エヴァの匂い (EVA 、1962仏、117分)
監督:ジョセフ・ロージー、音楽:ミシェル・ルグラン
ジャンヌ・モロー、スタンリー・ベイカー、ヴィルナ・リージ
モノクロでもフィルム・ノワール風だし、ジャンヌ・モローで期待したが、はずれた。なぜ世評はかなり高いのか。
舞台はヴェネツィア、炭鉱労働者家庭から出てきた作家(スタンリー・ベイカー)が、通称エヴァ(ジャンヌ・モロー)と出会う。彼女は実は羽振りの良い男を乗り換えている悪女なのだが、それを知らずに婚約者(ヴィルナ・リージ)がいるにもかかわらず男はのめりこんでいく。
ただ、どうもエヴァが男に一瞬でもひかれたというプロセスがないようで、そこが物足りない。いくらフィルム・ノワールのタッチでも、映画とし見られるものになるには、そしてジャンヌ・モローの魅力を発揮させるには、脚本に工夫がほしかったところである。
ヴィルナ・リージはその後の感じとはちがい、ここでは純情な若い美人。
このファム・ファタル・ストーリー、はてどこか典型的な?と思ったら、そうカルメンといえなくもない。ただ最後に男がエヴァを殺すのかと思っていたらそうはならなかった。カルメンは一面でホセを愛していたから殺されたのだが、やはりこの映画ではもっと乾いた情感のないものだったか。
音楽はミシェル・ルグラン、この時期によくあるジャズの多用で、特にエヴァはレコード・プレーヤーをどこにでも持っていき、いつも何かかけている。モダン系やビリー・ホリデイ(Willow weep for me )など。これは効果的。
また衣装はジャンヌ・モローと当時一緒だったピエール・カルダンで、なかなか見せるが、背景に荒涼としたことろが多く、ちょっともったいない。