世界遺産と日本/世界の町並み w/IT

世界遺産と日本/世界の個性的な町並みをITを交えた筆致で紹介します。

川が大きく蛇行して川中島のようになった河回村には数多くの伝統家屋が残されています(韓国)

2010-08-01 08:00:00 | 世界の町並み
 長靴の形のイタリア半島のかかとの部分にあって、蜂蜜色の石で作られたバロック建築が町中にあふれている町がレッチェでしたが、同じように黄土色でも東洋では、石ではなく土とわらの黄土色でできた民家が素朴な雰囲気をかもし出します。今回は、川が大きく蛇行して、三方を川に囲まれて、まるで川中島のような地形に、黄土色の土壁と藁葺きの使用人の家と思しき家と、黄土色の塀の向こうに白壁にそりのある屋根に瓦を乗せた両班(ヤンバン)と呼ばれた支配階級の家とが建ち並ぶ韓国の河回村(ハフェマウル)を紹介します。

 河回村は、韓国の中央やや東部に位置する安東(アンドン)市の西部にあって、駅前からバスに乗って45分くらいで村の入り口に着きます。村に入るためには、入り口のゲートがあって入村料なるものを徴収されます。中国でも見かけられましたが、普通に日常生活をしている町や村に、観光客として入ろうとすると、まるでディズニーランドに入るように入場料を払わなければならないのですね。遊園地なら作るのにコストがかかったということで、コスト回収のためと考えられますが、生活の場に入るのに料金を徴収するというのは、取れるところから取ってやろう<という魂胆を感じます。例えば、京都の嵯峨野や倉敷の美観地区に柵ができて、入場料を払わなければ、その地区に入られない、といった状況なのです。

 河回村は16世紀に作られ、その後は同族集落として存続してきましたが、一族から両班と呼ばれる朝鮮王朝の高級官僚を数多く輩出しています。村内に、現在も残されている瓦葺で立派な家は、この両班の家屋で、韓国の伝統的な高級住宅の典型として貴重な家屋のようです。





 これらの家屋を見て感じるのは、意外と開放的な作りということです。こんな家だと冬には寒いんではないかと思ったりしますが、韓国の伝統的な床暖のオンドルが装備されているので大丈夫なのでしょうか。むしろ、夏は夏で暑い内陸性気候をしのぎやすくするために、亜熱帯風の風通しの良い家屋となったのかもしれません。韓国は半島部分に位置するので、寒暖の差は大きくないだろうと思っていましたが、海岸部分を除いて、冬の寒さは厳しく、夏も酷暑が続くのだそうです。

 この立派な両班の家々に比べて、その使用人達のわらぶき屋根の家の粗末さは、対比して見ることができるだけに大きな落差です。この河回村には有名な仮面劇が伝えられていて、土日には観光客向けに公演があるようですが、筆者は見損ねました、ただ安東市内の民族博物館に仮面劇の人形が飾られていて様子を伺うことができます。



 この仮面劇の大部分は、使用人から見た両班達の風刺がテーマになっているようです。日常の不満を、演者の顔の判別ができない仮面劇という形にぶつけたのではないのでしょうか。

 河回村のある安東は、朝鮮王朝時代に活躍した儒学者の出身地で、現在も韓国の中でもっとも儒教の影響が強く残っており、韓国の精神文化の故郷といわれています。序列を重んじる儒教社会の中で、支配階級と非支配階級との落差は、埋めることのできない大きなものだったのでしょうか。また、男尊女卑の風潮も激しいようで、お嫁に来た女性の、「私の世界は、家に囲まれた中庭から見える空がすべて」という言葉が紹介されていました。韓国では、電車やバスの中で、若者が老人に席を譲る光景をよく見かけます、儒教の良い面が生かされてほしいと思います。

 科学技術が発展して、ITによってあらゆることが実現可能と思われるような時代になっても、宗教が大きな影響力を保持していることは驚きです。儒教など世界の4大宗教のすべてはアジアで生まれています、もちろんキリスト教もアジアの一部の中近東で生まれたわけです。物質面で問題を解決するのがITなどの技術であり、精神面での問題解決の役割を担うのが宗教という住み分けは今後も変わらないのかもしれませんが、両輪のうちの精神面を重んじる東洋文化がもっと見直されてほしいものです。

補記 河回村は、2010年7月25日~8月3日ブラジリアで開催の第34回世界遺産委員会で「朝鮮の歴史的集落群」として世界遺産に登録されました。


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