『サルトルとボーヴォワール 哲学と愛』(原題「フロールの恋人」 イラン・デュラン=コーエン監督 2006年 フランス)
トム・クルーズ主演のミッション・インポッシブルを観に行ったはずなのに、散髪などをしていたら、適当な上映時間が、無くなり急遽予定を変更。『サルトルとボーヴォワール』は、シアターキノ24日封切作品、105分の映画でどこまで表現できるのだろうかと思っていたが、非常にテンポの良い作りで2人の半生を描ききっていた。
そのひとつの要因は、キャストだと思う。サルトルに、ロラン・ドイチェ、ボーヴォワールにアナ・ムグラリス。この女優がいい。低い声で発する重い台詞、男の嘘を見抜く眼、理知的な表情。
この国で、ボーヴォワールのような哲学を持って女性の自立を演ずることのできる女優はいるだろうか。私は、それを昨日からずっと考えていた。いた!真木よう子だ。NHK大河ドラマで竜馬の妻お竜(りょう)役を演じた彼女がいた。彼女なら、気の強さと同居する優しさを表現できると思う。
この映画のテーマは題材から当たり前のことだが、とても60年代的である。女性には、独身か、結婚かしか選択肢が無いと思われていた世間に、お互い自由な恋愛を許容しながらの契約結婚という新しい形態を提起するボーヴォワール。しかし、現実には、サルトルの女性関係と掴みきれない自らの性に苦悩する姿を描く。
21世紀に入って、こんな映画を作るフランス人は面白い。