まずは9月4日、コメント欄にいただいた「ぽむ」さんの書き込みをそのまま引用します。
引用
私も50歳を超え、超長期の利付債という選択もあるのだな、と感じましたが、途中売却の際に、どの程度、元本が目減りするのかについて確認したく、SBI証券で試してみたので、皆様とシェアできれば、と思います。
SBI証券
米国債 4.75% 2053年満期(利回り4.05%)
100ドル購入時
単価 111.89
支払経過利息 1.47
購入金額 113.36
100ドル売却時(購入の翌日)
単価 109.02
受取経過利息 1.51
受取金額 110.53
経過利息は、そのまま計算しているようなので、結局、元本は中途売却時には、
109.02 ÷ 111.89 = 約97.4%
となり、約2.6%をスプレッドの差として、証券会社に支払うことになるようです。
なので、中途売却する可能性のある場合は、このことを頭に入れておく必要があると思いました。
日本の証券会社の外債売買の問題点は、購入時には、購入単価しか示されておらず、いくらで売却できるかは、
全くわからない、ということだと思います。
もう日本人は購入できなくなってしまったようですが、IB証券(インタラクティブ・ブローカーズ証券)だと、米国債の購入時にも、外国為替のように、売値と買値が明示されているので、スプレッドの差による手数料も明確でした。
日本の証券会社の場合、正直、売りと買いの単価をどのように決定しているか明示されておらず、全くブラックボックス?になっている気がします。
今回、SBI証券は、約2.6%のスプレッドの差による手数料でしたが、この差を、5%にされても、10%にされても、購入者は何もわからない感じがして、少し怖い感じがしました。
このことに関して、お時間があれば、林先生のコメントをいただければ嬉しいです
よろしくお願いいたします
引用終わり
以下は私からのコメントです。
まずはコメント欄にも書きましたが、ぽむさんの行動に感謝いたします。
>途中売却の際に、どの程度、元本が目減りするのかについて確認したく、SBI証券で試してみたので、皆様とシェアできれば、と思います。
経過利息は、そのまま計算しているようなので、結局、元本は中途売却時には、
109.02 ÷ 111.89 = 約97.4%
となり、約2.6%をスプレッドの差として、証券会社に支払うことになるようです。なので、中途売却する可能性のある場合は、このことを頭に入れておく必要があると思いました。
購入の翌日の売却であれば、市場がよほど動かない限り、価格変動は無視できそうですね。売却に要するスプレッドが2.6%とのこと。
私からの回答はまず、
「2.6%の数値自体は個人投資家の方の少額な取引額では、妥当な水準だと思います。」
実は同様なことを私は義理の弟に依頼して、ある大手証券会社に直接聞いてもらったことがあります。そこでの目安は往復という前提で4%程度と言われたとのこと。売りと買いで半分だとすれば2%ずつです。小さい差はありますが、おおむねこうしたスプレッドを要求しているものと思われます。
実際にはみなさんの投資年限はとても長い年限で、例えば20年物に投資して10年経過したところで部分売却の必要が出た、というようなケースを想定しましょう。すでに金利だけで年に3.5%として10年間で35%を得ている時点での売却だとすると、2.6%はあまり苦にならないパーセントだと思います。
この手数料率の妥当性をどう判断するのかを説明します。
在庫を保有する証券会社にして見れば、
・保有のためのファイナンスコストがかかる(通常は借入金で在庫投資をしますので、その金利がコストになります)
・価格変動に備えるヘッジコストがかかる(債券価格は毎日市場金利で変動しますので、それを先物を売ってヘッジをしています)
特にヘッジするのは簡単ではなく、至難の技です。
理由は、たとえばSBI証券の在庫が30本あり、それぞれ年限、あるいは利付債とゼロクーポン債がミックスしています。それを一本一本ヘッジするのはコストがかかり過ぎてしまうので、ある程度の年限ごとに大きなまとまりとしてヘッジします。
専門用語では、ポートフォリオ全体のデュレーションを計算し、その集合体ともいうべき塊に対するヘッジをするのです。もちろん現在はポートフォリオをインプットすれば、妥当なヘッジ手段はこれだ、という計算をコンピューターがしてくれますが、完ぺきではありません。ヘッジと在庫にはブレが内在してしまうため、かなりの程度のリスクを取ることになります。
