ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(債券投資の専門家)

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買ってはいけない、投資商品  その3

2011年05月25日 | 資産運用 
 しつこく書きます。最近のヘッジファンドブームへの警鐘です。まとめて数十人が引っかかった実話です。投資総額は数十億円です。
 相場が上がろうが下がろうが儲けを出すヘッジファンドはかなり魅力的です。私はその魅力は否定しないし、私のいた時代の投資銀行ソロモン・ブラザーズの儲け頭が自社内ヘッジファンド部隊で、私自身がその恩恵をうけたのも事実です。今後もヘッジファンドは力を持ち、投資対象として注目を集め続け、大きく勝つところも出続けるでしょう。問題は規制に引っかからない詐欺的ファンドの横行です。

 私に相談された60歳くらいの方が引っかかりました。損失額数千万円、きっかけは投資セミナーです。そのセミナー主催者は現在も本屋に行けばいくらでも著書を見つけられるような資産運用本の著名人で「日本の破綻と海外投資のすすめ」をテーマに毎回数百人も集めてセミナーをしています。その一派にひっかかったのです。
その一派のセミナーはマルチ商法のたぐいと同様に熱気に溢れ、「日本国債の破綻は近い、いますぐこのヘッジファンドに申込め、締め切り間近」ということで投資家の不安心理につけ込みます。年間数十万円もかかるアドバイス費用を取ります。フィーが高ければ高いほど、信用してしまうというお金持ちの心理を匠に突いています。申し込み後はホンコンのプライベートバンクに行って口座を作ったり、タックスヘブンのカリブの国に旅行に出かけたりとか、いかにもお金持ちの方が喜びそうな仕掛けを見せます。そして英領マン島に支店のある、世界的に有名な銀行の口座に現金を送金します。信用しない人を信用させるために、最初は驚くほどの配当を毎月送金しますので、それに釣られて投資金額を大きく増やすのです。その後配当が滞りがちになり、遂には破綻したとの連絡で終わるという典型的詐欺のパターンです。その方の例ではその後何の音沙汰もなく、ほとんどすべてを失ったのです。
日本にいる一派は、「自分たちはヘッジファンドを紹介しただけで結果は知らん」とのこと。数十人の日本人投資家は対抗するすべもなく、被害者の会を組織しましたが、海外ケースを扱う弁護士費用は莫大で、それに耐えられず大半の方が落伍したそうです。最後まで戦った方もいらして、残余財産の分配額は投資額のわずか2%程度でした。ファンドの破綻管財人から送られて来た最終分配額の記されたレターのコピーを見ましたが、その間一体お金はどう使われたのか説明は全くありません。私の勝手な想像では、すべての関係者は裏で通じ合っていて、投資なんか鼻からせずに懐に入れていると思われます。
 何故こんなことになったかといえば、相手を信用し過ぎたからです。海外への送金はとても危険です。持ち逃げの危険を防ぐことはほとんど困難です。それを薦める方にたとえ著書があったり、マスコミに出ているような投資アドバイザーでも、それだけで信用するのはご法度です。
 先日私が聞いた別件でも、投資の世界では名もない人が、いわゆる自費出版で著書を作り、それをダシに人を集め金集めをし、驚くほどの手数料を稼ぐことが横行しているとのこと。
 その反面、日本の証券会社や信用のおけるプライベートバンクを通じて行うヘッジファンド投資は、手数料は高いですが信用はできます。その意味では、証券会社や銀行に大いに存在価値はありますが、その信用と儲かるか否かは全く別問題であることをお忘れなく。ヘッジファンドは様々な対象に投資しますが、必ずしも対象が十分な流動性を持っているとは限りません。例えば、ヘッジファンドではありませんが、エジプトのムバラク政権が転覆した11年1月には、日本の大手証券のエジプトに投資している新興国ファンドは、顧客の解約すら停止しました。つまり売りたいと思っても、損失覚悟で売ることすらできない、流動性の枯渇という最悪の事態に追い込まれたのです。大手証券だからと言って、投資対象が流動性に欠けていれば、逃げ出すこともできなくなるのです。海外に投資するということは、そうしたリスクを覚悟してください。

 海外投資の対象で、流動性を絶対に失わないのはただ一つ、米国債だけです。

まとめ
ちょっと待った、その振込み(笑)


警鐘;知合いの元プライベート・バンカーの独白
いまの世の中にハイリスク・ハイリターンなんていう商品はほとんどないよ。よくてハイリスク・ノーリターン、悪けりゃハイリスク・マイナスリターンさ。ほんとに儲かる商品なら、誰が他人になんか売るもんか!

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