物臭狸の『花日記』

YAHOOから引っ越してきました。
色々な植物たちを紹介しています。

イワギボウシ

2017-09-30 06:00:00 | ユリ科
イワギボウシ(岩擬宝珠)
<学名:Hosta longipes (Franch. et Sav.) Matsum. var. longipes>
ユリ科 ギボウシ属 多年草               
{最近の(LAPG) IIIではキジカクシ科となっています。}


本州(岩手県~兵庫県)の山地の湿った岩場や渓谷沿いの岸壁
(ときに樹木の幹や枝)に着生して生える多年草です。


撮影日 2017.09.24: 群馬県
根元にまとまってつく葉はふつう幅の広い卵形で葉質は厚く、
表面には光沢があり滑らかです。
長い葉柄には紫黒色の細かな斑点が見られる個体が多い。

ギボウシの仲間には春から初夏に咲くものと夏の終わり頃から
秋に咲くものの2種類あり、イワギボウシは秋咲きの代表です。
花期8~9月、長い花茎を斜めに、ときに下に垂らして先端に
花を咲かせます。

膜状で薄い苞が開花時には萎れて脱落するのが特徴です。
白淡紫色の漏斗状の花を下向きから横向きに10数個つける。
柄が長く花被片は6枚で脈はあまり明確に入らない。
花は美しく、観賞用に植栽される。


各地域に特徴的な変種があるそうで、
サイコクイワギボウシ(var. caduca)が四国西部と九州に、
イズイワギボウシ(var. latifolia)が伊豆半島と伊豆諸島に
ヒメイワギボウ(var. gracillima)が四国東部と近畿地方南部に、
オヒガンギボウシ(var. aequinoctiiantha)が西日本に
分布しています。

崖の上の方に大株が咲いていました。


ギボウシ類は古くから、ウルイの別名で食用として親しまれ、
若葉や花や花柄、葉を採取して、熱湯で茹でてさらして、
おひたし、あえもの、揚げ物などや、
茹でたものを干して食用として保存されたといわれている。

ギボウシ(擬宝珠)の名前の由来は蕾の形が橋の欄干のネギ坊主に似た、宝珠(ほうしゅ)という飾りに似ているから。宝珠とは頭部の尖った火焔形の玉をいう。仏教の用語で宝珠とはどんな願いも叶える 不思議な珠のことで、この宝珠には橋の安全が込められている。蕾が宝珠に似ているから 擬宝珠なんです。イワギボウは、川沿いの岩場に自生する擬宝珠なので岩擬宝珠の名前がつけられました。

こんな岩場に張り付いて咲いています。




トウクサハギ

2017-09-27 06:00:00 | 
トウクサハギ(唐草萩)
<学名:Lespedeza floribunda Bunge>
マメ科 ハギ属 落葉小低木



中国原産の帰化植物。法面緑化の土留め用に使用された
中国産種子に混入していたものと考えられるようです。

茎はよく分枝し、長さ30〜100cm。灰白色の伏毛がある。
托葉は線形、長さ4〜5mm、先端は刺状。

葉は3出複葉、小葉は倒卵形、長楕円形で、長さ1〜1.5cm、
幅0.6〜0.9cm、先端はわずかに凹み、鈍角〜円頭、または
ほぼ切形で、刺状突起がある。

基部はくさび形。表面はまばらに伏毛があり、裏面は密に
白い伏毛がある。



花期6〜9月。葉腋に総状花序を出し、長さ8mmほどの
紅紫色の花を5~10個つける。





小苞片は卵形、長さ約1mm、先端は急に尖る。

旗弁は楕円形、先端は円形、翼弁は龍骨弁より短い。

萼は5裂し、長さ4〜5mm、白い伏毛が多い。裂片は披針形
又は卵状披針形、長さ2〜3mm、先端は次第に尖る




豆果は広卵形~楕円形、長さ約5mm、毛が密生し、
網状の脈がある。

種子は黒く2~3㎜の楕円形。



2001年に愛媛県今治市と香川県観音寺市で伊藤隆之が発見し
2003年植物研究雑誌78巻(大橋広好・根本智行・伊藤隆之)
で発表された。


近年になって法面緑化の土留め用種子に交じって入ってきた
新しい中国原産の帰化植物です。







ヤマハギ 2017

2017-09-26 07:00:00 | 
ヤマハギ(山萩)
<学名:Lespedeza bicolor Turcz.>
マメ科 ハギ属 落葉半低木



北海道から九州の尾根筋の林中や林縁、刈り取り跡地などに、
普通に生育する落葉半低木。

撮影日 2017.09.10: 群馬県
最近では、新しく造成された土手などでも見かけられるが、
コマツナギと同様に土留めのために種子が吹きつけられたものと
思われる。
高さ1~2m。枝は細く、多数に分枝する。
枝先はほとんど垂れないが、林縁などに生育する場合に、
時として枝が垂れることがある。


