メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

ロッシーニ「ラ・チェネレントラ」(メトロポリタン)

2012-08-04 17:42:07 | 音楽一般

ロッシーニ:歌劇「ラ・チェネレントラ」

指揮:マウリツィオ・ベニーニ、演出:チェーザレ・リエーヴィ

エリーナ・ガランチャ(チェネレントラ)、ローレンス・ブラウンリー(王子)、アレッサンドロ・ユルベッリ(父親 ドン・マニフィコ)、ラシェル・ダーキン(姉 クロリンダ)、パトリシア・リスリー(姉 ティスペ)、シモーネ・ベルギーニ(従者 ダンディーニ)、ジョン・レリエ(哲学者 アリドーロ)

2009年5月9日 ニューヨーク・メトロポリタン歌劇場  2012年7月 WOWOW放送録画

 

「チェネレントラ」はイタリア語で「灰かぶり娘」、つまりシンデレラの話である。聴くのも、見るのも初めてではないが、ずいぶん久しぶり。

作られた当時、舞台で女性が足を見せることに困難があったらしく、ガラスの靴を試す場面はなくなり、娘と王子が結ばれるまでは、パーティで娘が2つの腕輪の一つを彼女が一目ぼれした従者(実は王子の変装)に渡し、もしその後どんな境遇で会っても気持ちが変わらなければ、と言って別れ、父親や二人の姉とのどたばたの結果、ハッピーエンド、という形になっている。

 

だから、娘は自分の性格の良さと自分の力で運命を切り開いてゆくわけで、それがこの笑わせる場面が多い作品を、気持ちのいい、感動的なものにしている。

 

主人公の歌唱はベルカントでコロラトゥーラではあるが、メゾ・ソプラノの声域で、これはこういうストーリーであれば、ソプラノの姉たちとの対照もあって、納得できる。 

 

そのチェネレントラはなんとエリーナ・ガランチャ、そう昨年驚かされたカルメンである。カルメンとは正反対、でも家の仕事をしているときは素朴で、着飾って王子と会うときには毅然として見栄えがする、ヴィジュアルも含めそういう役にうまくはまっていて、歌唱の力強さとともに見惚れてしまう。

 

王子も身長など、見た感じに最初は違和感があったが、声も歌も申し分ない。

父親と従者の出番が多く、この二人が上演の成功の鍵を握ることになるけれども、これもうまい。

そして終幕には登場人物6人の六重唱が延々続いて、ロッシーニというひとはよくもこんなに、と感心する。

音楽だけとってもこれはロッシーニの作品の中でも傑作だろう。このスピード感ある音楽が各登場人物の中で鳴っていて、それが彼らをこう動かしている、と感じられる。ベニーニの指揮もそういうもの。

 

演出は6人の動きを邪魔しない、あまりうるさくない背景で、こういうシンプルなのもいい。


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