです。もうしばらくの我慢を(笑)
コメント
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