アブソリュート・エゴ・レビュー

書籍、映画、音楽、その他もろもろの極私的レビュー。未見の人の参考になればいいなあ。

事件当夜は雨

2010-07-31 20:00:13 | 
『事件当夜は雨』 ヒラリー・ウォー   ☆☆☆★  これも日本で買ってきた本。ヒラリー・ウォーは昔『失踪当時の服装は』を読んで、地味なんだけれども妙な面白さがあった記憶があり、他のも読んでみたいと思っていた。ただ当時はAmazonで検索しても『失踪当時の服装は』しか出てこなかったが、今はぞろぞろ出てくる。再評価されているのだろうか。  この『事件当夜は雨』も『失踪当時の服装は』と同じく警察小説 . . . 本文を読む

Peter Gabriel III

2010-07-29 21:35:16 | 音楽
『Peter Gabriel III』 Peter Gabriel   ☆☆☆☆☆  ピーター・ガブリエルのソロ3作目。一般に「Melt」の通称で呼ばれているディスクである。ちなみにガブリエルのソロ1作目から4作目までは全部タイトルが『Peter Gabriel』で、区別ができない。そこでファンの間では便宜上、ジャケット写真にもとづき「Car」「Scratch」「Melt」「Security」と . . . 本文を読む

石、紙、鋏

2010-07-27 22:23:56 | 
『石、紙、鋏』 アンリ・トロワイヤ   ☆☆☆☆★  Amazonで取り寄せに時間がかかるというので見送っていたアンリ・トロワイヤの『石、紙、鋏』が在庫ありになっていたため、すかさず入手した。タイトルの『石、紙、鋏』というのはグー、パー、チョキで、ようするにジャンケンである。三すくみの状態のことだ。本作はパリを舞台に、三人の男女が奏でる愛の不協和音を描いている。例によってトロワイヤの筆は老練かつ . . . 本文を読む

Ballad of a Soldier

2010-07-25 14:09:10 | 映画
『Ballad of a Soldier』 Grigori Chukhrai監督   ☆☆☆☆☆  Criterion版のDVDで再見。ロシア映画、モノクロである。邦題は『誓いの休暇』。なんだか古くさい邦題だ。1959年作品なのでまあしかたないが、原題の『ある兵士のバラッド』の方が全然いい。  映画が始まると、いきなり喪服の母親の姿。ナレーションが彼女の息子は戦争から帰らなかったことを告げ、そ . . . 本文を読む

青い野を歩く

2010-07-23 20:58:47 | 
『青い野を歩く』 クレア・キーガン   ☆☆☆  これも5月に日本で買って来た本。作者はアイルランドの女流作家で、本書は第二短篇集ということである。作風は大雑把に言わせてもらえばアリステア・マクラウドの路線である。自然の中で生きる人々。哀しい過去。静謐、後悔、痛み、祈り。アンソニー・ドーアの『シェル・コレクター』にも似た感じがある。それにしても、自然の中で生きる人々を描く短篇ってなんでいつも沈痛 . . . 本文を読む

久生十蘭短篇選

2010-07-21 18:06:34 | 
『久生十蘭短篇選』 久生十蘭   ☆☆☆☆  日本で買って来た久生十蘭の短篇集を読了。なかなか面白かった。久生十蘭は創元推理文庫の「日本探偵小説全集(8) 久生十蘭集」を持っているが、こちらは探偵小説全集という趣旨からか大部分が「顎十郎捕物帖」で、それ以外の短篇はほんのちょっとしか入っていない。渋澤龍彦が「稀代のスタイリスト」と賞賛した作家の本領を充分に感得できたとは言えなかった。その点、本書は . . . 本文を読む

Sweet Rain 死神の精度

2010-07-19 18:19:58 | 映画
『Sweet Rain 死神の精度』 筧昌也監督   ☆☆  レンタルDVDで鑑賞。伊坂幸太郎の原作は既読だが、原作から三つのエピソードを取り、それぞれに関連性を持たせて繋げてある。主演の金城武の演技をはじめ、どこか脱力した感じの、ゆるい映画だ。ところどころに挿入されるCGを使ったファンタジー的な映像などは凝っているが、全体にテンションが低く、ワクワク感と盛り上がりに欠ける。原作の方がいい。 . . . 本文を読む

レディ・ジョーカー

2010-07-17 00:34:51 | 
『レディ・ジョーカー(上・中・下)』 高村薫   ☆☆☆☆  昔、友達からハードカバーを借りて読んだ『レディ・ジョーカー』の文庫が出ていたので、日本からの帰りの飛行機の中で読もうと思って買った。しかし飛行機の中だけではとても読みきれず、帰ってきてからも一週間ぐらい読み続けていた。とにかく長い。長過ぎる。  しかも、これだけ延々読んでも、最終的に事件に決着はつかない。メインであるレディ・ジョーカ . . . 本文を読む

小間使の日記

2010-07-14 21:28:45 | 映画
『小間使の日記』 ルイス・ブニュエル監督   ☆☆☆☆☆  Criterion版DVDで再見。モノクロである。ブニュエルの中では人気が高い作品だ。確か渋澤龍彦も『スクリーンの夢魔』の中で絶賛していた。ブニュエルには相当シュールなものもあるがこれはわりと普通で、ちゃんとストーリーもある。ただしブニュエルの旗印であるフェチズムと辛辣なアイロニーは全開になっている。  とりあえずモノクロ映像が非常に . . . 本文を読む

嘘から出たまこと

2010-07-12 20:09:50 | 
『嘘から出たまこと』 マリオ・バルガス・ジョサ   ☆☆☆☆  バルガス・リョサの書評集である。ちなみに、なぜか本書の表記は他の翻訳本と違って「ジョサ」と表記されている。どっちが本当の発音に近いのか知らないが、ここでは慣れているリョサで統一させてもらう。  一つ一つの書評はわりと短く、6~8ページぐらい。それが30個ほど収録されている。非常に読みやすい。リョサの評論はその小説同様あまり屈折した . . . 本文を読む