山岸俊男先生の「信頼の構造」理論は、大変興味深いと思っている。今回の本では、第一章を「安心社会と信頼社会」として、その違いを明確に整理し、理論構造の枠組みを分かりやすく提示している。
更にネットオークションでの実験を踏まえ、考察をしており、大変興味深い。
第5章は荒唐無稽なようであるが、思考実験としては大変面白い。
目次
第1章 安心社会と信頼社会
安心と信頼/針千本マシン
針千本マシンとしての社会制度
集団主義的秩序/集団主義的秩序のコスト
個人主義的秩序/信頼の二つの役割
安心の日本、信頼のアメリカ
日本社会が直面する機会費用の増大
集団主義と内向きの倫理/統治の倫理と市場の倫理
信頼を支える社会的知性
第2章 歴史からの教訓
マグレブ商人/株仲間
マグレブからジェノアへ
第3章 実験研究からの教訓
ネット上での不正取引
マグレブ商人とネットオークションにおける評判の役割
ポジティブな評判とネガティブな評判
ネットオークションの実験/第1実験
再参入可能な市場
ポジティブな評判とネガティブな評判
第2実験(インターネット実験)
オークションの手続き/第1実験結果の再確認
正直な売り手と不正直な売り手、どちらがより大きな利益を得たか?
評判の「追い出し」機能と「呼び込み」機能
第4章 評価と評判
評判とは/評価者の能力
メタ評価とピアレビュー/評価基準のずれ
評価のインセンティブ/ネット上の詐欺行為と評判システム
電子商取引に際しての評判の役割
ネット社会における騙しの氾濫
ネット社会における評判システムの種類と特徴
評判システムの具体例/評判情報の抽出
ネット社会に要求される評判システム
第5章 開かれた安心社会へ向けて?
「安心、安全」を求めて
日本と中国での信頼ゲーム実験/信頼を伝える
関係形成への投資としての信頼行動
カバマダラとメスアカムラサキ
社会装置としての社会的知性
人は他人の表情をどこまで見抜けるか
完全暴露原理/ユビキタス評判社会
開かれた安心社会?
ネット評判社会 (NTT出版ライブラリーレゾナント057)