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Rossetti, DG, "Blessed Damozel" (解説)

ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ (1828-1882)
「天国の女の子」 (解説)

ロセッティの詩人としての代表作。

ペトラルカやダンテが描いた、死んでしまった女性に
男性が愛の歌を捧げる、というパターンを裏返して、
死んでしまった女性の視点を中心として書かれた作品。
(ペトラルカやダンテの場合、女性は自分の恋人ではないが。)

* * *
タイトル
blessed
天国にいて幸せな(OED 3b)。

1-2
絵のほうの "Blessed Damozel" を参照。
http://www.rossettiarchive.org/zoom/
s244.fogg.img.html
ロセッティの描く人物は、表情がかたまっていて
感情が読みにくい。(この絵の中心の少女は、
読めるほう。後ろの恋人たちに比べれば。)

4 waters
複数形で海や川で流れる水をあらわす(OED 6b)。

5 lilies
ユリは、純潔をあらわす聖母マリアの花。
三は三位一体の三?

6 seven
絵のほうの "Blessed Damozel" を参照。
http://www.rossettiarchive.org/zoom/
s244.fogg.img.html
プレイアデス星団(すばる)のように並んだ星が
髪に飾られている。この絵の星が六しかないのは、
すばるのなかのメロペーは肉眼では見えないから。

神話上では、すばるはアトラスの七人の娘。
オーリーオーンに追いかけられて困っていたので、
ゼウスによって天にあげられて星になった。

メロペーが見えないのは、彼女だけが人間と
関係をもって、それを恥じているから。
(その他の説もいろいろ。)

ロセッティの絵においては、「天国の女の子」が
このメロペー。六個の星とこの子で「すばる」、
ということ。この子は、この詩の「ぼく」の恋人だから。

次のページを参照。
http://www.theoi.com/Nymphe/Nymphai
Pleiades.html

7 from clasp to hem
from A to B の構文か、「hemするclasp」か、
少し迷う。

19-24
この詩における( )は、地上に残された
「ぼく」の視点からの言葉をあらわす。

19 of
多くのもののなかでも特別であることを
あらわす(OED "Of" 43d)。

20 the autumn-fall of leaves
顔に落ちてきた枯れ葉を、死んでしまった恋人の
髪のように感じた、ということ。

44 charms
多くの鳥たちの歌声や羽の音(OED, "charm" n2, 1)。
鳥などの群れ(OED, "charm" n2, 3)。
天国の恋人たちの魂を鳥にたとえている。

魂を鳥にたとえることについては、George Herbert,
"Death" などを参照。聖霊 = 鳩のイメージも。

50 shake
行く、旅する(OED 1, 古語、詩語)。

55-66
ロセッティはこの詩を1846年頃に書き、いろいろな
ところに掲載しながら修正を重ね、最終的に
1881年に内容を確定している。

天国の女の子が話す内容に入る直前の
この部分も、後から加えられたもの。すぐに彼女の
話した内容に入るのではなく、まず、それが地上の
「ぼく」に届いていることを示す。星の光が
天から地上に届くように。

62 accent
言葉(トーン+内容)(OED 5)。

69-71
マタイ書18章19節への言及。 「もしあなたが
たのうちのふたりが、どんな願い事についても
地上で心を合わせるなら、天にいますわたしの父は
それをかなえて下さるであろう」。

77 a stream
神の国にある命の川(黙示録21-22章)。

78 bathe
洗礼のイメージ。

144
タイトルを確認。ポイントは、この女の子が
全然幸せではないこと。自分は天国にいても、
恋人と離れてしまっているから。

* * *
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