アブソリュート・エゴ・レビュー

書籍、映画、音楽、その他もろもろの極私的レビュー。未見の人の参考になればいいなあ。

オールタイムベスト - 海外文学篇

2012-06-26 21:03:05 | 
 今日はいつもと趣向を変えて、私自身のオールタイム・ベストをご紹介したいと思う。まずは海外文学から。

 一応ベスト10ということで10作品選んでみたが、数ある偏愛小説群の中からたった10篇だけ選ぶというのはかなり無茶な話で、だから今の気分で選ぶとこうなる、ぐらいにご理解いただければと思う。来月選べばまた微妙に変わってくるかも知れない。とはいっても、オールタイムベストというぐらいだからどれも昔から何度も読み、読む度にその素晴らしさを思い知らされてきた作品ばかりであり、そういう意味ではもちろん、そうそう大きく変わることはない。変わるとしたら、同じ作家の別の作品に置き変わるぐらいだろう。たとえばクンデラはなぜ『冗談』でも『不滅』ではなくこれなのか、とか、タブッキは『供述によるとペレイラは…』『レクイエム』ではないのかとか、カフカはなぜ『審判』でないのかと問われても、多少の理由は言えないこともないが、煎じ詰めれば微妙な気分の問題という他はない。

 それから自分が選んだ10篇をじっと眺めていると、どれもこれも大傑作であることが自明の作品ばかり並んでいるので、自分的にはあまりにも当たり前な、面白くもなんともないリストになってしまったような気がしてしまう。「ほう、こう来たか」というような変化球が入る余地がない。だからベスト20にしようかとも思ったが、「オールタイム・ベスト」というからにはそれぐらい圧倒的な、問答無用のラインナップであるべきなんだろうと思い直し、10個にとどめた。他の人が見るとどう思うのだろうか。

 尚、選択に当たってはいくつかのルールを設けた。まず同一の作家の作品は一つにとどめた。そうしないと偏愛する数人の作家の作品だけで全部埋まってしまうからだ。それからさすがに長編と短編は一緒に扱えないので、長編(中篇含む)と短編集でそれぞれ10作品ずつ選ばせてもらった。短編については短編小説を10篇選ぶことも考えたが、長編より更に大変なことになりそうなので、短編集を10個選ぶことにした。また、この「短編集」にはアンソロジーの類は含まないこととした。

 それから言うまでもないことだが、10個選ぶだけでも大変だったのに、この中で順位をつけるのは到底無理だ。ということで、順位はなし。1から10まで振ってある番号は私がその作品に出会った順番である。また、本来なら選んだ作品にコメントをつけたいところだが、この思い入れの強いラインナップにそれをやるととんでもないことになりそうだし、そもそも大部分の作品は今までにレビューを書いている。ということで、作品ごとのコメントも割愛させていただく。

 しかしこうやって並べてみると、今更ながら自分の好みがいかに幻想文学に偏向しているかがよく分かる。特に短編集のベストにそれが顕著だ。


<海外文学オールタイムベスト10 - 長編>

1. レフ・トルストイ「戦争と平和」
2. フランツ・カフカ「城」
3. イサク・ディーネセン「バベットの晩餐会」
4. アルベルト・モラヴィア「倦怠」
5. ガブリエル・ガルシア・マルケス「族長の秋」
6. ミラン・クンデラ「存在の耐えられない軽さ」
7. アントニオ・タブッキ「インド夜想曲」
8. ホアン・ルルフォ「ペドロ・パラモ」
9. パスカル・キニャール「ローマのテラス」
10.ヨシフ・ブロツキー「ヴェネツィア―水の迷宮の夢」


<海外文学オールタイムベスト10 - 短編集>

1. エドガー・アラン・ポオ「ポオ全集」
2. ウィリアム・バロウズ「トルネイド・アレイ」
3. マルタ・モラッツォーニ「ターバンを巻いた娘」
4. ボルヘス「伝奇集」
5. ガブリエル・ガルシア・マルケス「エレンディラ」
6. ミシェル・トゥルニエ「海辺のフィアンセたち」
7. マルセル・シュオッブ「少年十字軍」
8. マーク・ストランド「犬の人生」
9. レイモンド・カーヴァー「大聖堂」
10.アンドレ・ピエール・ド・マンディアルグ「熾火」

