『ブロディーの報告書』 ホルヘ・ルイス・ボルヘス ☆☆☆☆
再読。ボルヘス本の中ではマイナーな短編集らしく、Amazonでは現在古本でしか入手できなくなっている。巻頭でボルヘスが書いているように「直截な作品」を目指した短篇集である本書は確かに『伝奇集』や『不死の人』などと比べると迷宮性が後退し、濃密さに欠けるきらいがあるが、その代わりとても読みやすい。私はこれはこれでかなり好きである。
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『フレンジー』 アルフレッド・ヒッチコック監督 ☆☆☆
ヒッチコック映画はかなり好きなわりに、観たことない作品がまだたくさんある。というわけでDVDを買って来て鑑賞した『フレンジー』である。かなり後期の作品、というか最後から二番目の映画である。ヒッチコックの復活作と言われたらしいが、個人的にはまあまあだった。ただしヒッチコックらしい達者な演出はあちこちに見られ、それなりに楽しませてくれる。 . . . 本文を読む
『聖女の救済』 東野圭吾 ☆☆☆★
日系の本屋さんで平積みになっているのを見て購入。ちょうど週末だったし。東野圭吾は週末か休日に一気読みすることに決めているのである。相変わらずリーダビリティと読みやすさは保証付き。
TVドラマになった「ガリレオ」シリーズの長編である。長編としては『容疑者Xの献身』に続く二作目ということになる。『容疑者Xの献身』では出ていなかった内海薫という女刑事が出て . . . 本文を読む
『A Song for You』 Carpenters ☆☆☆☆☆
カーペンターズといえば昔ヒット曲を連発したポップス・デュオ、というイメージでなんとなくベスト盤を持っていれば充分と思われがちなアーチストであり、また実際似たようなベスト盤がこれでもかと大量発売されているが、優秀なコンポーザー兼アレンジャーであるリチャードを擁するこの職人的ユニットの真価は、やはりオリジナル・アルバムを聴かな . . . 本文を読む
『Sleeping Beauty』 Clyde Geronimi監督 ☆☆☆☆
ご存知、ディズニーの『眠れる森の美女』である。最近DVDが再発されたので買ってきた。子供の頃見た記憶はあるが、ほとんど覚えていなかった。この歳で観てもちゃんと面白い。さすがディズニーの傑作と言われるだけのことはある。
魔女の予言や、眠りにつく姫、城を取り囲む茨の森など、もともとの物語が寓話的かつイマジネーシ . . . 本文を読む
『エペペ』 カリンティ・フェレンツ ☆☆☆☆
ハンガリーの作家カリンティの小説を再読。ちなみにハンガリーでは日本と同じく姓が名の先に来るらしい。だからこの人のラストネームはカリンティである。『そうはいっても飛ぶのはやさしい』に短篇が収録されているカリンティと同じ人かと思ったらそうではなく、『エペペ』を書いた方がその息子らしい。
不条理文学である。訳者はあとがきでさかんに反ユートピア小説 . . . 本文を読む
『Hejira』 Joni Mitchell ☆☆☆☆☆
邦題『逃避行』。傑作である。モノクロのジャケットがとても美しいが、中に詰まっているのもこのジャケットから想像されるまさにそういう音楽だ。一曲目のイントロが流れ出した瞬間、ギターとパーカッションが溶け合った涼しげかつ甘やかな響きにはっと目が覚めた気分になる。自在にハーモニクスを操るフレットレス・ベースはジャコ・パストリアス。ジョニ・ミ . . . 本文を読む
『屍蘭―新宿鮫〈3〉』 大沢在昌 ☆☆☆☆
新宿鮫シリーズの三作目。再読。本書は一作目、二作目と違って暴力団やプロのヒットマンみたいなのは出てこない。美容クリニックと病院の犯罪で、そのためにスケールが小さく、地味な印象がある。特にクールで凄腕のヒットマン、毒猿をフィーチャーした華やかな前作と比べるとアクションも少なくハッタリに欠ける印象を受ける人も多いだろう。が、実はこの作品、かなりいい。 . . . 本文を読む
『隠し砦の三悪人』 黒澤明監督 ☆☆☆☆☆
日本版DVDを購入して鑑賞。昔見た時はイマイチかなと思ったが、今回見直して大幅に評価が上がった。
『椿三十郎』『七人の侍』などの黒澤明最高傑作群と比べるとちょい落ちるかも知れないが、これはこれで充分傑作だ。『三十郎』や『用心棒』は最初に呈示された状況とルールのもと、緊密な構成をもって展開されるゲーム的物語だったが、この『隠し砦の三悪人』はより . . . 本文を読む
『緑の家』 バルガス・リョサ ☆☆☆☆
バルガス・リョサ1966年発表の作品。昔読んだ時は話がさっぱり分からなかったので再読してみたが、今度もあまり良く分からなかった。別に難解というわけじゃないが、複数の登場人物達の別々の物語がこまぎれにされ、時系列バラバラにシャッフルされているのである。『21グラム』と似たような手法だが、これに比べれば『21グラム』なんて分かりやすいったらありゃしない。 . . . 本文を読む