よるドラ『恋せぬふたり』から、他者に恋愛感情も性的欲求も抱かない「アロマンティック・アセクシュアル」の男女が始めた同居生活が周囲に波紋を広げていく様を「ラブではないコメディ」として描かれていた。
昨今は「LGBT」という言葉の認知度は高まりつつあるが、同性愛者や両性愛者、トランスジェンダー以外の性のあり方はなかなか知られていない。そのひとつに「アロマンティック/アセクシュアル」という概念がある。世の中には、いろんな人たちが存在し、狭い視野で物事を捉えるのではなく、まさにインクルーシブってことです。
人を好きになったことが無い、なぜキスをするのか分からない、恋愛もセックスも分からず戸惑ってきた(岸井ゆきのが演じる)兒玉咲子[こだま さくこ]に訪れた、恋愛もセックスもしたくない(高橋一生が演じる)高橋羽[たかはし さとる]との出会い。そんなアロマンティック・アセクシュアル(※)の二人をとりまく新たな恋愛論のストーリーが展開される。さらに、主題歌は今世界で注目されている日本人バンド"CHAI"がこのドラマのために書き下ろした新曲「まるごと」も妙にこのドラマを印象付けています。(※アロマンティックとは、恋愛的指向の一つで他者に恋愛感情を抱かないこと。アセクシュアルとは、性的指向の一つで他者に性的に惹かれないこと。どちらの面でも他者に惹かれない人を、アロマンティック・アセクシュアルと呼ぶ。)
演出の野口雄大氏が言うには、咲子、カズくん、千鶴、それぞれが現時点での立ち位置をそれぞれが見つめ直し、新たな出発を描き、 つまり「自分の居場所(HOME)」を探すためだったと、そんな「自分の居場所(HOME)」という目に見えない存在を、「象徴」として表現するために城が何度も出て来る。「恋愛感情抜きにして家族になるって、どういうことだと思います?」という高橋からの質問への返答で、カズくんは「相手の帰る場所になる、的な感じじゃないっスかね~」と城を見上げて言う。なぜ「城」を「自分の居場所(HOME)」という象徴にしたのか?城はいつも私たちの家々を見守ってくれている存在に「 何かに似てる…」「高橋家の家だ!!」そして、最後、咲子は高橋家に帰ってきます。 つまり今の咲子にとっては、高橋家こそが自分の居場所(HOME)である。そして咲子を中心にカズくん、千鶴、そして高橋も、自分の居場所=HOMEを探し続けている。このことを演出の野口氏は伝えたかったのではと推察される。
この社会に生きる全ての人がきっと笑顔になれる、ラブではないコメディをお楽しみにと『恋せぬふたり』の放送予告に付け加えられていた。家族とは何か…私も最近よく考えることがある。恋愛感情があり結婚したのに、次第にその感情は薄まり別れることもあり、でも、やっぱり隣に居て欲しいと思うのが家族のような気がします。ドラマに出てきた「帰る場所」というのは、とても心に響き、自分の帰りたい場所を大切にしたいと思う私でした。
◎[恋せぬふたり] 第1~4回ダイジェスト!5分で追いつける | よるドラ | NHK