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Byron, Childe Harold's Pilgrimage, 3.52-54

ジョージ・ゴードン、バイロン卿
『チャイルド・ハロルドの旅』 3.52-54

52
ハロルドは心のなかでこういって、川岸を歩いていった。
何も感じないわけではなかった。朝、谷の鳥たちが
目を覚まし、楽しげに歌えば、
追放の身ながら、心は躍る。
眉間には、いかめしいしわ。
冷たい心、動かない心に
激しい感情、おだやかな気持ちが宿ることなど、もはやない。
が、時として、そんな顔にもよろこびがこっそり忍びこむ。
こんな景色のなか、ほんの束の間、よろこびの影が浮かぶのだ。

53
また、彼は、愛に心を閉ざしてしまったわけでもなかった。もう
熱い気持ちは燃え尽きて、灰になってしまっていたが。
ほほえみかける人を冷たくにらむ、
なんてことはできないもの。心は、やさしい人のところに
飛んでいき、やさしさにやさしさで応える。たとえ下衆な
人々にどれほどうんざりしていようとも。ハロルドもそうだった。
彼には、やさしい人の思い出があった。心許せる女性、
愛してくれた人がいた。彼と彼女の心は、とけてひとつになっていた。
そして、特にやさしい気分のとき、このことを胸に思い出すのだった。

54
また、ハロルドは好きになっていた--なぜかはわからない。
彼のような男にはめずらしいことだ--
花のつぼみ、ほんのわずかにふくらみはじめたつぼみのような
こどものか弱くはかないようすが、彼は好きだった。どうして
こんなふうに彼が変わったのか、あれほど人を
あざけり、軽蔑していたのに、などと考えてもしかたがない。
実際、そうだったのだから。ふつう、孤独のなか、
幼くして摘みとられたやさしさには、もう育つ力がない。が、ハロルドの場合、
世界の輝きが失われたとき、心のなか、やさしさが熱く輝きはじめたのであった。

* * *
George Gordon Lord Byron
Childe Harold's Pilgrimage, 3.52-54

LII.
Thus Harold inly said, and passed along,
Yet not insensibly to all which here
Awoke the jocund birds to early song
In glens which might have made e'en exile dear:
Though on his brow were graven lines austere,
And tranquil sternness which had ta'en the place
Of feelings fierier far but less severe,
Joy was not always absent from his face,
But o'er it in such scenes would steal with transient trace.

LIII.
Nor was all love shut from him, though his days
Of passion had consumed themselves to dust.
It is in vain that we would coldly gaze
On such as smile upon us; the heart must
Leap kindly back to kindness, though disgust
Hath weaned it from all worldlings: thus he felt,
For there was soft remembrance, and sweet trust
In one fond breast, to which his own would melt,
And in its tenderer hour on that his bosom dwelt.

LIV.
And he had learned to love,―I know not why,
For this in such as him seems strange of mood,―
The helpless looks of blooming infancy,
Even in its earliest nurture; what subdued,
To change like this, a mind so far imbued
With scorn of man, it little boots to know;
But thus it was; and though in solitude
Small power the nipped affections have to grow,
In him this glowed when all beside had ceased to glow.

* * *
http://www.gutenberg.org/ebooks/5131

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