『王女マメーリア』 ロアルド・ダール ☆☆☆★
ロアルド・ダールの短篇集を再読。ダールは高校生の時に『あなたに似た人』を読んでからずっと好きな作家だ。田村隆一のまったりした訳が素晴らしい『あなたに似た人』が一番好きだが、『キス・キス』とこの『王女マメーリア』も良い。文章は田村隆一訳『あなたに似た人』より簡潔な感じで、多分こっちの方がダールの原文に近いのだろうが、しかし『あなたに似た人』の田 . . . 本文を読む
『みんなのいえ』 三谷幸喜監督 ☆☆☆★
三谷幸喜が『ラヂオの時間』の次に作った映画。DVDを購入して再見。やっぱり面白い。私は『ラヂオの時間』よりこの『みんなのいえ』の方が好きなんだが、どうも世間の評価は『ラヂオの時間』の方が高いようだ。なんでだろう。
『みんなのいえ』については「全然笑えなかった」というようなことを言う人も多い。確かにニヤニヤできるシーンはあるが、爆笑シーンなんてほ . . . 本文を読む
『海に住む少女』 シュペルヴィエル ☆☆☆☆
光文社の「古典新訳文庫」でシュペルヴィエルが出ていたので購入した。みすず書房の『海の上の少女』をすでに持っているので、収録されている短篇は重複している可能性大だったが、新訳ということと、未読の短篇があればめっけものと思って買った。
私と同じように気になっている人のために、収録されている短篇を以下に記載しておく。
海に住む少女
飼葉桶を . . . 本文を読む
『人情紙風船』 山中貞雄監督 ☆☆☆☆☆
日本映画の最高傑作とも言われる『人情紙風船』をDVDで鑑賞。1937年製作、大昔の映画である。モノクロの時代劇。もちろん黒澤明なんかより前で、こんな昔の邦画を観たのは初めてかも知れない。正直言って、山中貞雄なんて人の名前は最近までまったく聞いたことなかった。天才監督と呼ばれていること、それから浅田次郎が『活動写真の女』の中でこの『人情紙風船』を絶賛 . . . 本文を読む
『策謀の結末』 ☆★
『別冊宝島 刑事コロンボ完全捜査記録』という本を入手した。新旧シリーズをカバーし、撮影裏話やそれぞれの監督、脚本家の特徴、各エピソードの細かい突っ込みどころなどを満載したコロンボ・ファンにはたまらない本だ。コロンボ・シリーズへの愛情が伝わってくる内容で、イラストも充実している。この本を熟読すると当然ながらそれぞれのエピソードを観たくなるわけで、とりあえずこの『策謀の結末』 . . . 本文を読む
『時は乱れて』 フィリップ・K・ディック ☆☆☆☆
ディックのサンリオ文庫本を再読。初期の作品で、まだ後期ほど複雑な世界観は顔を見せておらず、比較的あっさりしたストーリーだが、私はこの小説が妙に好きで何度も読み返している。そして何度読み返しても面白い。この本はまだ創元から出ていないようだ。ちゃんとディック的でありながら読みやすい小説なのに、なんでだろう?
初期の作品ながら微妙に後期っぽ . . . 本文を読む
『ミンボーの女』 伊丹十三監督 ☆☆☆☆
DVDを購入して鑑賞。伊丹十三監督の映画は好きでほとんど観ているので、この映画ももちろん初見じゃない。私は監督の趣味性とマニアックさが炸裂している『たんぽぽ』が一番好きだが、この『ミンボーの女』も面白い。知らなかったが、伊丹監督作品の中で興行成績が一番いい映画らしい。
ヤクザの話である。といっても伊丹監督が撮って任侠映画になるはずもなく、ヤクザ . . . 本文を読む
『グレート・ギャツビー』 スコット・フィッツジェラルド ☆☆☆☆☆
村上春樹、渾身の訳業である。訳者あとがきで、村上春樹は書いている。
「……(これまでの人生で巡り会ったもっとも重要な本を)どうしても一冊だけにしろと言われたら、僕はやはり迷うことなく『グレート・ギャツビー』を選ぶ」
「極端な言い方をするなら、僕はこの『グレート・ギャツビー』という小説を翻訳することを最終的な目標にし、そこに . . . 本文を読む
『狩人の夜』 チャールズ・ロートン監督 ☆☆☆☆
日本版DVDを購入して鑑賞。『情婦』に出演している俳優のチャールズ・ロートン唯一の監督作品らしい。モノクロ作品で、サスペンス物といっていいと思うが、かなり独特の幻想味がある。
公開当時は評判が悪く、そのせいでチャールズ・ロートンは二度と映画が作れなくなったが、後年カルトムービーとして評価が上がったらしい。公開時、唯一トリュフォーがこの映 . . . 本文を読む
『キューピッド&サイケ’85』 スクリッティ・ポリッティ ☆☆☆☆★
1985年発表の作品だが、今聴いても全然古びていない。名盤といっていいと思う。はっきり言って打ち込み系の音楽である。こういう音楽が苦手な人は多いと思う、私も昔はそうだった。ところが聴き込むと一筋縄ではいかない。打ち込みとは言っても打ち込みと演奏がミックスされているわけだが、そのミックスのセンスが尋常ではない。音の隅々ま . . . 本文を読む