こうした2つのコスト、「ファイナンスコストとヘッジコスト」を考えると、スプレッドの2.6%は「妥当過ぎるほど妥当だ」、というのが債券市場のプロとしての私の意見です。
私が扱っていた債券は、社債や政府関係機関が発行する債券で、資本市場部で引き受ける単位は最低でも1億ドル程度でした。今なら円貨で145億円程度です。発行体が発行した債券を引き受けると、瞬間的にヘッジします。例えば1億ドルの債券は機関投資家に1千万ドル単位(10億円単位程度)で売却する必要があり、売却完了までの間価格変動をヘッジして、損失を出さないようにするのです。
1社での引き受けはリスクが大きすぎる場合は、いわゆるシンジケート団を組んで引き受けをします。
それと今回のケースを比較すること自体妥当性は薄いのですが、基本原理は同じです。SBIは100ドル単位で扱っていますので、「まことにご苦労様」という以外ありません。
顧客との取引単位は100ドルでも、在庫は一本の債券でたぶん数十億円単位で保有していると思われます。全体ではそれを数十本保有しているはずです。それらをヘッジなしで裸のまま保有すると、価格変動によりデイリーで数百万円単位の損得が出てしまいます。それは放置できない金額のため、必ずヘッジが必要です。
以上、あまりに専門的過ぎて、理解に苦しむレベルの話になり、申し訳ありません。たとえなんとなくでも、証券会社も保有するだけで大変な苦労とコストがかかるということをみなんさんに理解いただくために解説してみました。
従ってぽむさんのご質問への回答は先のとおり、スプレッドは「妥当過ぎるほど妥当だ」となります。
以上、売買スプレッドとその妥当性についてでした。
私の場合はSMBC日興証券ですが、スプレッドはいつも変動しております。
概ね2%ですが、1%の時もありました。
証券会社の懐事情で変動するのだと勝手に思っておりました。
この為、担当者に単価を確認することを怠らない方が良いと思います。
自身が持っている米国債と同じ年限の在庫がある場合は分かり易いです。
評価残高と在庫の単価のスプレッドが何時も一定でありません。
正に在庫との兼ね合い、売りやすい売りにくい、在庫コストによって単価は変動するのではないでしょうか。
基本、償還されるまで持ち切るつもりで米国国債購入をすすめていますが、換金の必要性が生じたときに、どの位の手数料がかかるのかは、気になるところでありました。ぽむさんや救われた投資家さんのおかげで、具体的な水準が判明し、また林先生から妥当であるというご意見を頂戴し、納得して米国債投資を行えます。
ところで、林先生の先日の「米国債投資をどうすべきか その2」の記事以来、20~30年の超長期の米国国債の投資に踏み出しました。
SBI証券では2043年償還の4.75%の利付債があるのですが、その後4.75%の利付債は2053年償還のものまでありません。
ラダーを組むつもりでいましたが、低い利率のものを入れてラダーを組むより、利率優先で、この2種類に投資するほうがいいかもと思い、この2本を少しづつ購入しています。
ただ子供がおりませんし、同じ利率で利回りも良いので、次第に2043年償還の利付債1種類で、85歳にすべて償還されるというのもありではないかと考えだしました。(年齢的に85歳での償還金は老人ホームへの入居金の一部にあてるつもりです。)
ラダーを組むつもりが、どんどん集約されて、2043年償還の4.75%の利付債1本に気持ちが傾いています。
ただこれはこれで、気づかないうちになにかリスクをとっているのでは?と、いささか不安に思うところがあります。
お忙しいところ大変恐縮ですが、林先生のご意見を伺えませんでしょうか。
明快なご回答、ありがとうございました。
米国債の途中売却の場合、スプレッドの差は、4%程度を見積もっておけば良いのかな?と思い、1年以上の保有でプラスになるので、かなり安心しました。
「ファイナンスコストとヘッジコスト」のご説明、ありがとうございました。
ここまでしていただいて、少額から米国債を購入できるのは、むしろ、証券会社に感謝だな、と感じました。(償還まで保有した場合、片道しかスプレッドを取れないですし。。)
救われた投資家さん
有益な情報、ありがとうございます。
日興SMBCも使っているので、今度、担当者に聞いてみたいと思います。
スプレッドの差1~2%というのは、片道ごとでしょうか?それとも、往復でしょうか?