 
 長編は大体誰が見ても納得できるラインナップじゃないかと思うが、短編集は我ながら偏向している。特に怪しいのはバロウズ、ストランドあたりだろうか。「なんでこんなんが入るの?」と思う人がいるかも知れないが、私としては外すわけにはいかないのである。

 それからご覧の通り、ガルシア・マルケスだけが長編・短編集ともに顔を出す特別扱いとなった。マルケスの本領は長編にあるので「エレンディラ」は何度も外そうと思ったのが、どうしても外せなかった。薄っぺらい「エレンディラ」の文庫を開いてページをパラパラめくるともう駄目である。気持ちに正直になると入れざるを得ない。そういう意味ではタブッキの短編集もあやうく入れてしまうところだったが、タブッキの場合は「長編」「短編」という分類があまり意味をなさない作家なので、そのエッセンスたる「インド夜想曲」のみで良しとした。

 いかがでしょうか? ご参考になれば幸いである。さて、次回は日本文学のオールタイムベストをご紹介しようと思う。


最新の画像もっと見る

21 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (ego_dance)
2014-01-26 02:06:19
路面電車さんこんにちは。ベスト10のご投稿ありがとうございました。私にはなじみのない作家の名前が多くて、勉強になります。クロード・シモンってノーベル賞作家なんですね。そんなことも知りませんでした。ウルフは好きな作家ですが『波』は未読なので、今度読んでみようと思います。フィッフィッツジェラルドは『ギャツビイ』ではなく『夜はやさし』なんですね。

今後ともよろしくお願いします。
返信する
これに乗じて (路面電車)
2014-01-21 17:43:06
いつも拝見しております。本や映画に対する知識の深さも層ですが、何より更新頻度の早さに驚かされます。私なんかだと時間もそうですが、本を読む時間は取れてもなかなか集中力が持たず......
これに乗じて私的ベストを公表しようかなと、長編のみですが。

1.『フランドルへの道』 クロード・シモン
2.『波』 ヴァージニア・ウルフ
3.『オブローモフ』 イヴァン・ゴンチャロフ
4.『大理石の断崖の上で』 エルンスト・ユンガー
5.『百年の孤独』 ガブリエル・ガルシア=マルケス
6.『大使たち』 ヘンリー・ジェイムズ
7.『ナイトランド』 W.P.ホジソン
8.『夜はやさし』 スコット・フィッツジェラルド
9.『死せる魂』 ニコライ・ゴーゴリ
10.『ペテルブルク』 アンドレイ・ベールイ
返信する
訂正 (reclam)
2014-01-05 18:39:44
フォークナーの代表作は「怒りと響き」ではなく「響きと怒り」でした、すみません。

フォークナーは難解と言われますが、一度で理解しようと思わず再読すると、この作家の凄さが分かると思います。

ego_danceさんの健闘を祈ります。
返信する
フォークナー (ego_dance)
2014-01-05 10:33:21
>フォークナーの代表作「怒りと響き」や「アブサロム、アブ
>サロム!」はその両方を兼ね備えた恐るべき作品です。

なるほど、そう聞くとますますフォークナーを読みたくなりました。まずは「怒りと響き」から。
返信する
補足 (reclam)
2013-12-30 19:10:54
 返信ありがとうございます。今回の改訂版の順位はかなり個人的な思い入れが入っています。選考基準として、初読の衝撃が強い又は再読回数が多い作品を選びました。以下は補足事項です。

