世界遺産と日本/世界の町並み w/IT

世界遺産と日本/世界の個性的な町並みをITを交えた筆致で紹介します。

神戸の町並みを眺めるには六甲山や摩耶山が有名ですが、もっと間近に、中心街にも近い迫力ある景色が眺められるのは諏訪山の金星台です

2021-08-15 08:00:00 | 日本の町並み
 山手の地名が付く港町を長崎、横浜と紹介してきましたが、今回は筆者の故郷の神戸の山手を取り上げます。神戸の山手は、中山手通、下山手通というように東西に延びる町の地名として付けられていますが、今回紹介するのは、これらの町並みからもっと山の手の諏訪山界隈で、横浜の時と同様に、通常の山手とはひと味違う場所を取り上げます。

 神戸の市街地のJR線の北側に並行して三宮駅から元町駅を通り越して神戸駅の近くまで伸びているのが、南側から下山手通と中山手通で、さらにその北に山本通、諏訪山町があります。下と中があるのですが上山手通りがありませんが、かつては中山手通と山本通の間に存在したらしいのです。今回紹介する諏訪山公園は、諏訪山町の諏訪山公園から急坂を上って神戸港地方(「ちほう」ではなく「じかた」と読みます)にあるヴィーナスブリッジまでです。神戸港から遠い山の中なのに神戸港地方という奇妙な地名は、神戸港の周辺の場所との意味合いでけして港のそばということではありません。

 
 
 ふもとの山本通のバス道に接するようにあるのが花と緑のまち推進センターで、思いのほか手入れの行き届いた四季の花が咲いています。東側の急坂を上っていくと諏訪神社の社殿が現れます。歴史はかなり古いようで、源義経が武運を祈ったという言い伝えが残っています。諏訪神社の坂ではなく、その東にあるバス道と平行になだらかな坂を上ると、やがて金星台に通じます。かつてこの辺りには昭和初期に開園した諏訪山動物園があり戦後まもなく閉園し跡形も無くなってしまいましたが、その後にできた王子動物園の基礎となった動物園です。

 
 
 金星台は、1874年に金星の太陽面通過があり、その観測の適地の一つがわが国で、3か所に海外からの観測隊が来訪しましたが、その一つが神戸の禁止台でした。神戸では、フランス隊が、横浜ではメキシコ隊が、長崎ではフランス隊とアメリカ隊が、各々観測を行ったのだそうで、明治の初頭なので居留地のある港町が選ばれたのかもしれません。広場には、禁止観測記念碑と勝海舟が造った神戸海軍塾の碑が建っています。

 
 
 
 

 金星台からさらに上ると1971年にできたヴィーナスブリッジで再山ドライブウェイ越えて諏訪山展望台に到着します。諏訪山展望台はヴィーナスブリッジの開通で訪れる人も多くなりましたが、かつては再山ドライブウェイの通過点に過ぎない場所でした。一方、このドライブウェイは昭和10年に開通した山岳ドライブウェイのはしりで、六甲山を西からアクセスするのに便利な道ですが、違法走行車が多行ことでも問題の道路です。ヴィーナスブリッジは金星台からの命名で、一時は橋の欄干などにカップルが南京錠を取り付けるのはやりましたが、見苦しいために、橋を登り切ったヴィーナステラスに愛の鍵モニュメントが作られて、数多くの鍵がぶら下がるようになりました。このテラスの端には、かつては高級フランス料理店があり、その後高級イタリア料理店に代わり、お値段はやや高めですが、神戸の景色を見ながらの食事はなかなかのものです。

 金星の太陽面通過を観測するのは、惑星間の距離を表す隊として使われる1天文単位の絶対値を知るために行われます。金星が太陽の縁を通過する時間を地球上の複数の観測点で正確に測定して、その時間差と観測点間との距離とから1天文単位の絶対値を計算できるそうです。この天文単位は宇宙というとてつもない大きなものを測る単位ですが、日常生活で使うメートル法は、時間、長さ、質量が相互に関連した合理的なものです。このメートル法の規定は、時間は地球の自転周期、長さは子午線の長さ、そして質量は純水の質量から規定されましたが、どれも不変とは言い難く、物の値から電子的、物理的な定義に置き換わっています。質量の定義が最も遅れ、2019年にプランクの常数を使った定義となりましたが、難しくて理解しがたいところがあります。ただ、これらの定義も、現在の人類が不変と思っているにすぎず、この先も不変であり続けるか誰も分かりません。