往復なら、とても魅力的に感じました!
私の米国債投資が好調なので、自惚れたコメントでした。
そのコメントで、ブログを真剣に見ている方に対して誤解を生じさせておりました。
GoldenAgeさんのコメントです。
私の母親の介護施設入所、ラダー式購入、利付債の利率というワードが悪影響を与えたと思いました。
林式投資術である米国債購入は一つの間違いも無いものですが、購入する米国債のどれがベストか人それぞれなのはご著書の通りです。
就労状況、年齢、家族構成、資産内容、健康状態で米国債の償還年をどうするか、ラダー式購入するか否か、ゼロクーポン債と利付債のどちらにするか、利率と利回りのどちらを優先するかを考える必要を学びました。
GoldenAgeさんのコメントの限られた情報でも、資産家であると見受けられ、介護施設入所目的、米国債の流動性を考えると償還年を考慮せず、利率よりも最終利回りのより高いゼロクーポン債であると即答出来ました。
生意気ではありますが、悪影響を与えた罪滅びしにさせて下さい。
購入済みの利付債の利息も米国債に再投資して下さい。利回りはその時点でのものですが、複利に近くなります。
そして、利付債の利息はドル受取りにして、為替手数料を無駄にしないで下さい。
利息のドル受取りは米国債購入後でも変更出来ます。
林先生、大変申し訳ありません。
誤りがあったらご指摘下さい。
> 過去のコメントに対して大変反省しております。... への返信
GoldenAgeです。私の米国債投資にご心配をいただき、ありがとうございます。でも「救われた投資家」さんの悪影響だなんて、とんでもありません。むしろ良きヒントを頂いたと思っております。今、電波状況の悪い場所を旅行中です。詳しくは戻ってから、ご説明させて頂きたいと思っております。
「救われた投資家」さんの、心からの真摯なアドバイスにお礼を申し上げたく、取り急ぎの返信です。
基本的に米国債を対象にした投資行動ですから。
ご安心を。
> 過去のコメントに対して大変反省しております。... への返信
あらためて、私の米国債投資にご心配をいただき、ありがとうございます。繰り返しになりますが、
「救われた投資家」さんの、過去のコメントには、悪影響ではなく、本当に投資の目的や使い方を考える上での良きヒントを頂いたと思っています。
むしろこの短期間で、いつもぐずぐずしている私が米国債投資に踏み切れたのは、林先生のご著書もありますが、「救われた投資家」さんの、実体験のご報告があればこそ!と感謝しています。
ここ何年かで早くも友人知人が鬼籍に入ってしまった事や、母の年齢と老いの進展状況から、寿命は延びているとは言っても、人生を謳歌できる時間は、案外短そうだと感じだしていました。そこで他人様の手を借りたりせずとも、好きな事ができる70代をGoldenAgeにしたい!と強く思っていたのです。(そこに林先生がラジオにご出演!)
