旅のつばくろ:沢木耕太郎 著 新潮社(2020)
旅のシーンを素材にして、そこから過去の何かを思い起こしたり、思い浮かぶことに頭を巡らせながら書いたエッセーで、JR東日本の社内誌に連載されたもの。私も東北新幹線、北陸新幹線の中で少し読んだ記憶がある。こういう一見軽い短いものはあまり多くないと思う。
著者は私と同世代で、初期からかなり多くの作品を読んできた。対象との距離の取り方、フットワーク、押しつけがましくないが鋭い考察と指摘、このあたりが長く読んできたわけとでもいうものだろう。
本書の中には、旅のつれづれに、十代の私などからすれば無謀な旅行、大学を出るときのこと、入社から退社そしてライターへと、そのあたりのことが少しずつ出てくる。多くはすでに知っていることだけれど、こういう流れで出てくると、読むほうにも、そういう風に思い出されることはあるよね、という感がある。
今回集められたものには東北が多いけれど、奥入瀬、金沢、鎌倉など、それなりによく知っているところもある。頷けるところ、ああそうなのかというところ、楽しい。
また、太宰治を掘り下げていること、酒は相当強いということ、他にも思いがけない人とのつながり、その人への言及など、これから何を読もうかという時に役に立ちそうなことがいくつかあった。
著者を知ったのは、ある深夜放送で最初の単行本「若き実力者たち」(1973)が紹介され、その場に沢木も登場していた時で、取り上げた人物たちと著者の姿勢が記憶に残った。
しかしこれを読んだのは少し後で、最初に買って読んだのは「敗れざる者たち」(1976)、これは頂点と下降を経たスポーツ選手(競走馬もいるが)の、著者が見たそれでも敗れざる一面を書いた秀逸なもので、私が最も好きな作品の一つである。
その後、「テロルの決算」、「一瞬の夏」など長いものであっと言わせたが、なんといっても「深夜特急」(1986)は旅を志す若者のバイブルになった。それでもその後もぶれずに、時々私が読みたくなるものを書いてくれている。
今後、軽いものでもいい、健在でいてほしい。
旅のシーンを素材にして、そこから過去の何かを思い起こしたり、思い浮かぶことに頭を巡らせながら書いたエッセーで、JR東日本の社内誌に連載されたもの。私も東北新幹線、北陸新幹線の中で少し読んだ記憶がある。こういう一見軽い短いものはあまり多くないと思う。
著者は私と同世代で、初期からかなり多くの作品を読んできた。対象との距離の取り方、フットワーク、押しつけがましくないが鋭い考察と指摘、このあたりが長く読んできたわけとでもいうものだろう。
本書の中には、旅のつれづれに、十代の私などからすれば無謀な旅行、大学を出るときのこと、入社から退社そしてライターへと、そのあたりのことが少しずつ出てくる。多くはすでに知っていることだけれど、こういう流れで出てくると、読むほうにも、そういう風に思い出されることはあるよね、という感がある。
今回集められたものには東北が多いけれど、奥入瀬、金沢、鎌倉など、それなりによく知っているところもある。頷けるところ、ああそうなのかというところ、楽しい。
また、太宰治を掘り下げていること、酒は相当強いということ、他にも思いがけない人とのつながり、その人への言及など、これから何を読もうかという時に役に立ちそうなことがいくつかあった。
著者を知ったのは、ある深夜放送で最初の単行本「若き実力者たち」(1973)が紹介され、その場に沢木も登場していた時で、取り上げた人物たちと著者の姿勢が記憶に残った。
しかしこれを読んだのは少し後で、最初に買って読んだのは「敗れざる者たち」(1976)、これは頂点と下降を経たスポーツ選手(競走馬もいるが)の、著者が見たそれでも敗れざる一面を書いた秀逸なもので、私が最も好きな作品の一つである。
その後、「テロルの決算」、「一瞬の夏」など長いものであっと言わせたが、なんといっても「深夜特急」(1986)は旅を志す若者のバイブルになった。それでもその後もぶれずに、時々私が読みたくなるものを書いてくれている。
今後、軽いものでもいい、健在でいてほしい。