ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(債券投資の専門家)

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金投資について、その1

2011年07月25日 | 資産運用 

2010年の後半以来、金価格が市場最高値圏内で推移しています。

みなさんは、商品相場への投資勧誘を受けたことがありますか?昔は赤いダイアと呼ばれたあずき、そしてダイズやその他の農産物、金・銀・銅などの鉱物への投資を勧める電話がよくかかったものです。そうした胡散臭さを持つ業者はほとんどが淘汰され、単純でリスキーな商品相場への投資を勧める電話は少なくなりました。最近はむしろ証券会社などが、おお手を振るって商品投資ファンドを勧めたりします。金利が低く、国債の乱発が不安感をかもし出すようになると、そうした実物資産投資への勧誘は一段と説得力を持つように見えます。このところの金相場の上昇がそれに拍車をかけ、「純金積み立てコツコツ」や「時代は実物資産へ」というたぐいの投資の勧誘文句が力を持つように感じられます。

では、債券の専門家から見ると、商品投資はどのように映るか、私の意見をお伝えしたいと思います。

金投資のうたい文句は、

1 長期投資に向いている
2 インフレヘッジになる
3 超安全資産である
というようなことです。

まず、本当に長期投資に向いているか、ちょっと実績を見てみましょう。
30年間の投資結果をここまでみなさんと勉強してきたリスクフリーの米国債と比べてみます。いずれもドル建てです(金投資はドル建てです)。
1980年年初に投資を100で開始した場合、2010年年末時点、つまり30年間でいくらになったか?

 米国債   100  → 2,347
 金 100  →  250

このところの金価格の上昇を加味して1,600ドルとしても、金は285にしかなっていません。

  30年間のパフォーマンスでリスクフリーの米国債は23倍、リスク大アリの金は2.5倍でした。両者ともドル建てですから為替変動は両者に均等に効きますので、円建てにしても結果は同じような動きになります。ピリオド。

でもいいのですが、それじゃあまりに可哀想なので、一応フィクストインカムの専門家らしいコメントをしてみます。

  なぜ金は長期投資では債券にこんなにも無残に負けるのでしょうか。理由は、

「金は金の卵を生まない」
からです。

  金をはじめとする商品投資の最大の欠陥は、金利や配当というコンスタントなキャッシュフローをまったく生まないことにあります。米国債の30年間の投資のパフォーマンスがこれほどいいのは、債券は金利を生み、その金利が金利を生むからです(複利の場合)。100で投資したものが100で償還されるのが債券です。それが30年後に2347にもなったということは、そのうちの2247は100の元本が生んだ毎年の金利が積み重なり、金利が金利を生んで積み重なって膨れ上がったからなのです。

 もっとも短期では結果は違ってきます。5年間で見てみますと、2005年年初に投資を100で開始した場合に、2010年年末でどうなったかというと、

 米国債   100  →  120
 金 100  →  328

金の勝ちです。ということは、実は「金は短期の変動幅が大きい投機の対象」とみておいたほうがよいのです。つまりストレスフリーの資産運用には最もむかない投機対象なのです。

  Q:インフレヘッジにはなるの?

次回はそれに回答します。
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