葉は互生し3小葉からなる複葉
小葉の先端はわずかに凹むものから円頭のものがあり、
変異の幅は大きい。
典型的な小葉は円頭であり、中心部より下側が最も幅広い
卵形。
表面はほぼ無毛であるが、裏面には伏毛が生えるが、わかりにくい。
葉柄が長いので、葉がまばらについている印象がある。
3小葉の長さと葉柄の長さがほぼ同じ。
 
花期7月~10月、花序の柄は長く、葉よりも外側に出て目立つ。
柄と花序の中軸の長さはほぼ等しいか、
柄が長いくらいで、葉群よりも花序は外側に出て目立つ。


花は長さ約10㎜の蝶形花で淡紅紫色が普通だが、濃淡には変化がある。
翼弁は濃い紅紫色であるが、旗弁や竜骨弁もやや色濃いものが多い。

旗弁は倒卵形、耳状突起は小さく、旗弁は翼弁や竜骨弁より長い。

竜骨弁が長く、前に突き出し、翼弁は竜骨弁より短い。


萼は4裂し、上の萼歯の先が少し切れ込む。

萼歯は鈍頭又は鋭頭。萼歯は萼筒より短い。

果実は長さ5~7㎜、扁平なほぼ円形、種子は1個だけ入る。
種子は長さ3~4㎜。


秋の七草の1つとされる。



萩  ~ マメ科 ハギ属 ~

2017-09-22 18:00:00 | 
マメ科ハギ類に関する" 萩 "の書庫があるのでハギについてまとめてみました。

古くから日本人に親しまれ短歌や俳句にも詠まれる花でもあり秋の七草の
一つに数えられ、草冠に秋と書いて萩、まさに秋を代表するかのような
植物ですね。

   -----  -----  ----- 分類 ------  -----  ----- 
ハギの仲間は分類が難しい植物だといわれます。
約40種ほど東アジアや北アメリカなどに分布しているようです。
日本産のハギ属の研究は、1867年オランダの植物学者ミケエルMiquelにより
シーボルトやビュエルガーが日本などで採集した標本に基づいて日本に
11種のハギ属の種が産することを報告したのが始まりになるようです。
(この研究でマルバハギ(L. cyrtobotrya)、キハギ(L. buergeri)などが
新種として発表されたんだとか。)
その後の1873年にマキシモヴィッチ(Maximowicz)によりハギ属の分類
大綱の骨子がつくられ、ハギ属は3亜属に分けられました。
{ハナハギの仲間(日本に自生はない)とヤハズソウの仲間は今日では別属と
されています。}


ヤハズソウ

ヤハズソウ花

マキシモヴィッチは、今日のハギ属に属する植物をすべてハギ亜属に分類しました。
ハギ属はアジアで生まれて北アメリカに広がってゆき、両地域でそれぞれ
進化が進んできたと考えられているようです。
北アメリカのグループをハギ亜属、アジアのグループをヤマハギ亜属とに
分類され、ヤマハギ亜属はさらに2つのサブグループ、ヤマハギ節とシベリア

メドハギ節に細分されています。<植物研究雑誌89巻2014年大橋、根本>
芽生えの第1節の葉が、ハギ亜属では互生、ヤマハギ亜属では対生する。



2亜属は、それぞれ2節ずつ、計4節に分かれる。
   ハギ属 --- ハギ亜属-( 北米の系統 )
          --- 
ハギ節  7種。
          ---  section Lespedezariae 4種
       --- ヤマハギ亜属(アジアの系統 )
          ---  ヤマハギ節       9種
          ---  シベリアメドハギ節    24種




ヤマハギ節

ヤマハギ

一般に萩と総称される種のすべてはヤマハギ節に分類されます。
ヤマハギ節は、落葉低木または低木状となり、花は10㎜以上となり、
閉鎖花をつくらないなどの特徴があります。

シベリアメドハギ節

シベリアメドハギ

低木状のヤマハギ節に対して多年草、草状で閉鎖花をつけるグループです。


形質の変異性ならびに形質の現れの差についての解析的な研究が不十分で
あったために、種の変異性が掌握できず、分類学的な評価が定まらなかった
ためにハギは特に分類が難しい植物だといわれてきました。
また、雑種ができることがあり、しかももともと両親種が形態的に類似する
場合は、雑種であることを形態的に認識することさえも難しいこと、萩類は
しばしば庭園などに栽培され園芸種が存在することも、種レベルの分類を
困難にしてきた一因でもある。

-----  -----  ----- 形態 ------  -----  ----- 
日当たりのよい山野に生息する多年草、半低木。
葉は3小葉からなる3出複葉で全縁、小さな披針形の托葉がある。
秋に枝先や葉腋に多数の花枝を出し、花色は紅紫、帯黄白、白などの
蝶形花を総状花序にまとまって次々と咲かせます。
蝶形花  👈クリックで解説記事へ
萼は鐘状で5裂するが、上側の2裂片は他の裂片より合着の程度が
進んでいて、一見4裂するように見える。萼の基部に宿存性の
1対の小苞がある。
雄しべは2体雄ずいで、10個でうち9個は先端部を除き合着し、
上側の1個は基部付近のみ合着している。
果実(節果)は種子を1つだけ含んで楕円形またはゆがんだ円形で
熟しても裂開しない

