『淵に立つ』 深田晃司監督 ☆☆☆☆★
日系レンタルビデオのDVDで鑑賞。どんな映画か知らずに観たが、なかなか面白かった。とても怖い映画だが、ホラーでも猟奇殺人でもない、あんまり似た作品を思いつかないユニークな映画である。ジャンルでいうとサイコ・サスペンスとヒューマン・ドラマの中間ぐらいか。ブラックなコメディ風味もちょっと入ってる。
町工場を営む一家に、ある日八坂(浅野忠信)という男が . . . 本文を読む
『犬物語』 ジャック・ロンドン ☆☆☆☆☆
柴田元幸の訳によるジャック・ロンドン第二弾『犬物語』を読了。「ブラウン・ウルフ」「バタール」「あのスポット」「野生の呼び声」「火を熾す(1902年版)」の五篇が収録されている。最後の「火を熾す」は第一弾短篇集『火を熾す』表題作の初期バージョンであり、柴田元幸によれば、まあまあいい短篇であるこのバージョンに犬を登場させることで後のバージョンは米文学 . . . 本文を読む
『Live and Let Live』 10cc ☆☆☆★
10ccが1977年にリリースしたライヴ・アルバム。『愛ゆえに』発表直後のライヴで、だからセットリストも『愛ゆえに』からの曲主体で組み立てられている。オリジナル・メンバーであるケヴィンとロルが脱退し、エリックとグレアムと補充メンバーで再出発を図ったアルバムが『愛ゆえに』なので、このライヴはその再出発メンバーによるライヴ盤ということ . . . 本文を読む
『龍臥亭事件(上・下)』 島田荘司 ☆☆☆☆
久しぶりに島田荘司のミステリを読んだが、上下二巻のかなりの大長編である。著者の代表作の一つと言われているらしい。この人は時々バカミスみたいなものを書くので警戒を要するが、本書は確かに読みごたえがあった。また、本書は御手洗潔シリーズのワトソン役である石岡が主人公で、しかしながら御手洗潔本人は登場せず(正確には石岡宛ての手紙のみの出演)、かつ、著者 . . . 本文を読む
『希望のかなた』 アキ・カウリスマキ監督 ☆☆☆☆
大好きなカウリスマキ監督の新作が出たということで、日本版ブルーレイを購入して鑑賞(米国でも劇場公開されたんだろうが気づかなかった)。前作『ル・アーブルの靴みがき』に続く、難民三部作の第二作目という位置づけになっている。
ということで、主人公はシリアからフィンランドにやってきた難民カーリド。そしてもう一人、離婚し、仕事替えをしてレストラ . . . 本文を読む
『村のエトランジェ』 小沼丹 ☆☆☆☆
著者名はおぬま・たん、と読む。寡聞にして知らなかった作家さんだが、アマゾンの推薦機能で出てきたので文庫本を買ってみた。本書は著者の初期短篇集で、昭和50年代あたりの短篇がメインのようだが、なかなか洒落ている。オフビートなユーモアがあり、軽みと茶目っ気がある。
発表年代が古いのでさすがにボキャブラリは時代を感じさせるが、文体やストーリーだけ見ると、 . . . 本文を読む
『川の底からこんにちは』 石井裕也監督 ☆★
ネットでわりと良いレビューを見かけた『川の底からこんにちは』を、日系ビデオ屋さんのレンタルで鑑賞。石井裕也監督の商業映画デビュー作で、主演は満島ひかり。どこかの映画祭で賞を獲っているらしいが、本当にこれが…? と、正直ちょっと信じられない。色んな意味で自主製作映画っぽさ満点で、商業映画として成り立つかどうかギリギリのラインだと思う。かなりがっか . . . 本文を読む
『不機嫌な女たち』 キャサリン・マンスフィールド ☆☆☆☆
ニュージーランドの作家、キャサリン・マンスフィールドの日本オリジナル短篇集を読了。収録されているのは「幸福」「ガーデン・パーティー」「人形の家」「ミス・ブリル」「見知らぬ人」「まちがえられた家」「小さな家庭教師」「船の旅」「若い娘」「燃え立つ炎」「ささやかな過去」「一杯のお茶」「蠅」の13篇。あとがきによると、マンスフィールドの真 . . . 本文を読む
『妻の女友達』 小池真理子 ☆☆★
小池真理子初期の、サスペンスものの短篇集を読了。収録作品は「菩薩のような女」「転落」「男喰いの女」「妻の女友達」「間違った死に場所」「セ・フィニ ー 終幕」の六篇。
これまで読んだ小池真理子の短篇集の中では、明らかに若書きである。まだまだ模索段階って感じだ。プロットが人工的だし、似たパターンが多く、先が読めるいかにもな展開があって、明確にオチがある。 . . . 本文を読む