 私の青春時代の読書体験に大きく影響を与えた「アレキサンドリア四重奏」「魔術師」「死霊」の順位は当然高くなります。これらの作品が私の読書生活の始まりでした。
 チェーホフはほとんどの作品が傑作という稀有な作家であり、この作家より上の短編作家を選べないのであえて一位にしました。日常生活の深くて多様な面を示してくれる彼の作品は生きる上で助けになります。
 再読する時に結末の悲劇を知っている事で、序盤の主人公のあがきがやるせなく感じさせる作品を最近になって私は好むようになりました。「族長の秋」「アマリアの別荘」「バビロンに帰る」はそんな作品であり、読了時の余韻は美しく素晴らしいものがあります。
 ピンチョンのコミカルであり知性的な面は彼独自のものであり、「V.」はそのバランスがちょうど良いと最近再読して気付きました。
 ディネセンも独特な作家であり、余り知られていないのが残念な作家です。物語作家という言葉が一番似合う人だと思います。
 ある時、ドストエフスキーは力の作家、トルストイは技の作家という言葉を勝手に思いつきました。しかし、フォークナーの代表作「怒りと響き」や「アブサロム、アブサロム!」はその両方を兼ね備えた恐るべき作品です。
 タブッキで初めて読んだのは「レクイエム」であり、初読時には清涼飲料水みたいな軽い小説だと思いました。それが再読時に一文一文が魅力的であると感じ、気がつけば病みつきになっていました。タブッキの文体は中毒になる魔力があります。

こうしてリストを作ってみると、自分の読書経験が詰まっているようで感慨深いです。同時に、このリストをより意味のあるものにしていくため、再読作業やリストに挙げている著者の未読作品を読む事がもっと必要だと思いました。来年の目標になりそうです。

(追記 海松さんへ)
 「死霊」はあらゆるジャンル分けを拒絶する、作者の想像力(妄想?)の賜物です。初読時における、読むというよりのみ込まれるような感触は未だ忘れられません。この小説を若いときに読んだのが運のつきでした(苦笑)。
返信する
埴谷雄高 「死霊」 (海松)
2013-12-30 16:13:53
いつも参考にさせていただいております。ありがとうございます。
2位に「死霊」埴谷雄高が入っているのが嬉しくてたまりません。 戦前の昭和な日本の雰囲気と「ドグラ・マグラ」と「黒死館殺人事件」を一緒にしたようなミステリー感覚・・・ほとんど壮大な宇宙SF小説として読みました。
返信する
Unknown (ego_dance)
2013-12-29 02:40:04
更新ありがとうございます。reclamさんと私は趣味が結構似ているようなので、共感できる部分が多いです。

ロレンス・ダレルは前回も入っていましたが、一位ですか。私も読みましたが、魅力を汲み尽くせなかった気がするので、再チャレンジしたいところです。が、大長編ゆえなかなか時間が取れない・・・マルケスは「百年の孤独」が「族長の秋」に入れ替わってますね。私もどっちかと言われればこちらを選んでしまいます。「百年の孤独」ももちろん大好きなんですが。「死霊」「魔術師」も不動とお見受けしましたが、読んだことがないんです。

「V」も大長編ですね。昔一応読みましたが、よく覚えていません。ミサイルが追っかけてくるような、奇妙で混沌とした小説という印象が残っています。今読むとまた違うんでしょうが、これもまた時間を見つけるのが…。

短編集のチェーホフ一位にも驚きました。私はあまりチェーホフをたくさん読んでないんですが、やはりすごい作家なんでしょうね。本棚のどこかにある「チェーホフ短編集」を探してみようかな。ディーネセンが色々入っているのは嬉しくなりました。この作家は「バベットの晩餐会」をはじめすごい作家だと思いますが、結構本を読む人でも知らない人が多いのが残念です。デンマークの作家だからマイナーなんでしょうか。

「バビロンに帰る」一位も嬉しいですね。フィッツジェラルドは毀誉褒貶が激しい作家でむらも多いですが、この短篇なんか絶品だと思います。「熊」「ビアンカの手」は読んだことがありませんでした。というか私はフォークナーを全然読んだことがないことに気づきました。是非読もうと思います、なんせマルケスに影響を与えた作家ですから…。

ところで、タブッキはやはり「レクイエム」と「島とクジラと女をめぐる断片」で不変なんですね。私は長編は「インド夜想曲」にどうしても思い入れがあるんですが、短編集はやはり「島とクジラと女をめぐる断片」になると思います。純然たる短篇小説は少ないのに、全体のバランスが絶妙なんですよね。それに最後の「ピム港の女」が素晴らし過ぎます。

また、新しい発見があったら教えて下さい。
返信する
以前の読書ベストの改訂版について (reclam)
2013-12-24 00:59:26
 お久しぶりです。今年も終わろうとしているなか、過去のコメントで公表したベストを思い出しました。過去のベストはこれでも良いのですが、以前から何か不十分で半端だと思っていました。
 
