『座頭市喧嘩旅』 安田公義監督 ☆☆☆★
座頭市シリーズ5作目である。出来はまあまあだと思う。突出していると言わないが、娯楽映画として手堅い。ただヒロインである大店の娘・お三津を演じる藤村志保は世間知らずの清楚なお嬢様の雰囲気を良く出しているが、お行儀が良すぎてお飾り的だ。『鉄火旅』の気が強いお嬢さん役の方が生き生きしていて良かったと思う。
ストーリーは、死んだじいやに頼まれた市がお三 . . . 本文を読む
『ファイアスターター(上・下)』 スティーヴン・キング ☆☆☆☆
再読。これはキング作品の中でも好きな方だ。構成がすっきりしていてメリハリがあるし、クライマックスの盛り上げ方もうまい。『デッド・ゾーン』と並んで、キングのストーリーテラーとしての技が最上の形で発揮されていると思う。私が嫌いな、超自然的な「邪悪な存在」が出てこないのもいい。
この小説は多分ホラーではない。『呪われた町』や『 . . . 本文を読む
『レッド』 キング・クリムゾン ☆☆☆☆☆
70年代クリムゾン最後のスタジオ・アルバム。ヴァイオリンのデイヴィッド・クロスが抜けてロバート・フリップ、ジョン・ウェットン、ビル・ブラッフォードのトリオ編成になっている。じゃあサウンドも全部ギター、ドラム、ベースだけのトリオ演奏になっているかというとさにあらず、曲によってはかつてのメンバー、イアン・マクドナルド、メル・コリンズ、ロビン・ミラー、 . . . 本文を読む
『ガメラ 大怪獣空中決戦』 金子修介監督 ☆☆☆★
DVDで再見。いわゆる平成ガメラ第一作である。特撮ファンは知っての通り、人気の面で常にゴジラにかなわなかったガメラがついにゴジラを越えた記念碑的作品、ということになっている。私も特撮と聞くと血が騒いでしまう方だが、平成ゴジラ・シリーズのつまらなさはまったくひどかった。もしかしたら今度こそ面白いかも、と思ってはがっかりすることの繰り返しだっ . . . 本文を読む
『ヘルマフロディテの体温』 小島てるみ ☆☆☆
新人作家のデビュー作らしいのだが、評判が良さそうだったので買ってみた。表紙イラストは山本タカト。お耽美系である。舞台はナポリ、主要なテーマは両性具有、去勢。さらにヘルマフロディテ、オデュッセウス、人魚などギリシャ神話からの引用多数。美声を維持するために去勢したというカストラートも重要なモチーフとして使われている。
なかなか博識だし、雰囲気 . . . 本文を読む
『金融腐蝕列島 呪縛』 原田眞人監督 ☆☆☆★
DVDで再見。原田眞人監督は『クライマーズ・ハイ』を撮った監督さんだが、この手の企業ものが得意なのだろうか。
この映画は実話をもとにしている。DVD特典で監督が説明をしている映像があるが、主人公の四人をはじめ自殺者、遺書の内容、逮捕者、それから細かい会話の内容まで実際にあったことだと言っている。しかし映画のつくりは完全なリアル路線というわ . . . 本文を読む
『善良な町長の物語』 アンドリュー・ニコル ☆☆☆
読む前の期待値はかなり高かったが、少々期待外れだった。というか、私の期待したものとは違う類の小説だった、と言った方が正しい。
アマゾンの紹介文にはこうある。「町の日常に彩りを添える人物や出来事が前半は静かに語られている。だが、それらが後半になると一気に幻想的な展開を見せはじめていく。そもそも町の守護聖人ヴァルプルニア(鬚をはやした聖女 . . . 本文を読む
『Avatar』 James Cameron監督 ☆☆☆☆
今話題の『アバター』を観てきた。これだけ記録を塗り変えたとかなんとか騒がれては観ないわけにはいかない。しかし、これでキャメロン監督のヒットメイカーとしての神通力はますます強化されたのだろうな。なんせ今や『タイタニック』『アバター』と、歴代興行収入一位と二位がキャメロンだっていうんだから。
しかしまあ、随分と極端な映画である。ま . . . 本文を読む
『初夜』 イアン・マキューアン ☆☆☆☆
マキューアンの新作が出ていたのですかさず購入した。『贖罪』や『土曜日』と違ってこれは小品である。帯にも「マキューアンの長編小説が交響曲であるとすれば、この作品は室内楽曲である…」とあるが、確かにそんな感じだ。タイトルの通り、結婚した男女の一夜の物語である。ただしフラッシュバック方式で二人のなれそめもじっくり描かれるし、エピローグ的に後日談も語られる . . . 本文を読む
『39-刑法第三十九条- 』 森田芳光監督 ☆☆☆
森田監督の映画をDVDで再見。これは大昔に観てわりと面白かった記憶があるのだが、今回観ながら「ああ、そういえばこんなだったなあ」と思い出した。話は面白いのだが、監督の演出がやたらわざとらしいのである。DVD特典を観ると脚本が先にあり、森田監督が「これは面白いからおれがやる」と言って映画を撮ったらしい。こんなことを言っちゃなんだが、誰か他の . . . 本文を読む