メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

池上秀畝 展(生誕150年)

2024-04-11 18:13:06 | 美術
池上秀畝 展 高精細画人 生誕150年
 3月16日~4月21日  練馬区立美術館
 
池上秀畝(いけがみ しゅうほ)(1874-1944) は日本画家であるが、これまでその名を全く知らなかった。解説によれば菱田春草と同年、同じ長野県の生まれだが、伝統的な日本画に秀で、官展を中心に評価が高く相応のところに買い上げられたが、いわゆる旧派とされ、春草や横山大観などの日本画新派のように一般の鑑賞者の世界には知られなかったとも言えるらしい。
 
かなりの数の花鳥画を中心とした展示を見ると、高精細ではあるがスタティックというか主張は抑えられているといえる。もっともこの分野ではそうはっきりした主張はこの時代あまりなかったともいえるが、それでもどこか静かすぎないかとも感じた。
 
伝統的な日本画は手本を正確にうつすことからはじまるそうだが、そこにとどまっていられないところから大観、春草などの朦朧体も出てきたかということは想像できた。
 
こういう旧派、なかなか入っていけないが、池上秀畝はひそかに西洋画も多少勉強し、これまでにの日本画とはことなり「写生」を重視したそうである。たしかに「桃に青鸞」、「四季花鳥図」などは写実の粋ともいえる。
ただ同じ鳥の絵でも若冲は「写生」ではないのだろう。おそらく飼っている鶏を毎日注視しているうちに頭の中に完璧な像を作り上げてそれを描いた、描いているうちにそれが出てきたということだろうか。

一方、秀畝は博物館で鳥の剥製を長時間かけ克明に写生したことがあったそうである。
 
大作「神風」(1943)は蒙古襲来を題材にしており靖国神社に奉納されている。この画人、そういう厳しい時代に生きたのだろう。

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