メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

ペルセポリス

2007-12-29 18:00:23 | 映画
「ペルセポリス」(PERSEPOLIS 、2007仏、95分)
原作・脚本・監督:マルジャン・サトラピ
(声) キアラ・マストロヤンニ、カトリーヌ・ドヌーヴ、ダニエル・ダリュー
 
一部を除いてほとんどの場面がモノクロのアニメーションである。1978年のイラン、恵まれた家庭に育った作者と思われる9歳の少女マルジが、革命、イラン・イラク戦争の中で、思想で翻弄される親族、制限がきつくなる生活・風紀、にとまどい、抵抗し、わがままも含めてどうにもならなくなり、両親はマルジを通っていたフランス語学校の縁でそのウィーン校に出す。その中で、かなり極端な、国際的広がりを持つ子達と付き合い大人になるが、結局いられなくなり戻ってきて、今度は別の目でイランの窮状にぶつかる。
 
そういう過程、エピソードを、速いテンポの作者モノローグのスタイルで、様々な手法のアニメを使って、描いていくのが特徴だ。アニメとしては短くないし、内容は大人っぽいものだが、退屈はしない。
 
アニメの手法は、はっきりした線画、切り絵風、シャガール調、影絵風など様々で、西欧の空港場面などでたまにカラーになったりすると実写のように感じる。
 
このようにアニメの作り方としては、なかなか見所もあり、高い評価も理解出来るが、物語としては、どうしても経済的に恵まれ開明的な考えを持つことが出来た階級の立場から見たものという限界は、随所に感じてしまう。
 
それを多少救っているのは笑いだろうか。取り締まりが厳しい社会でも、酒は隠れて飲み、ロックを聴き、その中でおかしい話、笑い飛ばしなどが次々と出てきて、それはまた作者が自己を対象化している証しにもなっている。
 
もう一つ、革命でも変らない、この社会での男女の問題のあついかいに関しては、階級だのどうだのということを離れ、この映画は痛快なものになりえているかもしれない。それを支えているのは祖母役であり、ダニエル・ダリューの声は柔らかな存在感というかなかなかいい感じを出している。今年90歳のはずだ。
 
なお、見たのは字幕版であり、響きは心地よいがフランス語はほんの少ししかわからないから、これではこの凝った画面の一部しか見ていないことになる。これは実写よりアニメではなおさら本質的なことで、いずれDVDで吹き替えが出れば、そっちで確かめてみたい。
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