ポール・クルーグマンは、2008年ノーベル経済学賞受賞。
その彼が、米国の民主党の熱烈な支持者の立場から明確な論を展開する。
原題は、「THE CONSCIENCE OF A LIBERAL(リベラル派の良心)」
帯にはP18から、以下の部分が紹介されている。
<本書が伝えようとする重要なメッセージは、多くの読者にって心地よく受け止められるものではないかもしれない。つまり、すべての根源は、アメリカの人種差別問題にあるということである。今でも残る奴隷制度の悪しき遺産、それは、アメリカの原罪であり、それこそが国民に対して医療保険制度を提供していない理由である。先進諸国の大政党の中でアメリカだけが福祉制度を逆行させようとしているのは、公民権運動に対する白人の反発があるからなのだ。>
米国の寄って立つ歴史と日本とではあまりに違うので、直接には参考にならない。
しかし、あるべき姿を考えるには参考になる。
ブッシュに代表される共和党に厳しい指摘をするのは、分かるが、民主党のクリントン元大統領に対しても、厳しい評価である。P238から引用すれば、以下の通り。
<当時を振り返るなら、ビル・クリントンが明確な政治課題を持っていなかったことは明らかである。基本的に彼は何をするべきなのかわかっていなかったのだ。彼が就任した当時、政権のアドバイザーたちは日本との貿易摩擦問題へに対応策で頭がいっぱいだったが、それらはたいした意味をなさない、よく考えられた政策とはほど遠いもので、現実的な基盤となるようなものも一切存在しなかった。>
オバマ大統領のとる政策を評価する上でも、参考になる。
目次
第1章 あの時代の追憶
第2章 長期の金ぴか時代
第3章 大圧縮の時代
第4章 福祉国家の政治
第5章 60年代騒然の中の繁栄
第6章 「保守派ムーブメント」
第7章 大格差社会
第8章 格差拡大の政治力学
第9章 大量破壊兵器
第10章 平等で格差のない政治
第11章 緊急を要する医療保険問題
第12章 格差社会に立ち向かう
第13章 リベラル派の良心
格差はつくられた―保守派がアメリカを支配し続けるための呆れた戦略