 そこで過去のリストから約一年半経った現在の成果を考慮するのも面白いと思い、読書ベストの改訂版を長編小説・短編集・短編小説に分け、個人的な順位を付けて公表したいと思います。

(長編小説)
1.「アレキサンドリア四重奏」ロレンス・ダレル
2.「死霊」埴谷雄高
3.「魔術師」ジョン・ファウルズ
4.「レクイエム」アントニオ・タブッキ
5.「響きと怒り」ウィリアム・フォークナー
6.「アンナ・カレーニナ」レフ・トルストイ
7.「高丘親王航海記」澁澤龍彦
8.「族長の秋」ガブリエル・ガルシア=マルケス
9.「V.」トマス・ピンチョン
10.「アマリアの別荘」パスカル・キニャール

(短編集)
1.「チェーホフ小説選」アントン・チェーホフ
2.「残酷物語」ヴィリエ・ド・リラダン
3.「燃える平原」フアン・ルルフォ
4.「大聖堂」レイモンド・カーヴァー
5.「七つのゴシック物語」イサク・ディネセン
6.「アメリカの鱒釣り」リチャード・ブローティガン
7.「伝奇集」ホルへ・ルイス・ボルヘス
8.「架空の伝記」マルセル・シュウォッブ
9.「島とクジラと女をめぐる断片」アントニオ・タブッキ
10.「見えない都市」イタロ・カルヴィーノ

(短編小説)
1.「バビロンに帰る」スコット・フィッツジェラルド
2.「イワン・イリッチの死」レフ・トルストイ
3.「ささやかだけれど、役にたつこと」レイモンド・カーヴァー
4.「バベットの晩餐会」イサク・ディネセン
5.「熊」ウィリアム・フォークナー
6.「ビアンカの手」シオドア・スタージョン
7.「リートスト」ミラン・クンデラ
8.「仔羊の血」アンドレ・ピエール・ド・マンディアルグ
9.「トレーン、ウクバール、オルビス・テルティウス」ホルへ・ルイス・ボルヘス
10.「大地炎上」マルセル・シュウォッブ

 以前のリストとの重複は仕方がないとして、どうでしょうか?今年はフォークナー・トルストイ・ピンチョンの長編、チェーホフ・リラダン・ディネセンの短編を読めたおかげで以前より充実したリストになりました。

 かなり長い文章になりましたが、次の本を探す読者である皆さんへの、ささやかだけれど役に立つクリスマスプレゼントになったら幸いです。
返信する
Unknown (ego_dance)
2012-07-18 10:01:43
ああなるほど、Amazonの立ち読みですか。確かに英語版を読む手もありますね。しかし私も米国在住の癖に読書はほぼ日本語専門なので、この大長編はハードルが高いです…。
返信する
報告3 (青達)
2012-07-13 17:14:57
いや、英訳の方はアマゾンで頭の一章立ち読みが出来るのですよ。英語もスラスラ読めるって人には英訳版の方がストレスがないかもしれません。「どうしても読みたい!」という強い動機が無ければ日本語版はスルーした方が良いかなあ。値段も値段だけに…

上でさんざん貶しましたけどギクシャクした日本語も「きっとこういうことが言いたいんだろうな」とおもんぱかって推測しつつ読むという好意的な態度で臨めばそこまで酷くありません。三巻一括で揃えてしまったのでそう考えるしかないんだけど(笑)。

本来なら日本語として違和感が無いようにブラッシュアップする手間を省いて「とりあえず日本語に翻訳した第一稿」って感じだなあ、全体的に。ロシア語を学んでる学生が翻訳しましたっていうんなら許せなくも無いけど……ああ、また貶してしまった…

僕が日本語に厳しすぎるのでこの評価はバイアスがかかってるかもしれません。多分僕は貶しすぎです(笑)。高い金を出したから余計…

英語のペーパーバック版買おうかな…英語スラスラ読めないけど…うう…
返信する
翻訳 (ego_dance)
2012-07-12 10:27:07
なるほど、分かりやすいサンプルを出していただいて深謝します。引用されている部分、確かにちょっと読みづらい感じはありますね。しかし日本語訳を読もうと思ったらこれしかないし、どうしようかな。

