『インターステラー』 クリストファー・ノーラン監督 ☆☆☆☆☆
去年ニュージャージーの映画館で観たが、さっぱり意味が分からなかったので日本版ブルーレイを入手。やっと色々な疑問が氷解した。やはりセリフが分からないと映画を評価することはできないなあ。今回日本語字幕付きで観てようやく、傑作であることが分かった。
ノーラン監督はいつも入り組んだややこしい設定を出してくる人だが、今回も例外ではな . . . 本文を読む
『元気で大きいアメリカの赤ちゃん』 ジュディ・バドニッツ ☆☆☆☆★
バドニッツの新作短篇集を読了。訳者の岸本佐知子さんがあとがきに書いている通り、前短篇集『空中スキップ』に比べると、確かにより「黒い、力強い」感じだ。得体の知れない迫力がある。それぞれの短篇の中に、不気味にうずまっているものがある。これはやはり、小説の凄みというものだろう。
前作でもそうだったが、本書も微妙にグロテスク . . . 本文を読む
『かぐや姫の物語』 高畑勲 ☆☆☆☆
日本版ブルーレイで鑑賞。さすがに丁寧に作られた、魂のこもったアニメーションという印象だ。ただし、宮崎駿作品のように尖った感性で突っ走るというより、監督の美意識と、大勢の観客に受けられるための配慮と、文部省推薦的な健全さがバランスよく配置されたウェルメイドな作品だと感じた。別に悪い意味ではなく、万人受けするアニメーションとして制作され、正しく目標が達成さ . . . 本文を読む
『かくれんぼ・毒の園』 ソログープ ☆☆★
岩波文庫で読了。20世紀初頭のロシアの作家である。死に憑かれたような、耽美的な小説を書いた作家と聞いて入手してみたが、それほどの面白みを感じなかった。確かに死に憑かれた作家というのはその通りで、どの作品でも最後はみんな死ぬか、または精神に異常をきたしてしまう。死の描き方も甘美である。代表作である「毒の園」などは典型的で、愛し合う若い男女が毒の花咲 . . . 本文を読む
『虹の女神 Rainbow Song』 熊澤尚人監督 ☆☆☆☆
日本版DVDで鑑賞。主演は市原隼人と上野樹里。上野樹里が「のだめ」の女優さんということは知っていたが、ちゃんと顔を見るのは今回初めてだ。で、すっかりファンになってしまった。このサバサバした自然体な感じが実にいいなあ。媚びない感じが爽やかで、目ヂカラがあり、顔はしっかり美人顔。が、一説によればこのイメージは「のだめ」とは全然違う . . . 本文を読む
(前回からの続き)
旅行記であることのもう一つのメリットは、無論エキゾチズムである。この物語の舞台であるインドは、当然ながら西洋人である「僕」にとって異文化の国であり、そこに暮らす人々とは世界観そのものが異なっている。「僕」の出会いはすなわち異なる世界観との出会いである。このような旅行記の中では、いわば自分の世界観を外側から見つめ直す作業が自然と行われ、自分が考える世界のありようが実は思ったほ . . . 本文を読む
(前回からの続き)
本書は主人公である「僕」のインドへの旅行記の形式をとっており、12章から構成されている。「僕」は一人で都市から都市へと旅し、ホテルを渡り歩き、他の旅行者やインドの人々と出会う。「僕」が出会った人物があとで再び登場することはない。つまり、一つの筋(アクション)が次の結果に繋がることで展開していく因果律型の小説ではなく、各章がそれぞれ別の話として独立しているエピソード羅列側の小 . . . 本文を読む
『インド夜想曲』 アントニオ・タブッキ ☆☆☆☆☆
通読という意味では、おそらく四、五度目の再読。ただし拾い読みは数限りなくしていて、もはや内容は私の脳に染みこんでしまっている、そんな本である。私が最初に読んだタブッキの小説であり、この作家の奥深い魅力にとりつかれていくきっかけとなった作品だ。だから本書に対する私の思い入れは格別で、アントニオ・タブッキという作家が私の中で別格的存在であるこ . . . 本文を読む
『Taken』 Pierre Morel監督 ☆☆☆☆
『Taken』と『Taken 2』がセットになったブルーレイを購入した。昔レンタルで観た時も楽しい映画だと思ったが、やっぱり楽しい。アクション映画のツボを押さえている。今回『Taken 2』も初めて観たが、やはり一作目の『Taken』の方が全然良い。ストーリーがシンプルでタスクが明確、そして迷いなく突き進むアクションのダイナミズムが快 . . . 本文を読む
『黒い福音』 松本清張 ☆☆☆☆☆
『憎悪の依頼』と一緒に買った文庫本で、こちらは長編。二冊続けて読むと、『憎悪の依頼』収録の「金環食」と感触が似ていて、まるで「金環食」が本書のプロローグであったかのように感じる。両方とも戦後間もない頃の話で、欧米に見下され、いいように小突き回される日本の姿を描いた社会問題告発型の小説である。しかも本書は1959年に実際に起きたいわゆる「スチュワーデス殺人 . . . 本文を読む