『マネーチェンジャーズ(上・下)』 アーサー・ヘイリー ☆☆☆☆☆
再読。これは私が読んだ二冊目のヘイリー本で(一冊目は『ニュースキャスター』だった)、ヘイリーのストーリーテリングに病みつきになったきっかけの作品である。実際、この『マネーチェンジャーズ』はヘイリー作品の中でももっとも出来が良い作品の一つといっていいと思う。読者を惹きつけるエピソード、バランス良く平行して進んでいくプロット、 . . . 本文を読む
『シャイニング(上・下)』 スティーヴン・キング ☆☆☆☆★
キング初期の傑作、『シャイニング』を久々に再読。欠点もあるが、やはりこの時期のキングならではのねっとり濃密な物語を満喫できる傑作だ。映画も有名だが、物語の濃さははるかに小説の方が上である。まず映画ではほとんど描かれなかったジャック・トランスの過去、そしてトランス一家のどん詰まりの状況が実に丁寧に描写されている。ジャックの癇癪癖、 . . . 本文を読む
『The Thing』 Matthijs van Heijningen Jr. 監督 ☆☆★
あの『遊星からの物体X』の前日譚が出ていると聞いて、わざわざDVDを入手して観賞。B級であることは観る前から分かっていたが、好奇心を抑えることができなかった。この気持ち、オリジナルの『遊星からの物体X』が好きな人なら分かっていただけることと思う。あのノルウェー基地で何が起こったかを描いた映画、と言 . . . 本文を読む
『悲しみよこんにちは』 フランソワーズ・サガン ☆☆☆☆
有名なサガンの処女作を読了。子供の頃に一度読んだような気がするが、まったく内容を覚えていなかった。偽の記憶かも知れない。フランスの映画を観ていたらなぜか突然読みたくなり、紀伊国屋書店で買ってきた。ブルーの装丁がとてもきれいだ。
内容もとにかくきれいなものだらけの世界で、少女マンガ的な、非現実的なまでの美しさ、空虚ではかない美しさ . . . 本文を読む
『銀の匙』 中勘助 ☆☆☆☆
子供時代の回想を淡々と綴った小説。自伝的だが、あとがきにも書かれているように多少は虚実が入り混じっているようだ。祭りに行ったりセミ取りをしたり近所の女の子と遊んでひそかにときめいたり学校にいくのが嫌だったり、とそういうエピソードがこまごまと綴られていく。一つ一つのエピソードは短く、さほど劇的でも突っ込んで描写されるわけでもないので、非常に淡白な印象だ。淡白で、 . . . 本文を読む
『世界短編傑作集 3』 江戸川乱歩編 ☆☆☆☆
「世界短編傑作集 2」に続いて第三巻を読了。これは「2」より大分面白かった。収録作は以下の通り。
ウイン「キプロスの蜂」
ワイルド「堕天使の冒険」
ジェプスン&ユーステス「茶の葉」
バークリー「偶然の審判」
ノックス「密室の行者」
ロバーツ「イギリス製濾過器」
アリンガム「ボーダー・ライン事件」
ダンセイニ「二壜のソース」
クリスティ「夜鴬 . . . 本文を読む
『Black Market』 Wether Report ☆☆☆☆☆
ウェザー・レポート6枚目のスタジオアルバムにして、『Heavy Wether』の前作。ジャコ・パストリアスが初参加した作品だが、ジャコがベースを弾いているのは2曲だけで、他はアルフォンソ・ジョンソンである。私はもともとジャコのベースからウェザーを聴き始めたので最初はさほど興味を持てず、名曲「Black Market」も「 . . . 本文を読む
『廃疾かかえて』 西村賢太 ☆☆☆☆
西村賢太の短編集を読了。三篇収録されているが、すべて「秋恵もの」である。
秋恵というのは主人公・貫多がやっとのことで待望の「我が女」として手に入れ、一緒に同棲生活を送ってもらっている奇特な女性で、彼女と同棲することになった経緯は『暗渠の宿』で詳しく述べてある。この秋恵も最後はバイト先で知り合った他の男のところへ逃げていくことが最初からバラされていて . . . 本文を読む
『婚期』 吉村公三郎監督 ☆☆☆☆
日本版DVDで再見。1961年作品、コミカルなホームドラマである。キャストは京マチ子、若尾文子、野添ひとみ、高峰三枝子と女優陣が豪華だ。男優は船越英二が孤軍奮闘している。この人は昔の映画を観るとよくもてる男、またはプレイボーイっぽい役で出てくるが、個人的には「いい人」のイメージの方が強くてあまりピンと来ない。女性にとっては魅力的なのだろうか。あと、女中の . . . 本文を読む
『世界短編傑作集 2』 江戸川乱歩編 ☆☆★
創元推理文庫から出ている「世界短編傑作集」の第二巻と第三巻を入手した。一巻、四巻は触手が動かなかったので見送り。この第二巻のラインナップは以下の通り。
ルブラン「赤い絹の肩かけ」
グロルラー「奇妙な跡」
ポースト「ズームドルフ事件」
フリーマン「オスカー・ブロズキー事件」
ホワイトチャーチ「ギルバート・マレル卿の絵」
ベントリー「好打」
ブラ . . . 本文を読む