ところで英語版も入手して見比べながら読まれてるんでしょうか。すごいですね。
返信する
報告2 (青達)
2012-07-08 13:57:55
>本屋でペラペラめくれない

ああ、そうですね。アメリカ在住なんですよね。こうやってネットで文章をやり取りしてるとそんな感じが全然しませんが。ではちょっと本文から引用して雰囲気だけ。

↓日本語版第一巻8pより

『モストフスコイがとくにゾッとするほど恐ろしく思ったのは、ナチズムは片眼鏡をかけて収容所にやってくるのではない、下士官のように横柄で人々にとって無縁なものではないということであった。ナチズムは収容所の中の仲間のようにして息づいていた。それは素朴な民衆から孤立してはいなかった。それは普通の人のように冗談を言い、その冗談には誰もが笑った。それは平民出の人間のように飾らない態度を見せていた。それは自由を奪った相手の言葉も心も知恵も極めてよく知っていた。』

↓同じ箇所の英訳版

『What Mostovskoy found most sinister of all was that National Socialism seemed so at home in the camp:rather than peering haughtily at the common people through a monocle,it talked and joked in their own language.It was down-to-earth and plebeian.And it had an excellent knowledge of the mind,language and soul of those it deprived of freedom.』

↓僕の英訳からの重訳

『モストフスコイが何よりも不気味に思ったのはナチズムは非常に気さくに見えたことだった。片眼鏡をかけて横柄に<しもじもの者>をにらみつけたりなどせず、彼らと同じ言葉でしゃべり、冗談を言った。それは話の分かる平民然としていた。そして自由を奪い取った対象の心理や言語、魂を実によく知り抜いていた。』

もちろん訳者はロシア語から直訳をしているのでそういう意味ではより精確なのだろうと思いますけど、特に日本語版の後半「それは…それは…」の連発は日本語としてかなり無様だと思いますね。英語の作文でもどうやったら同じ言葉を繰り返さないかに頭を捻る所ですから。

あと同9pで収容所に向かう列車でモストフスコイが訛りのあるロシア語を話すポーランドの聖職者と同席になるシーンでモストフスコイがカトリックと教皇を罵ると聖職者が黙り、以降は

日本語訳「モストフスコイの質問にポーランド語で<短く>答えた。」(カッコは僕の強調)

とあって最初読んだ時「ん?」となったんですが、これ英訳では

『he had answered Mostovskoy's questions brusquely and in Polish.』

となってて「無愛想に、ぶっきらぼうに」答えた、とこれは意味が通るわけです。ロシア語原文でどうなってるか分からないので何とも言えませんが日本語として意味が通らない、というのが言い過ぎならあまりに遠回し過ぎて別様にも受け取れる文章になってると思います。僕の重訳もそうですけど日本語として通るように或る程度、意訳的に文章を補強しないとダメなんじゃないかなあ?

どんな外国文学でも多数の訳が出てきて初めて翻訳が洗練されてくると思うんですが、うーん、別の訳が出てくることは今後無さそうな気もするし…
返信する
人生と運命 (ego_dance)
2012-07-08 01:43:17
なるほど、そういう情報を待ってました。私は本は大体通信販売で買わざるを得ないので、本屋でまずぺらぺらめくってみるということができないのです。大枚一万五千円はたこうかどうしようか迷っているところですが、悩ましいですね。
返信する
報告をちょっと (青達)
2012-07-05 19:19:43
気になってるとおっしゃられた「人生と運命」ですが……

……うーん。所謂「直訳調」の日本語訳がちょっと微妙なんですよね。こなれてない感がどうにも鼻について読書スピードが上がりませぬ。

センテンスとセンテンスが自然に繋がっていかないというか。ただこれは英語訳の方を見ると確かにこんな感じなので仕方の無い面もあるのかなあ。でもなあ、言葉のチョイスも自分ならこうしないな、というのが多くて。日本語として読みにくいのです。

