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いったいどうなってるんだ、日本のスポーツ界

2018年08月04日 | エッセイ

  どう見たってヤクザにしか見えないオッサンだと思っていましたが、見事にヤクザとの接点があり、しかも本人もそれを認めたという報道がありました。あの眼鏡、たかがホテルの出入りに組の者と見まがうような人数を並べて入るさま、インタビューでの恫喝的言葉遣い、どれをとってもホンマモンです(笑)。パワハラの極致を示すには極道を匂わすのが最も効果的なためでしょうか。ニュースのインタビューで現役のボクシング審判員が「どちらを勝たせるか、わかっているだろうな」と暗に強要された。そして、「仲間の審判へのあからさまな恫喝を見て恐ろしさを感じた」と証言していました。

 

  このところの日本のスポーツ界のひどさはいったいどうしたのでしょうか。昨年末から今年初めにかけての相撲界、女子レスリングの栄監督、日大アメフト部の内田監督、そして今回の日本ボクシング連盟山根会長と、スポーツ界は不祥事のデパートです(笑)。原因は何なのかを考えると、何とはなしに日本スポーツ界共通の何かが存在しているような気がします。それはもしかすると日本の風土や日本人の古くからの気質に根差すものかもしれません。しかしそれだけに原因を求めたくはありませんし、それでは解決策を提示できません。何故なら同じスポーツ界でも運営が実にうまくいっているJリーグのような団体とそうでない団体があるからです。2年後にオリンピックを控えている日本ですから、不祥事にかかわっている暇はありません。スポーツ界は早めにウミは出し切る必要があると思います。

 

  日本スポーツ界の混乱の大もとは、組織のありかたにあると私は考えています。日本政府の混とんとした運営を批判するとき、私はいつもガバナンスのなさが原因だとして、「ガバナンスのないガバメントなどまるでジョークだ」と申し上げてきました。これこそが不祥事続きのスポーツ界の根本にもある問題点だと思っています。

 

  ガバナンスとは何か?

 

  Wikipediaによれば、として引用するのが一番簡単なのですが、見てみたところ引用に値しませんでした。ちなみに書いてあるのは、

 

統治のあらゆるプロセスをいう。政府企業などの組織のほか、領土ITシステム権力などにも用いられる広い概念である[1]。ガバナンスにおいては、関係者がその相互作用意思決定により、社会規範や制度を形成し、強化し、あるいは再構成していく[2]。」

 

  これでは何が何だかわかりません。そこでちょっと難しい文章が並びますが、なるべくやさしく私なりの解説を試みます。

 

  最近コーポレート・ガバナンスという言葉をよく耳にするようになりました。企業不祥事が多いためでしょうか。「あの企業のガバナンスはなっていない」などと使われます。コーポレート・ガバナンスとは、端的には企業統治ですが、企業の様々な意思決定や合意形成に、多くの利害関係者が主体的にかかわることで、しっかりとした統治を行うことです。利害関係者には経営者・従業員だけでなく、株主、取引先などまで含まれています。

 

  日本ではつい20年くらい前まで、取締役=業務執行責任者でした。グローバル・スタンダードを意識するようになった現在は違います。大企業では業務の執行責任者は取締役ではなく執行役員が担い、その経営執行ぶりをチェクするのが株主から委嘱された取締役だと再定義されました。取締役がやっと本来の取り締まりを行う役割を果たすようになり、遅ればせながらグローバル・スタンダードに近づいたのです。

  そうなる以前は取締役が会社の業務を執行し、それを取り締まる役目をする人は、せいぜいお飾りの監査役くらいでした。しかもその監査役は取締役や部長の上りポストだったので、社長や役員に楯突くことなど絶対にできない情けない存在でした。現在は監査役会を設置するなど、かなり改善されています。

 

  これを現在の日本のスポーツ界に当てはめて考えてみましょう。女子レスリングの栄監督は志学館大学の監督であると同時に、全日本女子レスリングのヘッド・コーチで、オリンピック選手の選考は思うがままにできる立場にいました。そこで自分の子飼いの志学館の現役・卒業生を中心に選考してしまうことができたのです。その絶対的パワーこそがパワハラの源泉となり、伊調薫選手をはじき出すという暴挙もできたのです。

  特定の学校チームのヘッドがそのまま全日本を率いるということは、基本的に統治システムとしては不合格です。自分の息のかかった選手を好きに選べるからで、それを取り締まる機構あるいはシステムが全日本レスリング連盟にはありませんでした。 

 

  日本ボクシング連盟にもけん制機能を有する統治機構は、私が知る限りないようです。この山根という人物、権力を掌握した上に、私がよく独裁者の証拠として挙げる任期の延長についても、終身会長になったという見事な証拠があります。そして副会長は自分の息子というひどさです。独裁者の典型であり、かつ報道のインタビューでもいつもの恫喝的言動がそのまま表れるというひどさを決して許してはいけない。そしてそうならないためには、残念ながら古い日本型統治は機能せず、グローバル・スタンダードを導入し、ガバナンスとともに大事なもう一つの概念である「コンプライアンス」をしっかりと行う必要があります。コンプライアンスとは法令順守、社会規範の順守を指す言葉で、ガバナンスと一対で使われます。

 

  最近は不祥事が起こると第三者委員会が組成され事に当たるようになりました。日大問題での第三者委員会は、見事に機能したと私は思っています。これにより不祥事の対処方法は改善されているのですが、その前に統治構造を改善し、不祥事の発生を防いでおくべきだというのが、私のスポーツ界への提言です。

以上

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