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壱岐には朝鮮通信使が立ち寄った時代よりももっと古く、弥生時代の魏志倭人伝に記述のある一支国の遺構とされる原の辻遺跡があります

2024-02-25 08:00:00 | 日本の町並み
 室町時代に始まった朝鮮通信使は対馬を最初の中継地として島伝いに九州に到達しましたが、対馬の次の中継港が壱岐の勝本でした。現在の勝本浦には通信使の遺構は残っていないようですが、もっと古い魏志倭人伝に出てくる倭国の島国の一大国、後の史書では一支国(いきこく)が壱岐であるとの説があります。そして、壱岐の原の辻遺跡がこの一支国の跡であると1993年に長崎県教育委員会が発表して話題となりました。今回は、一支国の遺構とされた原の辻遺跡の周辺を紹介します。

 原の辻遺跡は、壱岐の南東部のやや内陸にあり、壱岐にある旅客扱いする港で唐津からのフェリーが発着する印通寺港の北3km程の所にあります。公共の路線バスの頻度は極めて少なく、原の辻を経由するバスは一日に数本しかないので、バスダイヤとにらめっこしてパズルを解くか、タクシーやレンタカーを利用することになります。

 
 路線バスを下車したところにあるのが、原の辻ガイダンスで、原の辻一支国王都復元公園のガイドのために作られた施設です。原の辻遺跡の発掘の歴史や復元公園整備の記録が展示されています。また、壁には壱岐でよく見かける鬼凧が飾られていました。これは、昔に壱岐で人々を苦しめていてた悪毒王という鬼の首領の伝説に基づくもので、都から派遣された若武者に首をはねられて、首が天高く飛んで行ったという言い伝えを凧にしたものでしょうか。

 
 
 
 
 歴史公園は、原の辻ガイダンスの建物とは道路を挟んで東側の、少し高くなった台地の上に南に向かって開けていて、環濠集落は東西に350m、南北に750mの大きさで、この集落の東側に魏志倭人伝に記述されている国境警備の役所があったと推定されています。また、集落の北西には日本最古と言われる船着き場の跡も残っているそうですが、現在の幡鉾川沿いに海に出ていたのでしょうか。

 王都復元公園は、時代は原の辻遺跡よりもっと古い遺跡ですが世界遺産の青森にある三内丸山遺跡のような感じです。発掘調査で見つかった柱の跡などから、建物の規模を推定して復元したと思いますが、三内丸山遺跡の時も思ったのですが、建物の高さ方向はどうやって推定したのでしょうか。こちらでは高床式の倉庫のような建物が多く復元されていたようです。また、復元住居の中には、かつて住んでいたであろう人々の人形も復元されていて、その様子が、なんとはなくほほえましく思いました。

 
 原の辻の発掘調査で発見された多くの石器や土器などの出土品は、復元公園の北北東1.5km程の標高60mの丘の頂上にある一支国博物館で保管展示されています。独立峰のような丘で、博物館の展望台からの景色は雄大です。復元公園も、それぞれの復元家屋ははっきりはしませんが、その大きさが把握できます。展示品はさほど多くなかったようで、弥生時代の原の辻遺跡からの出土品に加えて、古墳時代の双六古墳などから出土した青銅器などでした。三内丸山の博物館でも、バックヤードにおびただしい収蔵棚に置かれた出土品の多さに驚かされましたが、一支国博物館でも巨大な収蔵棚に多くの出土品が置かれていて、整理が進むと新しい発見があるかもしれません。

 
 一支国博物館の展望台から、復元公園都は反対側の海の中に小さな島が見え、何やら鳥居も立っています。丘を下って2.5km程先にあるのは小島神社で、沖合200m程の直径が50mほどの島に建つ神社です。この小島は壱岐のモンサンミシェルと呼ばれていて、干潮の時にだけ陸から歩いて渡ることができ、満潮時には海に漬かっている鳥居のそばを通って、島のてっぺんにある神社に参拝できます。

 原の辻遺跡では、かろうじて魏志倭人伝という文字情報が残されていますが、我が国の文字情報は古事記や日本書紀を待つことになります。それ以前の歴史は、出土したり遺跡の調査で現れる地面など、物理的なものがすべてで、この物を頼りに玄室がどうであったかを推定することになります。時代の推定には放射性炭素を使うことがよく知られますが、物理、化学の分野での最新の技術が総動員されるようです。それでも、曖昧さは残り、哲学的な推論で、仮説が立てられ、論戦にまで発展しています。コンピュータの分析手法の一つにインテリジェントマイナーというのがあり、一間関連性が無い事象の間に、ある関連性が存在することの発見に使われます。自動改札の通過データが、本人に無断で売り買いされているのは、この解析のためのデータの一つです。考古学でもこのような解析手法が使われているのでしょうね、おそらく生成IAは使われていないと思いますが。


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