せっかくこんな大部の、しかも絶対お金になりそうも無いロシアの小説を翻訳してくれたのにこんなに貶すのは心苦しいですけど…

直訳調と言っても村上春樹や村上の著作の英訳を担当してる柴田元幸なんかは右が出っ張ったら別の部分を左に出っ張らせて全体のバランスを取るような巧妙な翻訳をするんですが。

いつも思うんですが結局、翻訳というのは決して一対一対応にはならないというのは真理ですね。似た言語構造の国語同士の翻訳ならいざ知らず、外国語を日本語に翻訳しようとすれば何を置いても日本語話者・文章家としての能力が問われるわけです。正確な翻訳をするのは第一だけど日本語としておかしなものになってしまったらその翻訳は失敗ですから。

「人生と運命」がそんな感じで進まないので工藤精一郎訳の「アンナ・カレーニナ」を読んでるのですが(いや、これを読んでるから「人生と運命」が進まないのか?)、これ、木村浩訳でフォローしつつ読むと丁度良いです。

いまいち意味が読み取れないなあ、と思った箇所をもう一方の訳で読むと「ああ、なるほど」とひざを打つ感じ。両方の良い所(表現の自然さ・言葉の選択)を合わせて2で割ると完璧なんだけど。まあ、これもあくまで『日本語としての』自然さ・読みやすさなのであって。

結局ロシア語で原文読むしかねえかなあ…ロシア語ハードル高いなあ…
返信する
Unknown (ego_dance)
2012-07-01 13:11:01
>青達さん
私も七瀬シリーズは「七瀬ふたたび」を先に読みました。はまりました。というか、その前に多岐川裕美主演のNHKドラマを観た時点ですでにはまっていましたが。「エディプスの恋人」という三作目もありますので、もしまだだったらぜひ。
ところで「人生と運命」を買われたとのこと。大著かつ高価なので躊躇していますが、やはり気になります。「戦争と平和」を意識して書かれたらしいし。うーむ、3巻揃って一万五千円か…。

>saganoさん
はじめまして。ちょっと趣味が偏っていますが、ご参考になれば幸いです。

>reclamさん
大変光栄です。特に、タブッキを読んでいただくきっかけになったのがうれしいです。一番好きな作家なので…。
返信する
追記 (reclam)
2012-06-29 17:46:42
(sugar momさんへ)
「ダック・コール」で初めて稲見一良を読んだ体験は、興味の対象が外国の小説へと移った今でも忘れる事ができません。この小説の良さは男の方ならすぐに気付くのではないでしょうか。私は稲見一良の小説で描かれる優しさが好きなのです。

(ego_danceさんへ)
いかに、私がこのブログ全体の記事に影響を受けているかが分かるベストだと思います(笑)。
ルルフォ「燃える平原」とキニャール「辺境の館」は、小説としての完璧さという点で考えるとベストに入れざるを得ません。
以前のコメントで書きましたが、タブッキはこのブログがきっかけで読み始めて好きになりました。レイモンド・カーヴァーもそうですが、読むたびに深い余韻と多義的な意味を与えてくれます。
長々と書きましたが、こうして充実したベストを作れたのもこのブログのおかげです。こちらこそ、ありがとうございました。
返信する
Unknown (sagano)
2012-06-29 17:30:32
楽しそうなサイトですね ! ! !
参考になりますし、読書意欲が沸沸と・・
UPの画像もGOOD・・センスあり
又、お伺い致します。
返信する
随分お久しぶりです・・・ (青達)
2012-06-29 16:02:28
ようやくこの前「戦争と平和」再読終了しました。一体何ヶ月かけてんだよ…

最後のエピローグまで来た所で何故か筒井康隆の「家族八景」「七瀬ふたたび」を一気読みするというよく分からない横道に逸れつつ。

ほとんど小説を読んでなかった20代に何故か買って読んだ筒井作品です。最初に「七瀬」の方を読んで夢中になって、遡って「家族」を読み始めたけど途中で投げ出したという顛末だったような記憶があり、「七瀬」は再読、「家族」はほぼ初読という感じでした。

「七瀬」は十数年前に読んだ感覚そのまま。面白い!実に40年前に書かれた作品だが全く古さを感じない。「国鉄」の「汽車」が走ってたり「半鐘泥棒」なんて今の若い人が聞いたら意味不明の言葉が出てくるところで初めて時代性を感じるけど。そして短い!「戦争と平和」の後に読むと速読法をマスターしたかのよう!(笑)

