アブソリュート・エゴ・レビュー

書籍、映画、音楽、その他もろもろの極私的レビュー。未見の人の参考になればいいなあ。

キッスで殺せ

2017-08-31 21:28:04 | 映画
『キッスで殺せ』 ロバート・アルドリッチ監督   ☆☆☆☆  究極のカルト映画、と聞いて観てみたが、なるほどそういうことか。相当ぶっとんだ映画だ。モノクロで、原作はミッキー・スピレイン、主人公はロスの私立探偵マイク・ハマー、ということでノワール映画の資格十分だし、確かにノワール映画として始まりノワール映画らしくストーリーが進んでいくのだが、途中からおかしくなってくる。つまりジャンルを逸脱していく . . . 本文を読む

2017-08-28 22:00:24 | 
『峠(上・中・下)』 司馬遼太郎   ☆☆☆★  『世に棲む日日』に続いて、司馬遼太郎の『峠』を読了。これも幕末の話で、主人公は越後長岡藩(現在の新潟県)の家老、河井継之助。誰それ? と多くの人が思うだろうし、私も全然聞いたことがなかった。要するに幕末に戊辰戦争というものがあって、薩長を中心とした新政府軍と旧幕府軍が戦い、これに勝った新しい明治政府がその後の日本の指導者となったわけだが、その戊辰 . . . 本文を読む

藁の楯

2017-08-25 23:12:33 | 映画
『藁の楯』 三池崇史監督   ☆☆☆  ニュージャージーの日系レンタルビデオ屋で買ったDVDである。大沢たかお、松島菜々子、藤原竜也、とわりと好きな俳優が出ていること、原作が『BEE-BOPハイスクール』のきうちかずひろであること、が興味を持った理由。きうちかずひろ氏はどうやら最近は小説家になっているらしいが、この人のストーリーテリング能力は結構大したものなのだ。小説は読んだことないが、この人原 . . . 本文を読む

アンドロイドは電気羊の夢を見るか?

2017-08-22 22:08:26 | 
『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』 フィリップ・K・ディック   ☆☆☆☆☆  フィリップ・K・ディックの名作、通称『アンドロ羊』を再読。知っている人も多いだろうが、映画『ブレードランナー』の原作である。ただ原作ではあるが、ストーリーや雰囲気はかなり違う。本書を読んで『ブレードランナー』のあの雰囲気を紙上体験しようと思ってもそれは無理だ。この原作小説ではデッカードは既婚者で、しかもなかなか大 . . . 本文を読む

ストーカー

2017-08-19 09:26:20 | 映画
『ストーカー』 アンドレイ・タルコフスキー   ☆☆☆☆  日本版ブルーレイで鑑賞。最初に観た時は途中で寝落ちした(タルコフスキー映画のお約束)ため、今回二度目のチャレンジである。  この映画はタルコフスキーが母国ソ連で作った最後の作品で、名作『惑星ソラリス』の次作である。私が買ったブルーレイについてきた解説書でも複数の識者の方々が傑作と称賛していて、タルコフスキーでどれか一つ選べと言われたら . . . 本文を読む

儀式

2017-08-16 21:30:38 | 
『儀式』 セース・ノーテボーム   ☆☆☆☆  『これから話す物語』のノーテボームの本邦初訳本が出たので、すかさず入手した。発表年代では『これから話す物語』『木犀!/日本紀行』より前の作品になる。そのせいか、『これから話す物語』で顕著だったどこか微笑みまじりの、時にユーモラスとも感じさせるオフビートな語り口はほとんど見られず、クールな端正さが印象的だった。  小説の内容は大きく三部に分かれてい . . . 本文を読む

ガタカ

2017-08-13 21:48:40 | 映画
『ガタカ』 アンドリュー・ニコル監督   ☆☆☆☆☆  米国版ブルーレイで鑑賞。SFだが、最近はやりの精緻なリアリズムと派手なビジュアルで見せるSF(『インターステラー』『ゼロ・グラヴィティ』など)ではなく、独特の雰囲気を持った、どことなく寓話的なSFである。音楽は『ピアノ・レッスン』や『仕立て屋の恋』のマイケル・ナイマン。SF映画は彼のイメージじゃないと思う人も多いだろうが、例によってはかなく . . . 本文を読む

世に棲む日日(その2)

2017-08-10 23:57:28 | 
(前回からの続き)  さて、四か国との和議が成立した後、長州藩内部は幕府に恭順しようという「俗論党」に支配されるようになり、開国推進派である晋作とその仲間たちは捕らえられ、処刑され、あるいは逃亡し、ちりぢりバラバラになってしまう。もはや絶対絶命というこの状況からの晋作の巻き返しは、まさに奇跡的という以外に言葉が見つからない。  自らが組織した奇兵隊からも見放された晋作は、たった80人程度の仲間 . . . 本文を読む

世に棲む日日(その1)

2017-08-07 00:21:59 | 
『世に棲む日日(1)~(4)』 司馬遼太郎   ☆☆☆☆☆  司馬遼太郎『世に棲む日日』全四巻を読了。メッチャ面白かった。これは幕末の偉人、吉田松陰と高杉晋作の物語である。吉田松陰は思想家であり、攘夷思想を生み出して幕末の歴史的転換を準備した人物、そして高杉晋作はその弟子にして歴史的転換の実行者、ということになる。小説はまず吉田松陰を主役として進み、ある時点から高杉晋作にバトンタッチする構成にな . . . 本文を読む

とげまる

2017-08-03 19:34:17 | 音楽
『とげまる』 スピッツ   ☆☆☆☆  いつの頃からか、スピッツが好きである。昔「ロビンソン」を聴いて、なんてステキなメロディなんだと思って衝動的にベスト盤を買い、しかしベスト盤にはそれほど感動しないで時がたち、ある時ふとオリジナル・アルバムを聴いてまたハマり、今ではオリジナル・アルバム全部とは言わないまでもかなりの枚数所有している。特に私の場合、ディープなファンに人気が高い初期よりも、『三日月 . . . 本文を読む