ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(債券投資の専門家)

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金投資について、その2

2011年07月27日 | 資産運用 

前回は、金投資のうたい文句について検証を始めました。最初のうたい文句は、

金は長期投資に向いている、といことが本当かの検証でした。

結論は数字が示すように、「金はリスクフリー債券にも勝てない、長期投資にはおよそ向かない短期の投機対象だ」、ということをお話ししました。

  次のうたい文句のインフレヘッジについて、検証してみましょう。

Q:インフレヘッジにはなるの?

A:なります。でも日本がハイパーインフレに見舞われるとき、金でなくとも、いわゆるハードカレンシーの外貨建債券であれば同じ機能を果たします。債券なら金の卵を生み続けます。つまりインフレにならなくてもしっかりとリターンがあります。いつくるかわからないインフレに長期戦で挑むなら、金は失格です。債券にはかないません。

Q:ハードカレンシーって?

A:為替管理を受けずに自由に取引可能な、円・ドル・ポンド・ユーロ・スイスフランなどです。

次のうたい文句は安全性です。

Q:じゃ、金の安全性は?

A:資産としての安全性は一番高いかもしれませんね。絶対にデフォルトはしませんし。

Q:金の価格は上がってるって聞くけど……。

A:それは世界中がカネ余りだからです。商品ファンド、金投資ファンドなどが闊歩しています。でもファンドはいずれ売ります。買い持ちを続けるなんてことはありえません。ここから先の金投資はババ抜きゲームですから、最後のババをつかまされないことです。どんなに安全であろうが、金の決定的な欠陥は、値下がりリスクがあることです。

 
  それでも目先ではなく、金相場を10年レンジで見た長期のトレンドは強さが続くと私は思っています。その大きな理由は、以下の新しい需要の存在です。

1 金ETF(Exchange Traded Fund)の人気化
これは投資信託の一種で、金価格に連動して値動きするように作られています。金ETFを運用する側は、ETF需要に見合った現物を金の現物市場で買い付けますので、ETF市場が拡大する分、金に対する需要も拡大していきます。もちろん価格が下がればETF投資は縮小しますので、これにより絶対的ベース需要が大きくなったとは言えません。むしろ相場の振幅を増幅させる要因が増えたと見るべきでしょう。

2 中国人の所得上昇による金需要
世界中の投資対象という投資対象は、ことごとく中国人需要の対象となり、金も買われています。日本の不動産ですらだいぶおこぼれを頂戴していますが、そうした無差別の投資は、日本のバブルを教訓にすべきで、「いつか来た道」だと思われます。戦線の無差別拡大は、いつしかしっぺ返しがくるものです。

3 インド人という金大好き需要がいずれ爆発すること
人口では中国に負けない上、所得レベルはこれから上昇が見込まれます。インド人の金に対する嗜好の強さは中国人もビックリのレベルです。

  こうしたことから、長期的には金は買われる方向だとは思いますが、みなさんが投資をするなら、大きなリスクを取ってもよい、というおカネだけにしておくべきでしょう。そして、賢い投資家は今の上昇相場はやり過ごします。

  リタイアされた方は、「安定したキャッシュフロー」を何よりも大切にすべきだと思います。毎年のキャッシュフローがあれば、それを消費に使ってこそ老後を豊かに過ごすことができます。金を退蔵して値上がりしても、そのまま死んだら意味はありません。インフレヘッジは金でなくとも、金利を生むハードカレンシーなら可能です。

  現役世代の方も、金は複利運用ができませんので、長期の投資対象に向いていません。長期では複利運用ができる債券が圧倒的強さを持つのは、実績が示していますし、フィクストインカムは今後も確実にリターンをもたらします。

  以上がフィクストインカムの世界から見た金投資についてでした。少しは新たな視点をみなさんに提供できましたでしょうか。

  私なら「果報は寝て待て」、ババ抜きゲームには参加せず、ストレスフリーで寝ながらにしてキャッシュフローをいただきます(笑)。

■まとめ■
金は金の卵を産まない(笑)
リタイアした方に、キャッシュフローを得られない金投資は向かない
現役のビジネスマンの方にも、卵が卵を生まない金投資は向かない
コメント (1)
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