ハッキリした個性のキャラクター達がこれ以上削る事ができないくらい簡潔なストーリーでハキハキ動いていくのが良い。そして短い!「戦争と平w…以下略。

もっと七瀬達の活躍が読みたかったけど(特に敵対勢力の正体や駆け引き・死闘)、アメリカの人気TVドラマみたいな引き伸ばしはいらないよなあ。とにかくグイグイ読まされてしまった。

「家族」の方は…うん、悪くない。よく書けてるけど心を読める七瀬がお手伝いさんになって家庭の本音と建前・不和・破局(ハッピーエンドもあるけど)を描くという一種のパターンが単調に感じる。もともと一話完結の話を単行本にする為にまとめただけなので仕方ないんだろうけど。

で、「戦争と平和」再読の後、ワシーリー・グロスマンの「人生と運命」などを買ってしまい自分で自分の首を絞めております…

しかも集英社の世界文学全集の工藤精一郎訳「アンナ・カレーニナ」をちょっと読み始めちゃったりして…(前読んだのは木村浩訳)

ブックオフで2冊210円で売ってるんだもんな~。中身の価値で考えたら一万円してもおかしくないんだけど。本の価値を知らないブックオフありがとう(笑)
返信する
ありがとうございます (ego_dance)
2012-06-29 12:32:07
>reclamさん
そう言えば、私は「怒りの葡萄」のレビューで「オールタイムベストの一作だ」と書いていましたね。決して嘘ではなく、もちろん候補に入っていたのですが、最終的にベスト10からは漏れてしまいました。

ところでreclamさんのベストも、大変興味深く拝見しました。私の好きな作家が結構入っていている、特にタブッキが長編・短編集の両方に入っているのがとても嬉しいです。しかし作品のチョイスは人によって違うものですね。ルルフォの短編集も大好きですが、私はやはり「ペドロ・パラモ」になります。キニャールの「辺境の館」は難しいところで、はっきり言って甲乙付け難いですが、「辺境の館」の方が物語の密度が濃く、「ローマのテラス」の方がテキストの自由度が高いように感じます。

読んだことのない「死霊」「アレキサンドリア四重奏」、それからsugar momさんもご推薦の「ダック・コール」など、読みたい本がたくさん出てきました。やはり他人のベストを見るのは面白いですね。ありがとうございました。
返信する
ダック・コール (sugar mom)
2012-06-28 22:20:53
稲見一良の「ダック・コール」を短編部門で一番に選ばれるとは!
クールでダンディで、スマートな方ですね!
私も大好きです。
他はほとんど知りませんが。
返信する
私的ベストもup (reclam)
2012-06-27 16:50:45
興味深く拝見させていただきました。
うーむ、スタインベック「怒りの葡萄」が入らず、タブッキは「インド夜想曲」なのか。読んでない小説もたくさんあるし、参考にさせていただきます。
お返しに、現在の私的ベスト(順位付けなし、日本文学も含む)をupします。

(長編)
「高丘新王航海記」澁澤龍彦
「死霊」埴谷雄高
「魔術師」ジョン・ファウルズ
「アレキサンドリア四重奏」ロレンス・ダレル
「百年の孤独」G・ガルシア=マルケス
「レクイエム」アントニオ・タブッキ
「ハザール事典」ミロラド・パヴィチ
「辺境の館」パスカル・キニャール
「新しい太陽の書」ジーン・ウルフ
「罪と罰」ドストエフスキー

(短編集)
「ダック・コール」稲見一良
「大聖堂」レイモンド・カーヴァー
「燃える平原」フアン・ルルフォ
「海を失った男」シオドア・スタージョン
「伝奇集」ボルヘス
「島とクジラと女をめぐる断片」アントニオ・タブッキ

日本文学が少なく、短編集が6個しか選べなかったのは、自分の偏った読書癖と怠慢のせいです。個人的にキニャールは「辺境の館」、ルルフォは短編集の方が良いと思うのですが、どうでしょう?
長文失礼しました。参考になれば幸いです。
返信する

コメントを投稿