世界遺産と日本/世界の町並み w/IT

世界遺産と日本/世界の個性的な町並みをITを交えた筆致で紹介します。

ヴォリーズが奥様の母校の神戸女学院に建てた蜂蜜色の建物は細部にまで神経が行き届いていました

2018-08-19 08:00:00 | 日本の町並み
 女子大の建物の紹介が続きましたが、今回も女子大の建物で、12棟の建物が重要文化財に指定されている大学です。第二次大戦前後に活躍したヴォーリズの設計で、西宮市にある神戸女学院大学です。重文に指定されている個々の建物は12棟ですが、ヴォーリズの設計したキャンパス全体が重要文化財のような環境です。

 神戸女学院は、阪急の神戸線を西宮北口で今津線に乗り換え宝塚方向へ1駅の門戸厄神駅の西500mほどの丘の上に建っています。神戸女学院は、その名前の通り、明治時代(1875年)に神戸市中央区に開設され、1933年に現在地の西宮市に引っ越しました。この時に学舎の設計を行ったのがウィリアム・メレル・ヴォリーズでした。ヴォーリズは近江八幡を拠点に、関西を中心に大正末期から昭和初期にかけて、教会、学校、個人宅など100棟を超える建物を設計しています。建築家としてだけでなく、来日の目的であったキリスト教の伝道者、メンソレータムなどを製造した近江兄弟社の経営者、また讃美歌の作曲などマルチな活躍をしています。子爵で神戸女学院卒の一柳満喜子婦人との婚姻を経て一柳米来留(メレル)の和名で1941年に帰化し日本人となっています。

 
駅から西に行くと敷地の南東角にある正門に突き当り、ここからは学舎のある岡田山の頂上部まではダラダラ坂を上ることになります。坂の途中に音楽館が建ち、建物の背後が崖になって、楽器の音などが他の学舎に影響しないよう遮音を考えた立地なのだそうです。

 


 
 
 
さらに坂を上ると、ミッション・スクールの学内にはなじまない奇妙な風景が目に入ってきます。なんと、神社の社が建っており、岡田神社といって、女学院がこちらに移転してくる前からあった神社なのだそうです。この神社の左手に、中庭を囲んでロの字にある建物群がヴォーリズのスパニッシュ・ミッション・スタイルと呼ばれる図書館、文学館、総務館/講堂、理学館で、女学院の中枢部って感じです。

 
 
 
 建物の間は渡り廊下でつながり、そこに開かれた門にも美しい意匠が施されています。講堂と中高部を結ぶ渡り廊下の門を超えると、左手はグラウンドで、その先には体育館が建っています。グラウンドに沿って進みタルカット記念館とめぐみ会館の間を右手に入ると右手に待合を備えた茶室が目に入ります。さらに進むと、突き当り近くにケンウッド館、さらにその先にエッジウッド館があり、どちらも宣教師の住宅として建てられ、現在はゲストハウスなどに利用されているようです。

 神戸女学院大の建築群はコンクリート製ですが、レッチェ石でできた南イタリアの町並みを思い出します。レッチェ石は石灰岩の一種で、レッチェには、このレッチェ石でできたバロック建築が建ち並び、町全体がレッチェ石の蜂蜜色であふれています。この柔らかな感じが、どこかヴォーリズの建築群と似た感じを作っているように思います。蜂蜜と言えば、学生の頃に読んだ「動物と太陽コンパス」という本を思い出します。ミツバチは、正確な体内時計と、太陽光の偏光面を認識できる能力を持ち、これによって正確に方位を割り出すという記述です。働きバチの仲間たちに、密のある方向を、この認識能力を使って正確に伝え、無駄な飛行をさせないのだそうです。翻って、現代人は、目的地に行くのにスマホのGPS機能などを利用して盲目的に引きずられて行くようになりました。人類はミツバチほど正確な方位検知能力は持っていなかったかもしれませんが、IT機器に頼りすぎて本来持ち合わせている生命維持能力をそがれているように思います。


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