ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(債券投資の専門家)

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不動産投資 その6 REITについて 

2011年07月18日 | 資産運用 

 前回は、日本にREITが導入され、不動産投資がやりやすくなった、そしてREITの投資法は債券投資の応用で、収益還元法によるものだ、というお話をしました。
しかし始まったばかりの日本のREITには罠がありました。

「将来予想の甘さはわかるけど、ほかに罠があったの?」

驚くほど単純に見破れる罠がありました。

 それは、明らかな利益相反という罠です。しかもさすがに横並びの国、どのREITを見てもほとんどが該当するというひどさでした。私の見たREITの分析資料には各REITの購入物件の一覧があり、購入時の価格、その時点の推定時価情報、そしてどこから購入したかが書いてありました。購入価格と時価を比較すると、一定の法則で時価が購入価格を下回って損失を出しているのです。買ったばかりだというのに損失です。その法則が問題です。初期のREITのほとんどは大手の不動産会社やファイナンス会社が子会社的にREITを作っていました。そしてそこに自社が保有していた物件を売却し、その物件の時価がことごとく購入価格を下回っていたのです。どの子会社的REITも見事にその法則にはまっていました。つまり日本版REITとは、大手不動産会社の『ゴミ溜め』だったのです。このようなアカラサマな利益相反がまかり通るのが、日本のREITの実態です。

そしてついでに、「この分析資料もダメです、却下!」

何故か?せっかくしっかりとした情報が載っていながら、利益相反については一言も言及していませんでした。

  その後のJREIT、新しいもの好きの日本人にうけてすいぶんと利回りが低くなり、いかにもバブルという水準まで買われました。そして利回りの低さから嫌われ、見事にバブルは破裂。破綻は上場REITに留まらず、不動産関係の非上場ファンドも軒並み成績を落とし、存続すら怪しい状況にいたりました。80年代のバブルを知っている方は、まさか夢よもう一度なんて思わなかったと思いますが、あれほど懲りたはずの不動産バブル、ちゃんとまた巡ってくるのが人の世なんですね。

そして利益相反の体質は現在も変わらず、REITによってはより一層ひどく自社物件の塊になっています。もちろんREITの成績を上げるためには優良物件も織り交ぜてはいるのでしょうが、こうしたことが世界的には通用しない利益相反であることを日本の規制当局も認識し、きちんとした規制をしないと、日本の市場だけがガラパゴス化して忘れ去られる動きに歯止めがかかりません。どうやら昔から日本の不動産業界の辞書には、コンプライアンスとかガバナンスという言葉はないんですね。しかも規制当局がそれを許しているのが、私には理解できません。

JRERITは利益相反の塊だ!


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