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巨大なローマ劇場の遺跡と真っ白な石灰棚の対比が面白いヒエラポリスとパムッカレです(トルコ)

2012-11-04 08:00:00 | 世界遺産
 街中に巨大な壁が突然現れるのが南フランス、オランジュのローマ劇場でした。ローマ劇場はローマ帝国の版図のあちこちに作られていて、そのいくつかは世界遺産にも登録されています。今回は、数多くのローマ劇場の東端と思われるトルコのヒエラポリスの遺跡とパムッカレの石灰棚とを紹介します。

 ヒエラポリスとパムッカレは、トルコのアジア側の中央部よりやや西南の内陸部にあります。ヒエラポリスが文化遺産、パムッカレが自然遺産で、合わせて複合遺産として登録されています。登録数が900を越えた世界遺産ですが、複合遺産の登録は極めて少なく全体で20数件に過ぎません。わが国では複合遺産は1件の登録もありませんが、トルコではヒエラポリスーパムッカレ以外に、ギヨレメ国立公園ーカッパドキア岩石遺跡群が登録され、合計2件の複合遺産があります。

 
 文化遺産のヒエラポリスは、丘の上にローマ劇場、神殿、浴場やネクロポリスなどの遺跡が残されています。度重なる地震で破壊されて、瓦礫の山のような状態のイサキが多いのですが、ローマ劇場だけは保存状態が良く、現役の劇場としても使えそうです。筆者が訪れた15年ほど前は、舞台後方の壁があまり無かったのですが、現在では修復によってオランジュのローマ劇場と同じような形になっているようです。一方の観客席はかなりの傾斜で、一番上まで上るのはかなり息が切れます。舞台ははるかに下のほうで、マイクなど無かった時代の出演者はさぞや声の大きな人ばかりだったのでしょう。

 
 このローマ劇場以外にも、石造りの遺跡がごろごろしていますが、ごろごろしているといった表現がぴったりなんです。現在は修復が進んでいるのではないかと思いますが、トルコの遺跡は、どこも廃墟の様相で、大きな石が転がっているだけの所が多かったようです。かつての列強たちが、そこらへんを勝手に掘り返して、めぼしいものを持ち去った後には、瓦礫だけが残ったといった状況です。トロイの遺跡の発掘では英雄視されている人物も、トルコの人々の評価は、単なる遺跡泥棒です。

 
 自然遺産のパムッカレは、秋芳洞などの鍾乳洞で見かける石灰棚を地表に出して大規模にしてようなものです。石灰分を含んだ温泉水が、長年にわたって山の斜面に作り出したものです。白い石灰棚に、ブルーの温泉水がたまっている風景は幻想的です。ただ、最近は温泉の湧出量が減ったために観光シーズンだけにしか水を流していないそうで、オフシーズンには水の無い石灰棚しか見られないそうです。この温泉を利用した温水プールがありますが、地震で倒壊した遺跡の中にあって、プールの中には神殿の柱のようなものが沈んでいます。世界に温泉はたくさんあっても、このような温泉は他には無いのではないでしょうか。

 石灰棚は炭酸ガスの溶け込んだ水が石灰石を溶かし、流れている間に水分中の石灰が析出したものが溜まった結果です。炭酸水に溶け込んだカルシュウムは、炭酸カルシュウムの形で含まれていますが、水の硬度はこの炭酸カルシュウムの濃度で決まります。日本の水道水は、ほとんどが炭酸カルシュウム濃度の低い軟水ですが、ヨーロッパでは硬水がほとんどです。水道の蛇口に鍾乳石のようなツララができてしまうようです。電気的に水の硬度を測定してディジタル表示をする計器も市販されていますが、水の味の判断は人間の舌が一番なのかもしれません。


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