ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(債券投資の専門家)

新刊「投資は米国債が一番」幻冬舎刊
「証券会社が売りたがらない米国債を買え」ダイヤモンド社刊
電子版も販売中

アメリカ国債のデフォルト

2011年07月28日 | 資産運用 
ななしさんからいただいた質問、心配な方も多いとおもわれますので、コメントではなく、この記事で回答させていただきます。


アメリカ国債のデフォルト・リスク

政治的混迷を極めるアメリカの国債はデフォルトするでしょうか?

もちろんしません。アメリカの国会と大統領はチキンゲームをしています。2台の車が正面衝突に向け、どこまでハンドルを切らずにばく進できるかを競っているのです。

為替や株式市場の参加者はシロウトを含めて多種多様ですので、アメリカ株は下がり、円は買われるというような動きになっています。

では肝心の米国債自体の金利はどうなっているでしょうか?債券市場は、プロが大半を占める市場です。7月に入ってからそれぞれの週初めの米国債の金利の推移を示しますと、
7月1週目;3.16  2週目;2.94 3週目;2.94  25日;3.03
通常の範囲内の上下動です。つまり米国債は議会の動きで売られてはいません。

アメリカ国債がデフォルトに向かっているか否かの判断をする一番の指標は、すでに説明をしたCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)市場の動きです。スプレッドが大幅に拡大すると、これはヤバイとなります。この市場はプロ同士が相対で行うスワップ取引によりますので、シロウトの雑音は一切入ってきません。7月に入ってからそれぞれの週初めの米国債のCDSスプレッドの推移を示しますと、

7月1週目;49  2週目;49 3週目;56  25日;57

第2週目から3週目にかけてピクリとはしましたが、その後は変化ありません。ちなみに同時期の日本のスプレッドはどうだったか?

1週目;89  2週目;91 3週目;91  25日;88

ほとんど変化していません。日本のCDSスプレッドが大幅に拡がったのは、震災の直後でした。3月15日にはその前が80前後だったものが116を記録しています。これは明らかにリスクを大きく反映した動きと言えます。それに比べるとアメリカは動いていません。

 このことから、「米国債はデフォルトしません」と言えるわけではないのですが、この数値の意味していることは、ボクシングに例えれば「たとえ瞬間的にデフォルトが起こったとしても、それはスリップ・ダウンで、テクニカルにもノックダウンには至らない」。つまり瞬間的にデフォルトしたとしても、それは最後の判定には影響を及ぼさないただのスリップ・ダウンとみなされるだけなので、世界が混乱に陥るようなことには決してならない、というのがプロの見方だということです。

以上が私のアメリカ国債の発行上限をめぐる動きに関するコメントです。

回答になりましたでしょうか?
 

コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする