『パニックの手』 ジョナサン・キャロル ☆☆☆
かなりマニアックな支持を集めているらしい作家ジョナサン・キャロルの短編集を読了。この人の書くものはダーク・ファンタジーと称されているようだ。前に『死者の書』という長編を読んだが、色んな人が「衝撃的」といっているわりには特に感動がなく、今となっては話の内容もほとんど覚えていない。それではというので今度は短編集にトライしてみた。短編集なら色んな傾 . . . 本文を読む
『北北西に進路を取れ』 アルフレッド・ヒッチコック監督 ☆☆☆☆
ご存知、ヒッチコックの代表作の一つである。軽妙な二枚目のケイリー・グラント、金髪美女、巻き込まれ型サスペンス、濡れ衣、誰も信じてくれないもどかしさ、どんでん返し、多彩な舞台で繰り広げられるハラハラドキドキ、そしてそこはかとないユーモア。ヒッチコックの得意技満載で、円熟の職人芸を安心して堪能できる。
今回は広告マンのケイリ . . . 本文を読む
『マイルス・デイビス自叙伝 (I)(II)』 マイルス・デイビス/クインシー・トループ ☆☆☆☆
マイルス・デイビスのロング・インタビューを文章におこした自叙伝だが、上下二巻でかなり読み応えがある。自叙伝らしく子供の頃のことから始まっていて、両親のことなんかも詳しく書かれている。父親が歯医者だったとは知らなかった。
10歳頃にトランペットを吹き始め、中学のスクール・バンドで先生に鍛えら . . . 本文を読む
『鉄コン筋クリート』 マイケル・アリアス監督 ☆☆☆
日本版DVDで鑑賞。原作は未読である。
映像は面白かった。手書きタッチの荒さと緻密さを混ぜ合わせたような独特の美しさ。声優には蒼井優、伊勢谷友介、二宮和也など意外にメジャーな俳優が起用されているが、これも合っていて良かったと思う。特に意外だったのは蛇という悪役の本木雅弘。あれがモックンだったとは最後まで気づかなかった。構図や場面の切 . . . 本文を読む
『アムニジアスコープ』 スティーヴ・エリクソン ☆☆☆☆☆
未読だったエリクソンの『アムニジアスコープ』を入手、あっという間に読了。面白すぎる。しかも大変読みやすい。エリクソンの小説は好きな人にはたまらないが慣れない人はあまりに濃厚な幻視力に翻弄され、ついていくのが大変というところもあり、ちょっと読んでみようかなと思って挫折した人も多いのではないかと思うが、これなら大丈夫。ストーリーがいき . . . 本文を読む
『花よりもなほ』 是枝裕和監督 ☆☆☆★
日本版DVDをBOOK-OFFで買ってきて鑑賞。大好きな是枝監督の作品でずっと気になっていたのだが、なんとなく観そびれていた。
さて、実際観てかなり驚いた。これまでの是枝監督の作品とあまりに感触が違う。『幻の光』『ワンダフル・ライフ』『DISTANCE』『誰も知らない』を撮ったあの是枝監督の作品とはとても思えない。繊細な映像美のところどころに面 . . . 本文を読む
『心地よい眺め』 ルース・レンデル ☆☆☆
ルース・レンデルという有名な作家の小説を初めて読んだ。なんとなくジェット・コースター型のサイコ・サスペンスものを想像していたら、だいぶ違っていた。なんというか、ブラックで淡々とした人間ドラマである。一種のビルドゥングス・ロマンであり、ボーイ・ミーツ・ガールものでもある。殺人を扱っているという意味ではミステリでもあるが、事件の捜査とか真相はむしろつ . . . 本文を読む
『Night Passage』 Weather Report ☆☆☆☆☆
ライヴ・アルバム『8:30』の後に出されたアルバムで、スタジオ・アルバムとしては『Heavy Weather』『Mr. Gone』に続くジャコ期3枚目ということになる。次の『Weather Report』がジャコが参加した最後のウェザー作品。
私は『Mr. Gone』を持っていないので『Heavy Weather . . . 本文を読む
『幻の女』 ウイリアム・アイリッシュ ☆☆☆★
大昔、多分高校生ぐらいの時に読んだことがある『幻の女』を再読。ミステリの世界では誉れ高い名作で、『Yの悲劇』と並んで色んなランキングで一位になっているらしい。昔読んだ時はそれほどの傑作とは思えなかったが、今読むと違うかも知れないと思ってまたわざわざ買ってきた。が、やっぱり私としてはどうもそれほどの名作とは思えない。
設定はいい。ある男が行 . . . 本文を読む
『白い巨塔』 山本薩夫監督 ☆☆☆☆★
1966年の映画版の再見。本当は田宮二郎のテレビ版をもう一度観たかったのだが、あまりに時間がかかるので断念し、映画にしたのである。テレビ版はこの映画のあとなので、これが『白い巨塔』初の映像化ということになる。テレビと違ってモノクロだ。
ストーリーについては前に原作のレビューを書いたのでそっちを見ていただくとして、この映画もやはり傑作で、緊迫感のあ . . . 本文を読む