-----  -----  ----- 利用 ------  -----  ----- 
花や姿など秋の風情をめでるため庭園などに栽培されることも多いです。

占いに用いる棒を筮(メドギ)といい、竹を使ったものは筮竹(ゼイチク)
と呼ばれます。竹が使われるようになるまでは、萩の仲間のメドハギが
使われていたことからメドハギと名前の付いたものもあります。


メドハギ

マメ科植物特有の根粒菌との共生で、痩せた土地でも良く育つ特性がある。
この特徴によって、古くから道路斜面、治山、砂防など現場で緑化資材
として活用されています。

(現在では、ヤマハギやメドハギの種子が、斜面緑化のための吹付資材として
用いられています。中国からの移入種子も使われるため時々他の種子の
混入によって帰化種の植物が見られることも多いです。)


-----  -----  ----- 名前の由来 ------  -----  ----- 
萩の名前の由来には,主に3つの説があります。
 ① 古い株からも春にたくさんの芽を出すことから,生芽(はえぎ)が
   元になってハギに転訛した。
 ② 生命力の強さから,復活を意味する生え木(はえぎ)が元になって
   転訛した。
 ③ 枝で箒(ほうき)を作ったことから,「掃(はき)き」元になって
   転訛した。

-----  -----  ----- ハギと呼ばれる仲間 ------  -----  -----

○○ハギと呼ばれる植物の中にはハギ属でないものも見られます。

ヌスビトハギ   マメ科スビトハギ属
マメ科でハギに近い仲間、節果は2果以上。マジックテープ方式の
引っ付き虫として知られています。

センダイハギ   マメ科センダイハギ属
同じマメ科の仲間ですがやや遠い仲間です。黄色い蝶形花をつけます。

イタチハギ   マメ科イタチハギ属
マメ科の帰化植物で葉は羽状複葉、別名クロバナエンジュとも。

ナンテンハギ   マメ科ソラマメ属
2枚の小葉からなる羽根状複葉


ハギと名が付くマメ科植物たち

マメ科以外でも ヒメハギ科のヒメハギやミソハギ科のミソハギなど
ハギの名を持つものもあります。



萩を追っかけている萩さんのページです。

" 16 ツクシハギ   ハギ属(マメ科)の分類~ "
秋山 忍博士によるヤマハギ節の種の分類に関する解説が詳しいです。






オオバメドハギ

2017-09-21 06:00:00 | 
   オオバメドハギ 観察記録   👈クリックで過去記事へ
 
オオバメドハギ(大葉筮萩)
<学名:Lespedeza daurica (Laxm.) Schindl.>
マメ科 ハギ属 落葉小低木
 
 
撮影日 2010.07.24: 群馬県藤岡市

アジア東部~東北部原産。2001年愛媛県今治市で伊藤隆之氏により
発見され、植物研究雑誌78巻(大橋広好、根本智行、伊藤隆之:2003)
に発表された。
 
高さ30~100㎝の落葉性小低木。
 
葉は3出複葉で小葉は長さ2.5~4㎝、巾0.5から1.5㎝程度の狭長楕円形。
 

 
表面は無毛で濃い緑色、裏面には伏短毛が生えていてやや白っぽい。
 

 

 

花期7~8月。葉腋に総状花序をつけ、多くの花をつける。(10~20花ぐらい)
 
花は白く旗弁基部に赤紫色の蜜標がある。
毛の多い愕片の先は鋭尖形で尾状に伸びる。
最下の裂片は側裂片よりも長い。
小苞は愕筒よりも長い。小花柄に腺毛はない。
 
 
果実は愕裂片より短い。
 

 
豆は扁平な卵形。
 
 
 


~群馬県植物誌(戸部ほか,1987)の植物目録に掲載されたオオバメドハギについて~
 

Nemoto and Ohashi(1999)は群馬県産のオオバメドハギの証拠となった
標本がカラメドハギ(Lespedeza juncea)の誤同定
であるとしました。

また、群馬県立自然史博物館研究報告(12)短報  "群馬県産の「オオバメドハギ」と
カラメドハギ」について" で群馬県立自然史博物館の大森威宏氏の調べで群馬県産
「オオバメドハギ」,「カラメドハギ」ラベル付き標本のすべてがメドハギまたは
シベリアメドハギであることが分かり『群馬県植物誌のリストが作成された
1980年頃までに群馬県からはオオバメドハギもカラメドハギが群馬県内に分布する証拠は見いだせなかった
とされました。
 
その後、 大森威宏氏により2007年9月29日に安中市秋間みのりが丘でオオバメドハギが採集されました。
トウクサハギやシベリアメドハギなども多く生えていて土留め用に使用
された中国産種子に混入していたものと
考えられるようです。


この記事に載せたオオバメドハギは09年に果期のものを見つけ翌年花を
確認したもので周辺の状況からやはり中国産種子からのものと思われます。