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Waller, "To Phillis"

エドマンド・ウォーラー (1606-1687)
「ピュリスに」

ピュリス、どうして後回しにするの?
一日もつづかない楽しみを?
もしかして、(絶対にそんなことできないのに)
与えられた時間よりも長く生きられると思ってる?
美しさは影のように逃げていくし、
ぼくたちの若さは、ぼくたちよりも先に死ぬ。
もし、いつまでも若く、きれいでいれたとしても、
愛には羽があるから飛んでいってしまう。
愛は時間よりも速く飛んでいって、
心変わりは天に昇っていく。
一度いったことは絶対に曲げない神々だって、
好きになったり嫌いになったり、ころころ相手を変えている。
ピュリス、そういうことが事実だから、
今、ぼくたちは愛しあえているんだ。
君も僕も、聞くのはやめよう、
前に好きだったのは誰? とか。
どんな羊飼いたちに君はほほえみかけてきたの? とか、
ぼくがだましてきたのはどんなニンフたち? とか。
それから、星にまかせて、考えないようにしよう、
ぼくたちがこれからどうなるか、ということも。
今の楽しみ・よろこびについては、
今の気持ちにしたがおう。

* * *
Edmund Waller
"To Phillis"

Phillis, why should we delay
Pleasures shorter than the day?
Could we (which we never can)
Stretch our lives beyond their span?
Beauty like a shaddow flies,
And our youth before us dies,
Or would youth and beauty stay,
Love hath wings, and will away.
Love hath swifter wings than time,
Change in love to Heaven does clime.
Gods that never change their state,
Vary oft their love and hate.
Phillis, to this truth wee owe,
All the love betwixt us two:
Let not you and I inquire
What has been our past desire,
On what Shepherds you have smil'd,
Or what Nymphs I have beguil'd;
Leave it to the Planets too,
What wee shall hereafter doe:
For the joyes wee now may prove,
Take advice of present love.

* * *
いわゆる「カルペ・ディエム」のテーマの一変奏。

1-2行目はMarvell, "To His Coy Mistress" などと
共通する表現。

9行目にはHerrick, "To the Virgins" への言及が
あるのでは。

* * *
とても現実的な思考・議論で、恋愛詩の系譜の
一通過点としていろいろ考えさせられる。
恋愛詩が、16世紀の純愛ものから、17世紀に入って
どんどん醒めていくなかの一作品として。

(以下、ごく大まかな流れ)

シドニー、『アストロフィル』(あるいはそれ以前の
ソネット)のような甘いラヴ・ソング

--> 甘い雰囲気のない、論理的な誘惑の詩
(Carew, "Rapture"; Milton, Comus; Marvell, "Coy Mistress")

--> ドライデンなどの反-恋愛、反-結婚の詩

--> 18世紀の恋愛詩は?
(センチメンタルなテーマは詩以外のジャンルへ?)

--> Charlotte Smith などにより恋愛詩復活?
(18世紀以降、読者層・学術的に注目される
ジャンルなどが大きく変化。)

* * *
英語テクストは、Poems, &c. (1645)
(Wing W511) より。

* * *
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