ただそれにはいささかインカムが足りません。さりとて元金を減らすのは、人生、まだ何があるかわからないので怖い。そこで利付債でインカムを補填する事を主目的として、米国債投資を始めようとなったのです。
「救われた投資家」さんが、深く様々な事を考えた上で、決断し、投資の仕方を決めていらっしゃるのにたいして、
私は知識があまりないにもかかわらず、とにかく利率が高いうちに早くせねば・・・と前のめりになっていました。それゆえ償還金の使い道、タイミングは、実のところ、当初はあまり深く考えていませんでした。
「救われた投資家」さんの報告を拝見して、償還金はタイミング的に老人ホームの入居に役立つのではないかと思ったのは事実なんですが、だからといって、それは米国債投資の主目的ではなく、従なのです。Golden70.'sの為のインカムの補填が主たる目的ですから、我が家に必要なのは利付債だと思うのです。
またラダー戦略については、「救われた投資家」さんのコメントを拝見する以前にも、米国国債でラダーを組んで自分年金を作ることを勧めている記事を読んだ事があるのです。そちらの記事でも、取り上げられていたのはゼロクーポン債で利付債ではなかったんですが、常々、投資をするなら、分散!と思っていた事もあり、私の頭には時間的分散をはかれるラダー戦略が刷り込まれていました。ですからけっして「救われた投資家」さんの悪影響ではありません。(ですが、ラダーを組みたくなるような高利率の米国債が揃ってなかったので、組むのをやめようと思ったのは、すでに記載した通りです。)
「救われた投資家」さん、悪影響を与えてしまっただなんて思って、コメントを書くのをやめないでくださいね。
「救われた投資家」さんがうまくいったから、全部真似して同じようにしようとは思っていません。
ただ先を歩いていらっしゃる方ならではの経験知をシェアしていただければ、それはとても参考になります。また実際に米国債投資がうまくいって安心安全の領域に入られた方がいらっしゃるというのは、後に続く私のような者にとって、希望であり、安心感の支えです。
心からのアドバイス、嬉しかったです。ありがとうございました。また長文になりましたこと、お許しください。
私は林先生の資産運用相談を受けたことがあります。とても明確で安心して判断することができました。
林先生が仰るように、ブログでは個人の状況が異なり、林先生も判断するのは難しいと思います。
せっかく、個別相談窓口があるので、こちらを利用するのがストレスフリーへの近道かと思います。
差し出がましいようですが、私の個人の経験上の感想です。
コメントに対する返信ありがとうございます。
米国債、ラダー式、介護施設入所のキーワードが全て揃ってしまってので責任を感じました。
私はバブル末期の世代の人間で、その後、生き残る為に良いか悪いかの2択のみという極端な世界に身を置いたので、極端な考え方と行動があり、一般的ではないことを常に痛感しており、この悪影響が出たと思いました。
その影響が無かったとのことで安心致しました。
大変お騒がせして大変申し訳ありませんでした。
お詫びとしてコメントさせて下さい。
ゼロか100という考え方の私が林先生のブログに行き着いたのが、日本の財政不安でした。年金システムも同様です。
この問題の正解と矛盾の一才無い回答がブログとご著書から得られました。唯一100%納得のゆく稀有なものでした。
そして、米国債については世界恐慌から現在に至るまで有事の際の価格変動を調べ、全ての金融資産の中で最強であること確認しました。
これに金利が加わるのです。この結果が最高の中間報告でした。
何せ当初は現金のドルを全額タンス預金していた人間です。財政不安のリスクは回避出来ても現在の様な生活が出来るのは林先生のお陰です。
>資産運用相談について... への返信
林先生が仰るように、ブログでは個人の状況が異
なり、林先生も判断するのは難しいと思います。
せっかく、個別相談窓口があるので、こちらを利用するのがストレスフリーへの近道かと思います。
そうですね。コメント欄で質問してしまったこ
と、反省です。
また、コメント欄を長文で占拠してしまったこと
も、あらためて反省です。申し訳ありませんでし
た。