ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(債券投資の専門家)

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フィクストインカム投資入門 その3.債券の年限、金利、価格⑧

2011年05月08日 | 資産運用 
長期債券を途中で売却するとどなるか?
SYさんの次の質問に答えていきます。

SYさんの質問その2
Q;仮に金利に全く変動がなかったとした場合、30年物を10年後に売却・ 換金する場合の損得はどうなるのか。20年後ではどうか。


A;話を単純にするため、ここでは現在の金利を以下と想定して計算します。
10年;2%
20年;3%
30年;4%

まず30年物の債券を、現時点で100で購入して投資をスタートします。
10年後のイールド・カーブ(年限別金利の状況)が現時点と同じレベルだとすると、その債券は購入してから10年間毎年4%の金利を生み、なおもあと20年間同じ金利を生みます。
そして10年後、その時点での20年のイールドは3%で、現時点と変化がないと仮定されているので、その時点で新たに発行される20年物の新発債のクーポンは3%で発行されます。手元にある既発債、残存20年の30年債は、新発債より1%有利なクーポンを持つので、売却すれば購入価格の100を上回っているはずです。どれほど上回るかと言えば、それを買うと新発債の20年債と同等の最終リターンになる価格まで価格が上昇するのです。最終リターンとは20年後を指して、それまでの20年間の合計リターンのことです。国債を買う投資家は合理性に基づき、新発債を買うか既発債を買うか、価格しだいでどちらでも買えますので、割高なものは買わないし、割安なものを買います。従って同じ年限であれば最終リターンは一つに収斂していくのです。
そこで4%のクーポンを持つ残存20年の債券の価格を計算すると10年前に100で購入したものが、約115になっています。

価格100で3%のクーポンを持つ20年物の新発債と
価格115で4%のクーポンを持つ30年物で残存20年の既発債は等価だ。


つまりそのあとの20年間では同じ最終リターンをもたらす、ということです。

何故か、理由を説明します。
新発債のリターンが年率3%であることはあきらかですが、それは100で買ったものが、20年後に同じ100で償還を迎え、その間毎年3%づつもらえるからです。つまり元本についてはキャピタルゲインも、キャピタルロスもありません。
一方、その時点で既発債を115で買うと、償還時には元本が100に減ります。この15のキャピタルロス(元本の減価)が、クーポンの1%の上乗せ分を相殺してしまうので、結果として両者のリターンは年率3%で同じになるのです。

ここのところ、後でテストに出ますよ!
しっかりと頭にいれてくださいね(笑)
コメント
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