先日、1993~2004年の就職氷河期に就職した年代が中年期を迎えるミッドライフクライシスについて取り上げた際に、そこで思い出したのが、NHK金曜ドラマ、半径5メートルの第8話で、タイトルが「野良犬は野垂れ死ぬしかないってか?」のお話しで20年前の就職氷河期世代のある女性、インフルエンサーの物語だったのです。
若い雑誌記者の問いに、その野良犬と呼ばれている女性が、今一番望んでいる事は何ですか?と尋ねると「全国で”ぬくぬく”とした暮らしをしている日本国民に土下座して謝罪して欲しい。」と答えが返って来たのに、若い記者は驚きその部分をカットしていた。
ベテラン記者が何でこんな質問したの?と若い記者に聞くと「メッセージ性を強めて読者の共感を得たいと思ったからです。」と、「だったらこの部分を何で省略したの?」とベテラン記者が尋ねると「帰って来た答えが、さすがに被害者意識が強すぎて読者に共感を得にくいかと思ったんです。」と若手記者は応えたのです。
それは読者の共感じゃなくてフーミン(若手記者自身)の共感でしょ。自分の足を踏まれているのに、黙ってられる?痛いって叫んでいるのに無かったことにされた時、フーミンが見て来た半径5メートルと彼女が見て来た半径5メートルは違う。踏まれ方も、踏まれた数も全然違う。とベテラン記者は言う。
就職浪人、雇止め、派遣切り、不当な扱いに対して、もがきながら果敢に闘っている人が居る。すべては自分のせいだと必死に耐えながら葛藤し続けている人も居る。その戦いはその忍耐は就職氷河期から20年経っても今なお続いている。
この先も就職氷河期は到来するだろう。一度チャンスを逃せば取り戻せない社会のままではあってはいけない。努力が報われない世の中であってはいけない。誰のことも置き去りにしない世の中であって欲しい。と作者の橋部敦子さんは現代に警鐘を鳴らしているドラマでした。
(※障がい者雇用や障がい者が辛い思いをした共通する部分でもあり、身の回りの小さな出来事から深堀して行く、このドラマに感銘を受け再度取り上げる事にしました。)