世界遺産と日本/世界の町並み w/IT

世界遺産と日本/世界の個性的な町並みをITを交えた筆致で紹介します。

夏みかんと金子みすずを生んだ仙崎

2007-02-18 17:43:20 | 日本の町並み
 冬に実が成るのに夏みかんと呼ばれるのが不思議ですが、花や果実の少ない季節に鮮やかな夏みかんの黄色は印象的です。日本の夏みかんの原木は、山口県の仙崎にあるものとされていて、浜辺に漂着した種子から発芽したものだそうです(写真の夏みかんは仙崎のものではなく都内で撮影のものです)。

今回は、夏みかんの原木がある仙崎を紹介します。

 仙崎の夏みかんの原木は18世紀に植えられたもので、天然記念物に指定されています。夏みかんといえば同じ山口県の萩が有名ですが、萩のものもこの原木から接木されたのだそうです。冬に実をつけるものを、夏みかんと呼んだ理由ですが、生で食べることができるのは、木に放置して完熟する初夏の頃なのだからだそうです。ハウス栽培や輸入の柑橘類がなかった頃は、初夏に食べられる貴重な柑橘類として珍重されたことからの命名かもしれません。

 仙崎は山口県の日本海側の中央あたりの長門市の一部です。JR山陰線の長門市から支線が1駅延びていてその終点が仙崎です。夏みかんの原木があるのは、JRの駅から北に向かい海にかかる橋を渡った仙崎大日比にあります。青海島(おおみしま)と呼ばれる島になりますが、この青海島の北西岸は切り立った岸壁や海蝕洞窟などがあって、男性的な景色が続きます。

仙崎から観光船が出ていて、これらの海岸を眺められますが、よく荒れる日本海ゆえ、日によってコースが短縮されます。仙崎は古くからの漁師町で、捕鯨基地としても栄えたところだそうです。その歴史のせいか、観光船は鯨の格好をしていて、観光終了後には潮吹きの演出もあります。

 JR仙崎駅と青海島との間に白壁作りの町並みが続いていますが、この町は童謡詩人の金子みすずを生んだ町でもあるのです。

 この通りの名前も「みすず通り」と名づけられ、近くには童謡に歌われた公園やお寺などが散在しています。通りの中央あたりの生家は記念館になっていて、薄幸の女流詩人の記念品が展示されていますし、北よりの遍照寺には彼女の墓所もあります。

 金子みすずの童謡では、それまで気づかなかった視点の存在にハッとさせられます。「大漁」の童謡では、人間様は大漁で喜んでいるけれど、魚のほうは弔いをするだろうというものです。また。「私と小鳥と鈴と」では、3者のできること、できないことを比較していますが、それぞれが違っていて、みんないい、と結んでいます。インターネットの普及は、情報の伝達速度を飛躍的に速くし、受け手が情報を選択できる幅も広げたように思います。これにより、他人とは違った情報を得て、異なる視点をもつ人が増える基盤が整ったようにも思えますが、現実には他人とは違った考え方や視点、行動を取る者は、変人扱いや、いじめの対象になっているようにも思います。本当の個性の時代までには、まだまだ道のりは遠いのではないでしょうか。


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