『眼の壁』 松本清張 ☆☆☆☆
『波の塔』に続いて松本清張を読了。今度は『波の塔』と違って清張本来の社会派ミステリ、冒頭から掴みは強烈だ。ある会社の資金課長が金策に奔走中。銀行は貸し渋り、このままでは給料が払えないという深刻な事態だ。マジメな資金課長は懸命に手を尽くし、ようやくある銀行の役員にワタリをつけ、融資してもらえることになる。銀行の一室に通され、手形を渡す。「ちょっと待ってて下さい . . . 本文を読む
『Ghost in the Machine』 The Police ☆☆☆☆☆
『ゼニヤッタ・モンダッタ』に続くポリス四作目、『ゴースト・イン・ザ・マシーン』。「機械の中の幽霊」というこのタイトルはギルバート・ライルの言葉で哲学者アーサー・ケストラーの著作名でもあり、要するに人間の心と体を分けて考え、心は体に縛られない自由かつ崇高なものであって人間のアイデンティティは心だというデカルト流の . . . 本文を読む
『波の塔(上・下)』 松本清張 ☆☆☆☆
また松本清張を読みたくなって、未読の文庫本を買ってきた。これを選んだのはあとがきに「凄みのある傑作」と書かれていたからだ。
ある金持ちの令嬢がひとり旅をする場面から、この物語は始まる。気ままなひとり旅の自由を満喫したかったのに親父が行く先々に手を回していて、部下や取引先の男どもがかしこまって待ち構えており、つきっきりで送り迎えをするというがっか . . . 本文を読む
『座頭市海を渡る』 池広一夫監督 ☆☆
座頭市シリーズ第14作目。前作『座頭市の歌が聞こえる』と次作『座頭市鉄火旅』はどっちもなかなかの傑作なので、この『海を渡る』もいいんじゃないかと期待したのだが、ダメだった。かなり駄作である。
「海を渡る」なんていうと琉球か中国、ひょっとしたらエゲレスにでも行きそうな気がするが、実は四国に行くだけである。大したことはない。で、なぜ市が四国に行くかと . . . 本文を読む
『ローベルト・ヴァルザー作品集3: 長編小説と散文集』 ローベルト・ヴァルザー ☆☆☆☆★
ヴァルザーの作品集その3。書店で冒頭部分を立ち読みし、面白そうだったのでついまた買ってしまった。ちなみに冒頭部分はこう。「ここで学べることはとても少ない。教師が足りないのだ。僕たちベンヤメンタ学院の生徒たちが出世することはないだろう。つま僕たちは皆、将来とてもちっぽけな何か、誰かに従属する何かになる . . . 本文を読む
『Zenyatta Mondatta』 The Police ☆☆☆☆
ポリス3枚目のアルバム。傑作『白いレガッタ』の次である。初期ポリス・サウンドが一応の完成を見た後ということで、過渡期の作品と言われることが多いが、確かにこれまでの二枚のアルバムと比べると明瞭な変化が見られる。
まず、パンク色が後退している。最初はパンク・バンドを偽装して世に出たポリスは当然パンキッシュな音を特徴とし . . . 本文を読む
『殺意』 フランシス・アイルズ ☆☆☆☆
再読。これはいわゆる倒叙推理の古典で、クロフツの『クロイドン発12時30分』、ハルの『伯母殺人事件』とセットにして倒叙三大名作などと呼ばれている。ちなみに作者のフランシス・アイルズとはアントニー・バークリーの別名。バークリーはかの有名な『毒入りチョコレート事件』の作者で、私にしてみれば、私自身の本格ミステリへの情熱にトドメを刺し、息の音を止めた小説 . . . 本文を読む
『Ride Like The Wind』 Freddie Hubbard ☆☆☆☆
フレディ・ハバードのフュージョン期の作品をまたしても紹介したいと思う。ジャズ・ファンには不評かも知れないが、私は結構好きなのである。
さて、この『Ride Like The Wind』にはタイトルからも分かる通り、あのクリストファー・クロスのデビュー曲「風立ちぬ」のカバー入りである。ポップソング、しかも . . . 本文を読む
『銀河の壺直し』 フィリップ・K・ディック ☆☆☆
10月に日本に帰った時、代官山の蔦屋書店に初めて行ってみたが、何といっても驚いたのは書架の一画にサンリオSF文庫がずらっと並んでいたことである。「こ、こりゃすげえっス!」と驚き、あれこれ手に取ってみて、値札を見てその高価なことにまた鼻血が出そうになった。そういうわけで大人買いをするのは無理だったが、とりあえず一冊だけ買ったのがこの『銀河の . . . 本文を読む
『男はつらいよ 寅次郎頑張れ!』 山田洋次監督 ☆☆☆★
シリーズ第20作。今回のマドンナはクリスチャン・藤村志保。ただしもう一組のカップルとして中村雅俊と大竹しのぶが出演し、寅さんとマドンナよりこの二人の恋愛の方が(色んな意味で)インパクトが強い。寅も、中村雅俊に恋愛指南をするコーチ役として関わってくる。
中村雅俊はとらやに下宿する貧乏な若者「ワット君」だけれども、実に好青年で、好感 . . . 本文を読む