メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

スティーヴン・キング「ビッグ・ドライバー」

2013-11-29 21:42:16 | 本と雑誌

スティーヴン・キング 「ビッグ・ドライバー」 高橋恭美子、・風間賢二 訳 (文春文庫)

 

 スティーヴン・キングの中編二つ、「ビッグ・ドライバー」(Big Driver)と「素晴らしき結婚生活」(A Good Marriage) が収められている。

「ビッグ・ドライバー」は、そこそこに売れている女性推理小説作家が講演を依頼されての帰りに凶悪な男に遭遇し命からがら生きのびてからの復讐譚、「素晴らしき結婚生活」は幸福な結婚生活をすごし二人の子供も成人したのちに夫が実は殺人鬼だったと知ってしまった妻のその後、という話。このレベルまでは文庫の帯に書いてるから、ネタバレにはならないだろう。

 

作者はあとがきで「純文学はたいてい普通の状況下における異様な人々に関心があるが、、、私がより興味を持っているのは異様な状況下における普通の人々を語ることである」と言っているように、二つとも主人公は普通のマインドを持った女性である。それだからこそ、主人公が遭遇するものは読者にとっては驚きでああり、その先どうなるか想像力を刺激される。

 

その一方で、話の細部があまりにも偶然ぴたりと結びつきがちで、読んでいる方は現実感にとぼしくなることがある。エンターテイメントとしてはやむを得ないということなのだろうが、それにしても最近読んだいくつかのスリル・サスペンス小説に共通するところだ。

 

二つ比べるとどちらかと言えば後者かと思う。原文と比べたわけではないが、訳がうまい(みたい)ということもあるだろうか。

 


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